第8話 両親

「ヒナタの両親が、本当の両親じゃない!?

そんな話、一度も聞いたことなかったのに……」


気がつくとアカリさんはすっかり泣き止んでおり、淡々と話をする。


「ヒナタは、あなたに会えて、そんなこと忘れるくらい楽しい毎日を過ごせていたんです。」


僕は、何か嫌な予感がした。


「ごめんなさい!!

僕がヒナタの家族になりたいとか思って、

生まれ直し体験なんてものを使って、

だから、もうヒナタは……」


アカリさんは驚いた顔をした。


「いいえ、あなたが謝る必要はないの!

混乱させちゃって、こちらの方がごめんなさいね。」


僕は、今になってやっと冷静さを取り戻した。

「何があったのか、詳しく教えてぐださい。」


「これは私が幼稚園児だった頃のこと。

その頃、私はいわゆるひとりっ子だった。


友達はみんな、兄とか弟とかの話をしてて、とても羨ましかった。

だから、私は母に、弟が欲しいと頼んだ。

母は、嫌な顔1つせず了解してくれた。」


僕は、もはや幼稚園児の思考ではないとは思ったが、そのまま聞き続けた。


「だけど私の母は、弟、ヒナタを産んだ数日後、亡くなってしまった。


そこから、私の父は豹変した。

お前が弟が欲しいなど言わなければ、

母は今でも生きてたんだ。


だから母を殺したお前は家族なんかじゃない。って、私とヒナタを置いてどこかへ行ってしまった。


だけど、私達は運良く不妊症の新郎新婦に迎えられ、今の生活ができている。」


私は呆然とした。ヒナタに、そんな過去があったなんて。


「でも、私の心の傷は、いつまで経っても消えなかった……



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