第20話

今日は金曜日なのだが2年生は校外学習に行ってくるらしく、僕が起きた時にはもう夏奈お姉ちゃんの姿はなかった。どこへ行ってるかは知らないがこんな朝早くから行く必要があるんだから結構遠い場所なのだと思う。


「偶然シェアハウスがあったけど普通ならこの景色が普通なはずだったんだ」


偶然シェアハウスを見つけて、夏奈お姉ちゃんに出会わなければ学校で友達を作ることが出来なかったかもしれないし。今の僕は夏奈お姉ちゃんに教えてもらったから料理ができるが出会ってなければ僕は料理が出来ず不健康な生活を送っていたのかもしれない。


1人でいてもほとんどやることは無いし、かと言って誰かを遊びに誘う勇気は無いのでとりあえず朝ごはんを作ることにした。



※※※



「ねー、さすがに集合時間早過ぎないかな? 雪くんだってまだ寝てる時間に家を出たんだよ?」


「それは先生に文句を言いなよ、私は親がいなければ起きれなかったけど。その分夏奈はちゃんと起きてるじゃん」


確かに起きてるけど、普段ならそこから雪くんを起こしたり朝ごはんを作ったりやることが色々ある。今日は全てやれていないので少し退屈である、時間が許しくれたのならせめて雪くんの朝ごはんだけでも作って行きたかったけどその時間すらもなかった。


そしてほとんどの人は集合場所でコンビニなどで買ってき朝ごはんを食べている、私もそのうちの1人だ。朝ごはんを家で食べていたら遅刻するくらいには今日の集合時間は早い。


「まぁ他の生徒が来ちゃう前に私たちは出発しておかないと行けないからね。バスが出発する頃に他の生徒は来ると思うよ」


「じゃあ雪くんに会うことは出来ないかぁ……」


「いやいや、夏奈は毎日会うことができるんだから別にいいじゃん。最近未来お姉ちゃんって言われてない!」


私たちは生徒が固まってるところから離れた所で朝ごはんを食べているならいいがこの話を聞かれていたら相当まずいと思う。


「ショタコンは抑えておくように、いくら雪くんでも引いちゃうよ? というか昨日一緒に帰った時に呼ばれてたでしょ?」



「夏奈に比べたら全然言われてないよ!」


「私は雪くんと同居してるんだから私の方が言われてるのは当たり前でしょ? そもそもお姉ちゃんと呼んでくれてることをありがたいと思ったら?」


私の要望から雪くんはお姉ちゃんとかお兄さんで呼ぶようになった。さすがに同学年の人はさん付けらしいけど年上の人は例外なくそう呼んでいる。


よく考えなくても雪くんがその要望に答えてくれてることに感謝した方がいい。最初は夏奈お姉ちゃんじゃなくて夏奈さんだったわけだし、雪くんが辞めたいと思えば辞めればいいと思う。


「そろそろバスの中に入れー、これから長時間の移動になるが体調が悪いやつはいないか? 別にバスの中で寝ててもいいからな、その場合は近くの人が起こすように!」


先生がそう言うと、バスの後ろの席に座る人達から順番に入っていく。未来は私の隣なのだが絶対にバスの中で寝ようとしてる、その隣の補助席は和田くん。


「夏奈も眠たいなら寝るといい、その時は僕が起こしてあげるさ。バイトもやめたし、寝る時間に余裕が出来たからね」


「じゃあお言葉に甘えて私も寝ておこうかな。別に和田くんも眠たかったら寝ていいからね」


バスが動き出すと同時に未来が私の肩に倒れて来たので私も未来の肩に倒れた。


そして夏奈と未来は動き始めてすぐ眠りについた。


(本当に2人は仲がいい、僕は遊ぶことが出来なかった故に友達はいないからな。今更作ろうとしてもグループは構成されてるから手遅れか。まぁ2人がいればそれでいい、他の見下してくるやつなんて友達にいらないからな)


登校してくる生徒を眺めながら優吾はそんなことを思う。


「で、隣のお前。夏奈が学年一の美少女だからと言って寝顔を撮るのは良くないんじゃないか? バレてないと思ったら間違いだ、必ずどこからか自分の行動を見ている奴がいることを忘れるな。これは忠告だ、次はそんなことするなよ」


「っち、お前はいつも夏奈さんの隣に居て、楽しそうに話をしていて邪魔なんだよ。お前は夏奈さんの何なんだ?」


「ただの友達さ、それ以上でもそれ以下でもない。ただ、唯一の友達を盗撮しようとしてる奴がいたら普通は止めるだろう? そもそも一時の満足だけで、夏奈がこのことを言えばお前は停学になるかもしれないんだ。もう一度言う、必ずどこからか自分の行動を見ている奴がいることを忘れるな」


バスに揺られながら和田くんは隣の人にそんなことを言う。私は目をつぶっているだけで寝てはいない、ただ未来の方を向いているし2人とも気づいてないと思う。


確かに行動は誰かに見られてる、その人が私の寝顔を撮ろうとしたのだって和田くんにバレてるし、私は寝てないので私にもバレている。


「別にお前以外に見てるやつはいないから問題は無い。これを消せば俺がやった証拠なんて無くなるんだからな」


「なぜ僕以外に見てるやつはいないと判断できる。いや、確かに見てるやつはいないな、ただ


この会話は前後の席の人は雑談をしていて聞いてないと思う、だけど雑談をしてない上に寝ていない私には全て聞こえてきてる。


「和田くんはいつから私が寝ていないと気づいたの?」


「気づいてない、ぶっちゃけ適当に言った。まぁ夏奈が本当に起きてて助かったさ、それでこいつをどうする?」


「私を撮る分にはどうでもいいけど未来のも写ってると思うからとりあえず先生行きでお願いするね」


そして和田くんは先生を呼んでさっきまでのことを全て先生に説明して、その人は休憩場所のサービスエリアに着いたと同時に連れていかれてしまった。


そしてその人の席は先生の隣になった。

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