嘆きのレジスタンス(1)
砂漠に囲まれたとある町──石造りの建物が並ぶ通りで車が暴走して爆発した。
すぐに装甲車が駆け付けてビトルン達が機関銃を持って車から降りた。
人造人間に抵抗する人間は少なからずいた。
各地で人類による統治が正しいと唱える一部の過激派が暴れては人造人間の部隊に鎮圧された。
多くの人間にとってその様な過激派のテロ行為は迷惑極まりないものだった。
その過激派にロニーがいた。
ロニーは過激派の家族をビトルンに殺されてビトルンを憎んでいた。
ロニーの様に家族を殺された者、人造人間のせいで富を失った者……様々な理由で人造人間へ憎しみを抱く者がいた。
「始めるぞ」
ロニーは仲間に声を掛けた。
爆発現場に駆け付けたビトルンの背後からロニー達は手榴弾を投げて逃げた。
手榴弾が爆発してビトルンの体が辺りに散らばった。
車で逃げたロニー達は郊外の岩山のアジトに帰った。
「十匹やったぜ」「こっちは十五匹だ」
仲間の声が飛び交う中、ロニーは奥のテントに入ってベッドで休もうとした。
「敵が来たぞ!」
誰かの声と共に空から轟音が近づいた。
「戦闘機か」
ロニーはテントから出て空を見上げた。戦闘機が三機近づいて来た。
「まずい、撃たれるぞ」
ロニーの言葉は的中した。
戦闘機からミサイルが発射された。ミサイルは岩山に着弾して爆発した。
岩石がアジトの上に降り注いだ。
「逃げろ!」
誰かの声が響いてロニーは岩山の道を走り抜けた。
目の前にジープが並んで止まっていた。
「待ち伏せか」ロニーは舌打ちしてすぐ横の小道に走った。
ジープから自動小銃が連射された。
ロニーは半かがみで駆け抜けたが、目の前にビトルンが現れて殴り飛ばされた。
「くそっ!」
ロニーは逃げようとしたが別のビトルンが体を取り押さえて羽交い絞めの状態で立ち上がった。
戦闘ヘリも加わって爆撃が激しくなった。
「さっさと殺せよ。四本腕の化け物が!」
ロニーはビトルンを睨んだ。ビトルンは複眼の顔でしばらくロニーを見た後、ロニーのこめかみに指を突き刺した。
「うわあ!」ロニーの全身がガクガク震えた。ロニーはそのまま気を失った。
ロニーが目を覚ました場所はアジトと町の中間にある砂漠の石の上だった。
「俺は……生きているのか」
ロニーは頭を押さえて立ち上がった。アジトの方角を見ると煙が立ち昇っていた。
「全滅か……ビトルンに捕まった筈だがなぜ生きているんだ。こめかみに何かを刺されて……あれは自白剤か何かだったのか」
そばにはジープが止まっていた。
「何だ。キーが挿してある。これに乗れって事か」
ロニーはジープで町へ向かった。
町はいつも通り賑やかだった。石造りの家屋や野菜や肉を売る店が並び大通りで人が行き来する中をロニーは一人で歩いた。
「ロニー!」
誰かが呼ぶ声で振り向いた。レジスタンスの仲間達だった。
「お前、アジトに戻ったんじゃなかったのか」
「ああ、だが……必死に逃げて来たんだ。空爆で酷かった」
ロニーは言葉を選んだ。
「そうか、町にいる連中は村のアジトへ行った。一緒に行くか」
「ああ、もちろんだ」
ロニー達はトラックに乗り込んで町を出た。
町の南西部にある村に一行は到着した。
力作業をする男、洗濯物を干す女、遊ぶ子供達……穏やかな雰囲気の村だがどこの家屋にも自動小銃や手榴弾などの武器が隠されていた。
「爺さん元気か」
ロニーが声を掛けると小柄で痩せた老人は「ああ、見ての通り死んじゃいないよ」と笑った。
「うっ」
ロニーはこめかみを押さえて顔をしかめた。
「痛い!」
こめかみから目の奥にかけて痛みが広がった。
目を閉じても痛みは止まらなかった。
ロニーはその場にうずくまった。
「どうした」「おい、ロニーしっかりしろ」
仲間の声が遠くで聞こえるが痛みが耳にも広がり次第に周りの音が聞こえなくなった。頭から顔全体に痛みが広がりロニーは気を失った。
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