さあ、みなで丸くなりなさい

“反権力反政府はみっともない”

そんなの別に好きにさせてやりゃいいじゃない

誰もが何かを言いたいんだから

あなたのように


でもそうは言っても強気には出られない

反体制だと拘束される現実がそこにあるんだ

芸能人が反政府だと干されてしまう

見えない圧力がしっかりそこにあるんだもの


とまあたかだか政権批判をした程度で大騒ぎ

ああこの国には本当に言論の自由がないんだなあ


月日は流れ……


僕たちは一体いつから

自分たちの国を好きだと

素直に言えるようになったのだろうか?

そりゃだって嫌いって言って変えようと思って闘うのって

コスパが悪いもん


ネットとか見てると

愛国者が多数派“に見える”から

それに従ってるだけ


少数派はコスパが悪い

“少数派であると思われる”こと、

一人で食事していると知られることは

コスパが悪いもん


議論をすることを“争う”ことだと思ってる

仲良しの友達と議論することは“争い合う”ことだ

したがって友達と議論することはない

楽しい話を楽しく 穏やかな話を穏やかに


“争う”ことを不毛だと思ってて

友達とそうするのはお互い気まずい

要はコスパが悪い

議論に負けることを“負ける”ことだと思ってる

それは“恥ずべきこと”だと


ある意味、教育の成功

そしたら“日本大好き!”と

特に何にも感情移入してるわけでもないのに言えちゃうし

そう言えちゃう自分を素直なのだと思えるし

何より、好きなものを好きと言える気持ちは大切

そこに異論などいらないから


極力ものを考えたくない

手っ取り早く真理に到達したい

一生懸命勉強するなんてマジダサい

俺はこんなに効率良く格好良く世界の真実に辿り着けたぜ


コンプレックスを逆手に取って武器にしよう

“それ”を攻撃するやつらはそのままに

諌める作業はコスパが悪い

全ては自分次第のポジティヴ・シンキングで

自己責任


批判されてもへこたれない

なぜ批判されているのかなど考えようともしない

とにかくできるだけ頭を使わないで生きていきたい

さあ、皆で丸くなりなさい

生活も政治も社会も世界も

全部“優しさ”の力で解決しましょう


時は移ろい……


結局、どこの国だろうと

人間関係の大変さは変わらないし

人間のくだらなさは変わらない

よその国のいいところだけを見て

あそこはいい国だ、と思ってる

どこの国も同じ


ただ僕らは

もう“終わり”だから

“もう終わる”ことが、実は心の奥でわかっていたからこそ

それは転がる石のように

どんどん速度を増して、坂道を転げ落ちて、そして––––


破滅


世界の敵の敵が

負けた

僕らは波に流されて

それだけのこと

酷くささやかな、それだけの話––––

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