第13話
僕は昨日の電話の通り、昼休みに生徒会室に寄っていた。普通なら生徒会に入ってない僕が入れるはずがないのだが
生徒会室があるのは4階の一番端、1年の教室からは地味に距離があった。
生徒会室に着くと結衣お姉ちゃんが扉の前にいて、とりあえず中に入ると何故か雨音さんもいた。
「やぁ、雪も呼ばれたんだね、生徒会の勧誘に」
僕は結衣お姉ちゃんを見つめる。よく考えてみれば僕と話すという理由だけで生徒会室が使えるわけない、おそらく僕を生徒会に入れて強制的に僕と関わろうとしてるのだと思う。
「生徒会に入ると文化祭の裏とか色々知れて楽しいよ? まぁ遊べる時間は減っちゃうかもしれないけど生徒会は生徒会メンバーだけで色々楽しいこともするからさ」
「雪が生徒会に入るというのならウチも入ろう、雪が入らないのならウチも入らない、雪がいないと楽しくないしね。ウチの話についていけるのは雪だけだったから」
雨音さんは入学式の日に学年一位ということでクラス全員に話しかけられていたのだがその時に雨音さんが決まって言ったのはひとつの問題。学年三位の人を含め僕以外の人はその問題に答えれなかった。
逆に言えばその問題に答えられたからこそ次のテストで勝負を挑まれて今話してくれているのかもしれない。どこまで行けば友達なのか分からないので雨音さんが友達だと思い込むのはやめておこう。
「ひとつ雪に言ってなかったことがある。入学式の時に言ったあの問題、ウチでさえ解けなかったんだ。何が言いたいのかというと本当はウチより雪の方が頭がいいんじゃないかってね」
「たまたまですよ、とりあえず生徒会には入っておいた方が得そうなので入ります。先輩ならあの問題を解いてくれるかもしれませんよ?」
僕達はいずれ生徒会に入ることが決まって残りの昼休みは生徒会室で色々雑談をしていた。ちなみに生徒会室にいた人たちはあの問題を余裕で解いていた。
生徒会メンバーは入試の上位二名を指定して呼び出して入るか入らないかを聞く方式で決めているのだろうか。それだったら生徒会にいる人全員がこの問題を解けたというのも納得出来る。
確かに結衣お姉ちゃんは一位だし生徒会は入試の順位が高い順にスカウトしてるのだろう。おそらく僕たちが断っていたのなら三位以下の人がスカウトされていただろう。
「雪、生徒会ってエリート集団だけどウチたちがついていけると思うかい?」
「各年の入試上位を集めてると思いますし年下の僕たちが追いつくのは無理でもついて行くことなら何とかなるんじゃないですか? あそこにはまともな人しかいないと思いますし」
まだ会ってない生徒会メンバーはいると思うが今回会った人は全員まともで優しかった、少なくとも僕が少しでも怖いと思うような人はいなかった。
「そういえばウチたちを案内してくれた人も西園って言ってたね。もしかして雪のお姉ちゃんかい?」
いずれ言うことになるのなら今ここで言ってもいいだろう。
「そうですよ、ただ元が付く上に義理というのも付きますけど。詳しくはいずれ言いますよ、何せ公に話せることじゃないので」
「それだったらウチはその話を聞かないことにするよ。ウチはそういうのに同情して対応を変えてしまいそうだからね。君もそうやって対応を変えられるのは望んでないのだろう?」
「まぁ気を使ってもらおうと思ってこのことを言った訳では無いので。普通に一般人として接して貰えたら僕も嬉しいです」
僕がこのことを言う理由は、その人がまともで信用できるかを確認するため。少し上から目線になってしまうが僕の生い立ちを聞いて身を引こうとするのはいい、僕自身引かれるような生い立ちだというのは理解してるから。
その人とは友達にならなくてもいい、何よりこのことを聞いてバカにする人たち、その人と話したくもない。自分たちが当たり前のように過ごせているのも0.4%の確率、日本には少ないが僕みたいに当たり前のように過ごせていない人の方が多いというのにそれをバカにする人とは仲良くなれない。
自分が恵まれているということをちゃんと自覚して欲しい。
「1つ確認をしておきます。僕と雨音さんは友達ですか?」
雨音さんは「友達だよ」と即答してくれた。
「そうですか……。安心しました、またあの時みたいに裏切られるのが怖かったので」
優しい顔で拾ってくれたあの人たちが裏切り、虐待して追い出すということがあったので僕は少し”確認”をしたかった。
「ウチは雪が初めて話し合える友達だよ。頭が良いと困ることも多々あるんだ、天才故に独創的な考えを口走り理解されず周りから孤立していく。入試で学力を証明出来る高校なら友達ができると思ったんだ。結局は確認であんな問題を出したせいで雪しか友達になれなかったけど結果的にはそれでよかったと思ってる」
頭が良ければ楽を出来そうだと思う人は多々いる。それは自分が凡人だからこそ言えることで雨音さんが言ったように天才は天才なりの悩みがある。
僕は天才じゃない、努力をし続けた結果、限りなく天才に近づいたただの凡人だ。努力を辞めれば天才から離されていくし努力をし続けても天才を追い抜くことは難しい。
努力する天才、それが雨音さん。一位、それが雨音さんの凄さを証明してくれる。ただの天才なら一位を取ることはできない、そう僕は思っている。
今日は雨音さんと一緒に帰って、連絡先を交換した。これが同年代初めての友達ができた瞬間である。
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