第17話

数日後、試験の結果がA階段とB階段の踊り場に張り出された。この学校は試験結果の発表日は生徒に休んで欲しいということで午前授業らしい。


張り出された直後なんかに行こうものなら見ようと思っても押しつぶされて見れないしそもそも人が群がる場所には行きたくない。僕は昼休みに行こうと決めたのだがの何故か雨音さんも一緒来るらしい、まぁいいけど。


階段を降りれば2年生の試験が貼ってあるらしいけど見に行かなくてもお姉ちゃん達3人から送られてきた。結衣お姉ちゃんは変わらず1位で他の人はこの前聞いた順位から少し上だった、和田お兄さん以外は。


「なんでみんなは友達に試験結果を見せるんでしょうね。良かったら自慢げに見せる、悪かったら自虐気味に見せる、普通に考えたら見せる意味なんてないですし見せたら頭がいいと印象付けられたりバカにされたり悪いことしかないというのに」


「それはただの自己満だよ。子どもが親に褒めてもらいたいように友達に凄いとか面白いと思って貰いたいだけ」


他の人達のことなど僕には関係ないのでその人がそれで満足できるのならそれでいいんじゃないかと思う。



※※※



昼休みに僕達は見に行こうとしたのだがこの前生徒会に入ったのでそちらから呼び出しがあり見に行く時間が無くなった。雨音さんは残念そうだったが正直僕は興味無いので別に見なくても良かった。


自分が何位だったとしても何も思わない、悪かったら残念と思うだけで高順位をとっても喜んだりはしない。


「集まってくれてありがとう2人とも! 面倒くさいことに明日から部活勧誘界があるからそれの手伝いを生徒会でするんだってさ。バスケ部とかの人気な部の勧誘が激しくなり過ぎないようにしたり人気がないところに人を集めたりするらしいよ」


「……僕、そういうの無理です」


盛り上がってるところに入って沈めるということは人気な部から変な目で見られることになる。人気のない部に人を呼ぶくらいなら何とか出来そうだが、正直人気な部活の人達は陽の者たちばかり(偏見)なので怖い思いをして終わりだろう。


「雪がそういうことを出来ないのはあたしも理解してるから。そうだねぇ、雪には何をしてもらおうかな……あ、あたしに付いてきてね。雨音ちゃんは会長について行って仕事を教えて貰ってねー」


そして僕が結衣お姉ちゃんに連れてこられたのは学校裏にある大きめの倉庫。


「ここに部活の勧誘に使う物が色々あるからそれを各部活の倉庫に運ぶ仕事だよ。雪は力的な問題は大丈夫?」


「舐めないでくださいよ、一応僕だって男なんですから。よいしょ……ん!」


サッカー部と書かれたダンボールをやっと思いで持ち上げたが動けそうには無い。結衣お姉ちゃんの前で強がったけどやっぱり僕は非力だったようだ。


結局結衣お姉ちゃんと二人で1個ずつ運んで行くことにした。他の生徒は全員帰っている時間なので誰かに見られて何かを言われることはない、写真とか撮られて学校中にばら撒かれたら最悪義理の姉だということを言うしかないだろう。


でもその場合、夏奈お姉ちゃんの弟だと思われてしまっているのでシェアハウスの同居人ということを言わないといけなくなるのでそれは避けたい。結局誰かにバレたら全てを言うことでしか解決が出来ないので誰もいないことを願う。


「う、腕が痛いです……」


「あはは、雪は見た目通りの力だからね、それにずっと運動とかしてこなかったんだから仕方ないと思うよ。雪は非力のままでもいいと思うな、だってそっちの方が可愛いし?」


「男に可愛さを求めないでください。他の人にも可愛いとしか言われないので諦めてますけど」


入学してからかっこいいなどの‪”‬男性を褒める言葉‪”‬を言われたことがない。クラスの人達に言われるのは可愛いなどの‪”‬女性を褒める言葉‪”‬のみだ。普通男性に可愛いなんて言うものじゃないと思うのだが……?


それから他の部活の場所にも運び終わって生徒会室に戻ると雨音さんと会長もそこに居た。


「会長! こっちの仕事も終わったので帰っていいですか!」


「いいわよ、あと私はもうすぐで会長を辞めることになるんだからちゃんと名前で呼んでね。1年の時からずっと会長呼びだったでしょ?」


「会長呼びに慣れちゃったからそれ以外で呼ぶのはなんか違和感があるんだよね。まぁまだ会長でいいでしょ」


そこでみんなと別れて僕は雨音さんと階段に貼ってある試験の順位を見に行った。


「初めて柚希に負けてしまったね。それはそうと雪は圧倒的だね、これじゃあ追い抜くのは結構厳しそうだ」


1.西園雪 882点

2.不破柚希 876点

3.如月雨音 874点


まぁ1年の最初の試験だし僕が1位だったのもまぐれかもしれない。次の試験では2位や3位、もしかしたらもっと下の順位になる可能性もある。


まぁ雨音さんから話を聞いたあとなので周りからまぐれだったと印象付けられないように今の順位を維持するため勉強は続けるつもりではある。


「見るもの見たしさっさと帰るとしよう。雪には次の試験では負けないよとだけ言っておくよ」


「僕に宣戦布告するのはいいですけど、今回は柚希さんにも負けてるんですよ? 柚希さんにも言っておいた方がいいんじゃないんですか」


「雪から初めて挑発されたねぇ……。柚希には後で言っておくとして、じゃあまた明日」


雨音さんと別れて僕は少し寄り道をして帰ったせいで辺りは暗くなってしまっていた。帰った時に夏奈お姉ちゃんに心配されたが僕はもう高校生だし別に家族でもないんだからそこまで過保護にならなくてもいいと思った。

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