第6話 ハル
『弟が生まれたら、なんて名前付けようかな?』
……ハル
ふと浮かんだ名前は、ハル。
『お母さん、僕、弟がほしい!!』
■■■
そっと目を凝らすと、遠くに男の子が後ろを向いて立っている。
全然知らない子のはずなのに、なぜだか名前はわかる。
この子の名前は、ハル
気がつくとハルは、僕の目の前に来ていた。こちらをじっと見ている。
「お兄ちゃん……」
ハルがそっとつぶやく。
「え…?」
「ハヤトは僕のお兄ちゃんでしょ!
お兄ちゃんに…なるはずだったのに
なんで、なんで生んでくれなかったの?
僕はいらなかったの?!」
ハルは、目から大粒の涙を流している。
「たけど、お兄ちゃんが、弟がいる家族を喜ん
でくれてよかった。」
すると、ハルはぴたりと泣き止み、またこちらをじっと見ながら言った。
「実はね、生まれ直し体験てゆーの、
あれ、作ったのぼくだよ。
お兄ちゃんが、ヒナタっていう子の家族を羨ま
しがってるから、家族にしてあげたよ。」
ハルは、ずっと真顔のまま話し続ける。
「お兄ちゃんが楽しそうにしてて、僕も幸せだ
ったよ。でも、このままじゃ何も変わらないも
んね。僕はもう生まれること、できないもん
ね。
だから僕は、この空想の世界と一緒に消え
る。そうすればお兄ちゃんはもとの世界に戻れ
るでしょ。それでいいでしょ。
じゃあバイバイ。」
「待って!!ヒナタは?ヒナタももとに戻るの??」
僕は慌てて言う。
「ヒナタ?お兄ちゃんがヒナタになったじゃ
ん。もとに戻ったら、お兄ちゃんはハヤトに戻
るの。」
「それじゃ……ヒナタの存在も消されるってこと!?」
「そういうことになるね!」
ハルは一ミリも笑顔を浮かべない。
すると、ハルの周りが少し明るくなった。
見覚えがある場所だ……
僕、ハヤトの本当の家だ。
「じゃあ、バイバイ」
「……!!!」
僕は、無意識のうちに電車の定期券をバッグに入れ、走り出していた。
ヒナタの家に行かないと。なぜかは分からないが、そう強く感じた。
ヒナタの家は、知っでいる。
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