第11話

「誰からの電話だった?」


その質問にどう答えるか僕は悩んだ、結衣お姉ちゃんという訳にはいかないし親と言う訳にもいかない。


「僕があの家で唯一無害だと思った人ですよ。入学おめでとうと言われました、夜にも電話することになってますね」


「じゃあ私は部屋に入らない方がいい?」


「いやこっちの都合なので僕の方が外で電話しますよ。ただ、会話は絶対に聞かないでほしいですね、僕も聞かれないように電話する場所は気をつけますけど」


電話の中で絶対に名前を出すことになるので夏奈お姉ちゃんに聞かれてはいけない。結衣お姉ちゃんは副生徒会長だし夏奈お姉ちゃんも知っているかもしれない、そうなったら僕は義弟だったということを言わないといけないだろう。


周りに広まればまた噂をされてしまうし、この前みたいに人がいっぱい押し寄せてくるのだろう。僕はそれを避けたいしそもそもこの前の噂もまだ無くなってないのだから噂を増やすのだけは絶対に避けたい。


「あ、そういえば私雪くんと連絡先交換してない!」


「確かに夏奈お姉ちゃんとしか交換してませんでしたね、それじゃあこれが僕の連絡先です」


未来お姉ちゃんと連絡先を交換してスタンプを1個送ってスマホをしまった。未だに連絡先を交換した時に1回スタンプを送る理由が分からない。


2つだけだった連絡先に未来お姉ちゃんが追加された。入学する前まではもうちょっと残っていたのだが追い出された時にあの家の関係者の連絡先は結衣お姉ちゃんを除いて全て消した。


そしてしばらく時間が経ち夕方になったので未来お姉ちゃんが帰宅した。


「こんなところにご飯を食べれる場所あったんだね」


「入学する前の昼ごはんに僕はよく言ってましたね。僕が初めて来た時は人がいなかったんですけど、最近は段々と増えてきてるんですよ」


中に入るといつものお兄さんとおそらく最近バイトで入ってきた人が厨房にいた。


「お、いらっしゃい兄ちゃん。久しぶりに来てくれたか、学校はどうだ?」


「友達もいますし今のところは楽しいですよ。今日はその友達も連れてきたので」


「どうも」


カウンター席に座って僕はいつものようにチャーハンを頼んだが夏奈お姉ちゃんはなかなかに悩んでいるようだった。


「ねぇ雪くんのおすすめって何かある? ここら辺に引っ越してから外食したことないからさ、どこお店の何が美味しいか分からないんだよね」


「おすすめはチャーハンですね、まぁここのお店で僕はチャーハン以外を食べたことがないんですけど」


ほかのメニューも沢山あるが最初来た時にチャーハンを食べてとても美味しいと思ったのでその後もチャーハンを頼んでいたら僕が来たらチャーハンというのが定着していたがあながち間違いでは無い。


「なら私もチャーハンにしようかな。知らないお店は知ってる人が頼んだものを頼めばだいたい大丈夫だし」


「あいよ、入学祝いとして少しサービスしておくから」


「ありがとうございます……って2回目じゃないですか? 3月ぐらいにも入学祝いって言ってませんでしたか?」


僕が2回目なので断ってもお兄さんは折れずに運ばれてきたチャーハンはいつものチャーハンより少し量が多かった。元のチャーハンの量がちょうど食べ切れるぐらいだったのだが増やしてもらったので食べ切れるが怪しくなってきた。


夏奈お姉ちゃんに食べてもらおうと思ったが女子だし色々気にすることもあると思うので「食べて」と言うのは躊躇われる。


「雪くんって少食だよね、その量食べ切れる?」


「分からないですけど、できるだけ頑張ってみます」


結局僕は食べきれずに残った分は夏奈お姉ちゃんに食べてもらった。僕がここに連れてきたのでお金の方は払おうとしている夏奈お姉ちゃんを何とか押えて僕が払った。


普段ご飯を作って貰っているのでそこら辺は払わせて欲しい。


家に戻ったあと僕は真っ先に風呂へ向かってこの後かかってくるであろう電話がどれだけ続いても大丈夫なようにした。まぁ僕も結衣お姉ちゃんも明日は学校だし深夜まで長引くことはないとは思う。


「雪くん、さっき連絡が来たんだけど6月のどこかにお父さんが様子見に来るってさ」


「それを僕に言ってどうするんですか」


「いや、なんかお父さんが雪くんを見たら彼氏って勘違いするかなぁって」


「シェアハウスなんですし僕が住んでて勘違いすることは無いでしょう。別に何かやましいことをしているわけでもありませんし僕を隠す必要も無いんじゃないですか?」


夏奈お姉ちゃんと付き合うにしては僕の見た目は合ってないし、手を出すことに関しては僕の体型じゃ返り討ちにされると思う。手を出そうとはそもそも考えてない。(重要)


「ちなみに同居人ができたことは言ってますか?」


「言ってなーい、そもそもシェアハウスだし何もおかしいことは無いから言わなくても大丈夫でしょ」


「僕もこんな見た目ですし大丈夫だとは思いますね」


数分経って僕のスマホが鳴ったので僕は部屋の端に移動した。夏奈お姉ちゃんは風呂にいるので会話が聞かれることは無いだろう。


『明日、生徒会室に来て』

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