第9話 体重変換

 らくらく痩せて、強くなれる!そんなメリットしかないスキルを今から使用する。わくわくが止まらない。よし!


「【体重変換】!」


 すると目の前に選択肢が現れた。


どちらを得ますか?残り体重125kg

スキル

ステータス


「スキルとステータスどっちがいいかな?」


 もちろんだが、セイヤは勝手に俺のステータスを調べているため体重変換がどんなスキルか知っている。


「ステータスだろ」


 そう言われ、ステータスを選ぶと次はこんな画面だ。


筋力?

防御?

敏捷?

器用?

魔力?


とりあえず筋力だ。筋力を選択する。


筋力=10

いくつ追加しますか?125ー?


 その場面でスマホのフリック画面が表示された。めっちゃ親切だなこのスキル。

とりあえず5あげよう


結果

筋力=15

125ー5=120


キャンセル 確定


確定と。マジでスマホだ、親切すぎる。そして自分のステータスを確認した。


ちゃんと筋力が上がっていた。しかも若干、本当に若干だが体が軽い気がする。


「痩せた?」


 第一声がそれかよ。確か人は、3kg体重が変わると見た目に反映されるらしい。


 鑑定で俺のステータスを見たのかおぉぉぉ!とセイヤが沸き上がっていた。わかるぞその気持ち。


 この調子でいくと、体重と引き換えにスキルも入手できそうだ。一気に金持ちになった気分だ。


「スキルはどうする?とりあえず保留でいいか」


「それもそうだな」


「なぁなぁ、それって俺にもできるのか?」


 目を輝かせながら言う。確かにこんなチート、仲間に使用することができたら最強の軍隊が出来上がりそうだ。


「わかんないけど、やってみる」


 期待するような眼差し。やっぱり男の子強くなるのは憧れだよね。


「【体重変換】」


 セイヤに向けていってみる。しかし表示は変わらない。いや一つだけ変わっているところがある。それは残り体重が125kgから120kgになっているところである。セイヤは特段鍛えていてはないが、動くためにできた筋肉がついてる。体重は標準ぐらいあるかな、と思ってはいるがさすがに120kgはない。そのため


「できないっぽい」


「まじかぁ」


 落胆の声色と顔、なんかものすごく申し訳なくなる。仕方ないだろ!だって俺の意思じゃないし!


 ってか思ったんだが、このスキルがあれば元の世界に帰れるんじゃね?なんとも賢いのだろう。だが、セイヤは異世界召喚に憧れがあるといっていた。多分一人で帰ることはできるが、セイヤを一人に置いておきたくない。一応聞いて帰りたくないのであれば、気が変わるまでこの件は保留にしよう。


「なぁセイヤ」


「どうした?」


「たぶんだけど体重変換で元の世界に帰れると思うんだけど、帰りたい?」


「いや、まだいいかな」


「そうか」


「お前は帰りたくないのか?」


「帰りたいけど、お前となら大丈夫だって思ってる」


「と、トモヤ・・・・・・」


 少しかっこよかったかな?とりあえず前髪を整えて奥へと進んでいく。妙に静かだ。普通にモンスターとかいるかなって思ってたけど、意外と安全である。

 すると通路のど真ん中に明らかに怪しい宝箱が、存在感を放っていた。


「鑑定オナシャス」


「任せろ」


 セイヤが鑑定するために宝箱をぎゅっと睨むと


「ミミックだ、LV560ってだけ読み取れる」


 勝てるわけないだろ、ゲームバランス崩壊してる。現実世界じゃ明らかに運営に報告案件である。


「どうする?」


「どうもこうも、戦うしかないっしょ」


 問題はどう戦うかである。実際武器にできるものは・・・・・・セイヤのスキル【鋭さ】と【凝固】のネクタイと唾だ。


「唾凝固して鋭さしてみるか」


 そぐらいしかできない。俺たちは圧倒的強者に唾とネクタイで戦う。

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