電気店のオヤジ(4)
週末、岸島が自宅にいるとインターホンが鳴った。
玄関のドアを開けると商店街に住んでいた同級生の河田が息を荒くして立っていた。
「すまん、匿ってくれ」
河田はそう言うと玄関に駆け込みドアを閉めた。
「どうしたんだ」
岸島はドアをロックしながら訊いた。
「ビトルンの襲撃から逃げて来たんだ」
「襲撃って……お前は何もやっていないだろ」
岸島は驚いた。
「俺の親父が桑野の会社の秘書をやっていて最近は俺も親父の仕事を手伝っていたんだ。俺の口座に賄賂を振り込んでもらっていた」
河田の答えに岸島は驚きから冷めた表情に変わった。
「お前、なぜ来たんだ。奴らが俺を囮にして町から逃げて来た連中を殺そうとしているかも知れないだろ」
岸島が言うと河田は「あっ」と言葉を詰まらせた。
「それに桑野は俺の親を殺した。そいつの片棒を担ぐ奴を許すと思ったのか」
岸島は怒りを滲ませて言った。
インターホンが鳴った。
「来たか」
岸島はモニターを見た。ビトルンが三人立っていた。
「何の用だ」
「不審者を確保しに来ました。ドアを開けて下さい」
「わかった」
岸島は答えて振り返った。
「今からドアを開ける。俺は死にたくないからな。それまでに裏の窓から逃げてくれ。俺がやれるのはここまでだ」
岸島が言うと「わかった。すまない」と答えて靴を持って奥へ走った。
岸島は玄関のドアを開けた。
「中にいるぞ」
岸島の言葉を聞かずにビトルンが一斉に部屋に駆け込んだ。
外で銃声がした──
ビトルンが一人だけ残りあとは黙って家を出て行った。
「ご協力感謝します」
「死にたくないからな」
淡々と話すビトルンに岸島も抑揚のない口調で答えた。
「話は全て聞いていました。あなたは容疑者の逃走を手伝いましたが今回は捜査に協力したので免罪にします。それと謝礼を口座に振り込みます」
「ビトルンは聴力もいいのか。ご丁寧にどうも」
「いえ、壁越しの会話は私達には聞こえません。それでは失礼します」
ビトルンは家を出た。
「盗聴しているのか。まあ別にいいけどな」
岸島は驚く事もなく荒れた部屋の掃除を始めた。
家の外でパトカーが走り去る音がした。
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