第18話

昨日僕たちが準備したものを使って全ての部活が新入生の勧誘を始めた。やはりサッカー部とバスケ部、野球部などの部活は気合いが入っている。


ちなみに生徒会に入っている僕達は部活には入らなくていいらしい、そして僕は漫研部という少し珍しい部活にて手伝いをしていた。漫研部の部員は今いる人だけで3人、1人だけでも活動できる部活だとしてもさすがに少ないと思う。


そして僕は仕方なく結衣お姉ちゃんと一緒に手伝っているのだが、漫研部の見学に来る人の八割が男子だ。夏奈お姉ちゃんには劣ってしまうが結衣お姉ちゃんもなかなかの美貌で男子は結衣お姉ちゃんが漫研部の部員だと思っているのだろう。


結衣お姉ちゃんと二人で居ると絶対に男子から見られてしまうから学校で2人きりになるのは嫌だったのだ。今はまだぼく達に生徒会という証拠が付いているから問題ないものの、なかったら噂が止まなくなっている頃だ。


「副会長ー、漫研部って普段はどんな活動をしてるんですか?」


「普段通り呼んでくれてもいいんだけどなー。えっとね、名前の通り漫画を書いて、たまにコミケに行く人もいるって聞いたことがあるよ」


かの有名かコミケにも行く人がいるのならこの部活の人は相当凄い人なんじゃないだろうか。漫画を書く人は多数いてもコミケに行ける人なんて極小数なのにその中で学校から行ってるんだからその事実が広まれば有名になるのでは?


「そのいつもコミケに呼ばれる人が雪と同じタイプでさ」


「あぁ、なるほど」


有名になりたくないのなら仕方ない。


漫研部の手伝いと言ってもずっと部室の前で手伝いをする訳ではなくその勧誘していいよと指定されている時間の半分だけ手伝う。もう半分の時間は残りの生徒会の人が手伝いをするらしい。


「生徒会の皆さん、ありがとうございました」


僕たちは生徒会室に戻って休憩を取る、普通なら今の時間は4限目で授業をしているのだがそれを休めるのならありがたい。それにまた教室に戻るのも面倒なので僕と雨音さんは生徒会室に弁当を持ってきていたのだが他の人も同じ考えらしい。


まだ僕たちしか戻ってきていないが後に会長と雨音さんも戻ってくるだろう。


「副会長と雪くんって出会ってそこまで経ってないのに仲がいいよね? 同じ中学だったり幼なじみだったりするのかな?」


「家は全然遠いですし中学も同じじゃないですよ。まぁちょっとした腐れ縁的な感じです」


「その言い方は酷くないかな 雪はあたしの関係を断ちたいと思ってるの? 唯一雪の事を子どもの頃から知っているのに」


そういえば僕が拾われた時は結衣お姉ちゃんは中学生で僕は小学生だった。追い出される時待った日以外話してないしただお互いに姿を見ていただけだと思うのだが。


「確かに僕も副会長の中学生の頃は知ってますよ? でも僕にとっては副会長と関わらない方が安全、それは副会長もわかってるでしょう?」


「今なら大丈夫だよ! 家にあった機材も全部撤去してもらったから」


あの人たちが海外にいるから大丈夫だと言うのはどうなのだろう、あの人たちの事だしどこで僕たちのことを見ているか分からない。学校ではそんなことは無いとはいえ、登校中にすれ違う人たちの中に使用人がいるかもしれない。


「二人の関係がさらに気になってきた! 幼なじみじゃないならなんなんだろうね、やっぱり苗字が同じだから姉弟……?」


「断じて違いますね、西園なんて苗字はどこにだって居るじゃないですか。それに見た目だって全然似ていないですしもし副会長が姉なら副会長と呼びません」


「それもそうかぁ……」



しばらくして会長と雨音さんが帰ってきたので各グループを作って弁当を食べ始めた。僕と雨音さん、そして結衣お姉ちゃんと書記の人。


「あれ、雪って今まで料理したことないのによく弁当作れたね。あたしが行く必要ないじゃん」


普段夏奈お姉ちゃんに作ってもらっていることを言ったら面倒くさいので言わない。雨音さんが言わないか心配だがさすがにそこまで口は軽くないだろう。


「なるほどね」


雨音さんのその一言にどんな意味が込められているかは定かでは無いがおそらく夏奈お姉ちゃんのことだろう。


「あ、そういえばあの子がいるんだったいつも雪と一緒に登校してる人。その人と家が近いから折半してもらってるって言ってたねそういえば」


「夏奈さんには本当に頭が上がらないですね。いつも弁当を作ってくれるので」


「ん? この前雪は自分で作ってると言ってなかったかい?」


やっぱり突っかかってくるとは思ってはいた。言っておくけど嘘は言ってないつもりだ。


「僕が作ってる時もあります。今日は夏奈さんに作ってもらったと言うだけです」


「そう? これ以上は踏み入らないがいずれバレるんだから今言っておいた方がいいんじゃないのかい?」


「確かにそうですね、えっとあの先輩と僕はシェアハウスの同居人で料理を任せてます。その他は僕が全部やってますね」


「だからいつも一緒に登校してるんだね。それで男子と女子が1つ屋根の下って何か起こったりする? 風呂から上がってきたところを偶然見てしまったとか」


他の人もいるんだけど、そういう話は二人きりの時にして欲しい、いや二人きりの時でもダメだけど。


「そんなことないですよ。基本的にそんなことが起きないように気をつけているので」


絶対にない、そう言い切りたかったがたまに夏奈お姉ちゃんが寝坊した時は結構無防備な姿を見てしまっている。相部屋なのでそこら辺は僕としても気をつけて欲しいと思う。


「ほんとに?」

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