第29話

夏奈お姉ちゃんのバスケを見ていたけど本当にすごい、最後までどっちが勝つか分からなくて最後は夏奈お姉ちゃんがシュートを決めて勝利を手にした。ひとつ残念なことがあるとしたら途中で割り込んできた人のせいで上から見れなくなったことだ。


身長がないので基本的に1番前に居ないと何も見えない、下に降りても全然見えなかったが最後は雨音さんがおんぶしてくれたので見えた。なんか子どもみたいに扱われてた気がしたが試合を見せてくれたので気にしないでおこう。


「おめでとうございます、もう少し祝福したいんですが1年のリレーが迫ってるのでまた昼ごはんの時に言いますね」


「うん、ありがとう雪くん。雪くんもリレー頑張ってね!」


その言葉を聞いてちょっとやる気が出だ。とりあえず運動場に移動して列に並ぶ、まぁ僕と同じ番号の人の中に柚希さんがいた。


僕は何故か2走者目なので話している暇などない。とりあえず僕は1位でバトンを受け取って走り出す。


後ろのことなんて気にせず走っていたが急に僕の体がバランスを崩した。転けてしまったか……と思ったが背中に触られた感覚が残っていた、恐らく今僕の横を通った人に押されたんだろう。


「とりあえず雪、立てるか?」


「大丈夫です」


「そうか、一応これは勝負だからこれ以上構ってられない、すまんな。じゃあまた」


そう言って柚希さんは走っていくが手を差し伸べてくれただけでもありがたかった。


まぁ足からは血が出ていたがとりあえず今は3走者と人にバトンを渡すことの方が先だ。僕は痛みを我慢しながら走ってなんとかバトンを渡すことが出来た。


「大丈夫か雪、とりあえず保健室行くぞ。あと、雪は転けたんじゃないんだ、気負う必要は無い」


「やっぱりあのごつい人に押されたんですね、僕。別に押されたからと言ってその人に何かするつもりはないですけどね」


「あぁ、雪ならそうすると思うがリレーが終わったら雪のクラスの人達にそいつは囲まれると思うぞ? まぁそんなこと気にせず保健室に行くか」


柚希さんに肩を支えてもらって保健室に向かう。怪我の容体としては擦り傷の捻挫らしい、よくあの後走れたと自分でも思う。


人取りの手当てはしてもらったがこの後の競技の参加は難しそうだ。多少無理すればやれるのだが、まぁ色んな人が許してくれないだろう。


ということで僕は会長の元に向かった。途中で大勢と生徒に囲まれてる男子生徒がいたけどまぁ、僕には関係ないだろう。


「怪我したので僕も手伝いに来ましたー」


「別に怪我して競技に出れないからといってこっちを手伝いに来る必要はなかったのよ? 初めての体育祭なんだから観戦してても構わないのに」


「観戦しようにも身長が足りなくて見えないんですよ。僕より身長の低い生徒なんていませんし、だいたい最前列は既に取られてますから」


さっきみたいに誰かがおんぶしてくれたら見えるが、さすがに2度も生徒の前で子供扱いされたくないなら。


「ならここから見ててもいいわよ?」


「じゃあ手伝いながら見るとしますかね。ちょうど僕の知り合いの人が競技に出てるみたいですし」


視線の先には男子サッカーをしてる和田お兄さんとそれを応援してる夏奈お姉ちゃん達。和田お兄さんは遊んでるように見えるがそれも僕が知らないだけでちゃんとしたサッカーのテクニックなのだろう。


放送は始まりと終わり、そしてアクシデントが起きた時にしか使わないので結構暇である。次の競技に出る人が見つからなかったら本部に知らせて放送してもらうらしいが自分が出る競技を忘れる人なんてほとんど居ない。


「暇ね」


「暇ですね」


僕は競技に1回出てからだが会長は最初から競技に参加できてないので僕より暇だろう。


「そういえば1年のリレーが終わったあとに誰かが囲まれてたんだけど何かあったのかしら?」


「あーそれ多分僕を押して転ばせた人が僕のクラスの人達に囲まれてるんじゃないですか? 転かされただけでそんな熱くならなくてもいいんですけどね……」


「私はずっと見てたからわかるけど、1位の時に押されて結果は2位だったんでしょ? あの時転ばされてなかったら1位だったかもしれないんだから熱くなるものよ」


僕の後の人たちが頑張ってくれたおかげで最下位から2位にまでは浮上したが1位には届かなかった。確かにあの時抜かされたとしてもそのまま僕が走っていれば1位になっていたかもしれないので熱くなるのも理解出来るかもしれない。


「大丈夫かい雪? 近況報告なんだけどね、雪を押したあの生徒がボコボコにされちゃってるから雪が止めてくれないかな?」


「あー、分かりました。でも歩くのがきついんですよね」


「それくらいウチがおんぶするさ」


またまた雨音さんにおんぶしてもらって、例の集団リンチ現場にやってきた。


「僕は気にしてないのでそこら辺にして貰えると僕は嬉しいです……。正直今の光景だけだと僕を押した人より怖いです」


「だってさー、とりあえず解散、解散」


そのまま本部席に戻ったのだがその後は雨音さんの膝の上で観戦することになったのは関係ない話だ。

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