世界の始まり

この国はもう終わるけど

そしたら再建すればいいだけのこと

そしたら、今度はもっといい世界になったらいいな

人とちゃんと話ができるような


僕ら“御上の言うことにゃ逆らうな”

よって議論には必要性が、ない

いろいろな意見を一つにまとめる、なんて概念自体が不思議

“上”の言うことにただただ従っていればいい


そしたら自分の責任を負わなくていいし

自分の頭で何にも考えないでいられるから


ただそれにしても

九割の人たちはものをちゃんと考えている

しかし残り一割が尋常じゃなくとんでもない

その残り一割が“上”になってしまって

もう手がつけられない

生殺与奪の権を握られて


そして人間の順応性、適応力は半端ないから

そんな世界にだんだんと慣れてしまう

そしたら自分の責任を負わなくていいし

自分の頭で何も考えないでいられるから


結果、どんな人物が“上”になっても

ただただ従うだけ

差別主義者が“上”だから差別をするし、

あるいは差別はダメだ“ということになったから”反差別になる

ただそれだけ


いつ頃からこんなことになったのだろう?

いつこんな世界が始まってしまったのだろう?

いずれにせよ自分の責任を負わなくていいし

自分の頭で何にも考えないでいられることに

僕らは味をしめている


一旦崩れ始めた状況は

一からやり直さない限り始まらない


それでも一昔前まではそれでもよかった

高度経済成長期、バブル、金があった頃

日本が豊かだった頃はそれでもよかったの

“上”が誰であろうが豊かだったから


でも今、もうそんな時代じゃない

僕らは貧乏なんだ

……ということがわからない大人たち

いや、わかりたくない大人たち

そりゃそうよね、長年染みついた感覚はなかなか剥がれない


自分が貧しいという事実が認められない

そりゃそうよね、だって、

あなたたちが、今の日本を作ったんだもの


そんなことをわかってしまったら壊れてしまうから

決してわからない

そしたら自分の責任を負わなくていいし

自分の頭で何にも考えないでいられるし


そして、自分の頭で考える“だけ”で

“学ば”なくて いいから


いろいろなことがあった

パンデミックに天変地異

でもそんなのきっかけに過ぎない

僕らはもともと緩やかな自殺をしていた

ただとどめを刺されただけのこと


でも、一旦崩れ始めた状況は

一からやり直さない限り始まらないから


この国はもう終わるけど

そしたら再建すればいいだけのこと

そしたら、今度はもっといい世界になったらいいな

人とちゃんと話ができるような

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