第28話

今日は2回目の体育祭、いつも楽しいけど今回は雪くんも見てくれているのでより楽しい!


「ちょっと隣いい? 夏奈ちゃん」


「副会長? なんで私の名前を知ってるんですか」


「あぁ、生徒会に雪っていう人が居てシェアハウスの同居人について聞いてたからその人と話したくなってみてね」


まぁ気になる話題だと思うがただの生徒会のメンバーっていうだけで私のところにまで話を聞きに来るだろうか? 雪くんがシェアハウスのことを言ってるということは信用できることは間違いないし、何より生徒会副会長だ。


でも……この2人には苗字が同じという共通点がある、そして今回話を聞きに来たこと、本当にそうなのかもしれない。


「わざわざ私のところまで聞きに来るような話でしたか?」


「男子と女子の先輩後輩がひとつ屋根の下で暮らしてるって気にならないわけが無いでしょ?」


生徒会の副会長って立場は恋愛をしずらいところもあるし、人一倍そういう話題が気になるのかもしれない。


「特に何もないですよ、ただ一緒にご飯を食べて一緒に登校したりしているだけです」


「雪と言っていた事と同じことを言ってるね」


「じゃあこっちからひとつ質問を……」


質問をしようとしたが、放送が挟まれてしまった。つまりリレーが終わって次の競技が始まってしまうため移動しないと行けなくなった。とりあえず一旦この質問はお預けだ。


私が出る競技はトーナメント式のバスケで、10クラスから選抜されたメンバーで戦って優勝を決めるというものだ。体育館でやるので見れる場所はあんまり多くないが今日に限っては2階も使えるのでまだマシだと思う。


「夏奈、バスケしたことないのに大丈夫なの?」


「んー分からないけど他の競技に比べたらなんとかなると思うよ。バスケって何となくできる気がするし」


「それは全員が初心者だった場合だから何とかなるだけであって、今回はちゃんとバスケ部の人もいるんだから厳しいでしょ」


それでも相手全員がバスケ部っていうわけでないから、そのバスケ部じゃない人を狙って攻めればいいはずだ。まぁ現実はそう上手くいかないと思うけど。


「夏奈が選ばれた理由の一つが身長だから、リバウンドは任せたよ」


「私もかっこよくシュートとか打ちたいんだけど……。勝つためならしょうがないかぁ」


雪くんにかっこいいところを見せるチャンスだったけど仕方ない、自分な満足することよりチームが勝利する方が優先だもんね。


そろそろ始まるとなった時に体育祭の2階から手を振ってくれている雪くんの姿があったので振り返しておいた。


「雪くんに応援されてる事だし、何としてでも勝たないとね」


「そうだねって言いたいけど雪くん、身長低すぎて姿が見えなくなっちゃったよ? こういう時は低身長って不利だよね」


さっきまで雪くんがいた場所には全く知らない別の生徒が居て、ここからは見えないけど雪くんはその後ろにいるはず……。


試合も始まっちゃうし、雪くんのことを気にしてられないかな。


試合のホイッスルがなって、最初にボールを手にしたのは相手のバスケ部の人。そして一気に詰められて簡単にスリーポイントを入れられてしまった。


「いやぁ、私たちには出来そうにないね。夏奈、あの子にボールを取られないようにねって言っても厳しいだろうけど」


「いやいや、やってもないのに諦めるのは気が早いよ。次はこっちの攻撃だから早く行くよ!」


ボールをバスケ部の人に渡して入らなくてもいいからゴールに向かって投げてもらう、そしてそれを私がリバウンドして入れる。地味かもしれないけど、勝つ確率としては1番高い。


「まだ2点だから更に入れていくよ! 向こうもバスケ部だからといってそんなにじゃんじゃんスリーポイントを入れれるわけじゃないと思うから」


「了解!」


それから取られては取っての繰り返しが続き、残り時間が1分の時点でスコアは3点差。あと2回入れないと勝てないのだが、相手も攻撃をやめて完全に守る体制だ。


「うーん、あと2回入れるのはきつそうだなあ……」


「私に任せて、せめて引き分けにはするから」


バスケ部の人がボールを受け取ってスリーポイントゾーンよりも遠い場所から……入れた。


「うん、決まって良かった。それじゃああと1回、頑張るよ」


バスケ部の人の活躍によって点差はなくなったので、今回の攻撃を守って入れれば勝ち。と言っても相手ボールで相手はいれれば勝ち、入らなくてもこっちが攻撃する時間はわずかしか残ってないので引き分けになる確率の方が高い。


「よっと、背が高くてよかったぁ」


相手のシュートのリバウンドボールをとって前に進む。誰かにパスを回している時間は無い、ここで入れないと。


そうして私が投げたボールは、リングの中に納まりホイッスルがなった、つまり私たちの勝ちだ。


「ナイスシュート! これで2回戦進出だよ」


私は手をピースにして体育館の外から見ていた雪くんに微笑んだ。


その後副会長は見つからなかった。


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