第4話 危険と怒り

五十嵐智也のスキルを隠密と変装、から認識阻害に変更しました。

また、マイナス補正:肥満を加えました。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 


 ここはどこだろう。一見ジャングルのように見えるが空を見上げるとどでかい鳥?この距離ででかいと感じるほどのサイズだ。間近で見ると飛行機ぐらいあるのではないか。そして目の前には下りの階段がある。なぜか、この中は外より危険だと思ってしまう。


「おい、大丈夫か?」


 こんな状況になっても俺の心配をできる男はそういないだろう。しかしどうするべきか。ここは確実に危険だ。今すぐにでも離れたいところではあるが、道がわからない。


「大丈夫、じゃないけど大丈夫だ。」


「どうする?これから」


 そういうとセイヤはしばらく考えるそぶりをした。俺はセイヤを待っていると、いきなり頭が「近くに何かいる」と俺に訴えている。顔を上げると、一つ目の6mはあるであろう緑色の肌をした巨人が、持っている棒を振り上げた。


「セイヤ!中に入るぞ」


 セイヤに危険を伝えるために、大声を上げた。いきなり俺が大声を上げたのにびっくりしていたが、俺の顔を見て冗談なんかではなく真剣なんだと判断して、大急ぎで階段を下る。


 あの巨体じゃ中に入れないだろう、一安心してぐでっと尻を床につける。しかし、あの巨人は棒を下ろして手を伸ばしてきた。再び逃げる構えを取ろうとすると、グガァと大声が響く。逃げる方向に向けていた眼をそちらに向けると、巨人の手はサッと引き、なにかと戦っている。


「怪獣映画かよ・・・・・・」


 俺もそんな気分だった。俺らを追い詰めていたあの巨人は、3mはあるであろうオオカミと戦っていた。巨人が棒を振り上げオオカミ一直線。オオカミには当たらなかったが、その地面は大きなクレーターができていた。


 オオカミはその隙を見逃さなかった。研ぎ澄まされたその爪で、巨人の目を裂く。目がなくなった巨人は適当に棒を振り回す、そんなものが当たるわけなく、オオカミは巨人の四肢を腕から順に切り裂いていた。オオカミが勝利し、その死体をでっかい口と牙で喰らう。


 俺、ここで死ぬんかな。衝撃的な映像にしばらくは足が動かなかった。


「トモヤ、逃げよう」


 そう言われ、オオカミから逃げるために奥へ奥へと走っていった。


「はぁはぁ、ここまで、はぁくれば大丈夫だろうはぁ」


「あぁそうだな」


 俺はめっちゃ疲れて汗かいてんのに、こいつはすました顔で俺を見る。


「とりあえずここは戦えなければ死んでしまう。スキルの確認しよう」


 俺がそう提案すると、あぁと了承を得た。


「つっても、俺はお前のステータス全部見通せるけどな」


「そういやお前鑑定持ってるんだったな」


「そうだよ、ほれ俺のステータス」


 半ば無理やりだが、セイヤのステータスを見た。



刈水誠也 料理人 LV0

筋力=10

防御=7

俊敏=10

器用=5

魔力=8

【スキル】

洗浄 火魔法 鑑定 アイテムボックス 鋭さ

【ユニークスキル】

凝固



「料理人のくせに強くね?」


「あー差別だー、お前こそ暗殺者のくせに体型終わってんな」


「わかってるよい」


 死ぬと覚悟したさっきまでとは違い、ほんの少しの余裕ができた。そのためか、さっきの王の仕打ちに対して怒りが沸き上がる。


「さすがにムカつくわ」


 そう言葉にするも共感は得られない。セイヤの顔を見ると、まるで好機だと思っていそうだ。なぜそんな顔できるんだろう。俺たちはさっき、多分死にかけた。其れなのにコイツは、まるで状況を理解してないのかと言わんばかりの面だ。怒りの矛先はセイヤに移る。


「なんでそんな面できるんだ?」


「あ?」


「だから、さっきのくそやろうのせいでこんな目にあってんのに、なんでそんなあほ面できるんだよ!」


「落ち着け!!ここで言い争ってたら生き残れるのも生き残れなくなるだろ!!」


 確かにその通りだ、だけどこの行き場のない怒りをどうしようもできない。


「確かに俺はラノベのような展開で異世界を楽観視していた、それは悪いと思う。だけど、生き残るには二人で力合わせなきゃだめだ」


「・・・・・・確かにそうだな」


「お前の憤りは力となる。今度会ったとき、あいつの顔をさっきの巨人みたいにすればいいだけだ。」


「ありがとう」


 俺はつくづく思う。なんていい友達なんだと。

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