第4話

「ショッピングモールってもっと人で溢れかえってるものだと思っていたんですけど……いざ来てみれば案外人はいないですね」


「そりゃあ平日だからね、まぁ雪くんの日にち感覚は学校に通うようになったら治るでしょ。まぁほとんどの学校は下校時間すぎてるし学生は結構いるかな」


このショッピングモールは学校から近くて広いゲームセンターがあるので学生が多く訪れる。ということはクラスの人達に出会う可能性も高い、でもまぁ女子だったら普通に雑談すればいいだけだし男子だったらを除いて話しかけてくる人はいないし大丈夫だろう。


その人も別クラスだし滅多に出会うことは無いんだけど、1度話しかけられたら終わりまでが長い、長すぎる。悪い人じゃないのはわかるし、ただ私の仲良くしたいだけっていうのは伝わってくるけどグイグイ来すぎるんだよねぇ……。


「服がいっぱい置いてありますね、この中から選ぶとなればだいぶ時間がかかるんじゃないですか?」


「パーカーでいいんじゃない? デザインは見ないと分からないけどね」


「それが僕に似合うと思ってくれてるのなら僕は喜んできますよ? これから迷惑をかけると思うので、なるべく夏奈お姉ちゃん達の要望に応えさせてください」


つまり私たちはパーカーであればどんな見た目のものを着せてもいいということなのだろうか? パーカーだし思いっきり変なやつは少ないと思うけど猫耳が付いているものとかはあるので悩むふりをしておいて最終的にはそういうのを買わせたい。


「パーカーはパーカーでも色んな種類があるんですね。この中だったらどれが僕に似合うと思いますか?」


「夏奈、どうする?」


「私だって雪くんと出会ってそんなに経ってないからね? 私に聞かれても……。とりあえずこれでいいんじゃない?」


「夏奈の好みじゃん……。まぁ私も好みだけど」


私が手に取ったのは単純に私が好みの猫耳が着いているもの。可愛い系で普通なら男子が着るようなパーカーではないが雪くんなら問題なく着こなせると思う。


もちろん試着室があるので雪くんに着てもらったのだが雪くんの身長が150あるかないかぐらいなのでパーカーが大きかった。


「1番小さいサイズでも僕にとっては大きいみたいですね。2人が選んでくれたので僕はこれがいいんですけど……」


「今後も着るんだし多少大きいくらいなら問題ないんじゃない? ダボダボのパーカーも可愛いと思うよ」


未来に同意である、ただでさえ雪くんが猫耳パーカーを着ているってだけで可愛かったのに袖が長くてダボダボになってるのまで重なったら似合わないわけが無い。これを似合わないって言う人はいないと断言出来るくらいには完璧だと思った。


「そこまで褒められるのならこの白色と別の色で同じパーカーを買おうと思います。2人は好きな色とかありますか?」


「同じものを持っていてもバリエーションの問題があるしその白のパーカーは買うとして別の服を見に行こうか」


「夏奈お姉ちゃんがそういうなら僕はそうします。それじゃあ僕は買ってくるので外で待っていてください」


「1人で大丈夫?」


「バカにしないでください! 見た目はこんに小さいですが……ちゃんと大人なんですからねっ!」


初めて雪くんが怒ったところを見たけどそれでも身体が小さくて童顔なせいで怒っていても可愛いと思ってしまう。でも家から出るまでに聞いたあの声はなんだったんだろう、今回は怒ってはいるがあの時聞いた声とは全くの別物だった。


レジから戻ってきた雪くんは普段の雪くんだったがやっぱり色々心の中に抱えてるものがあるのだろう。


店を移動して別の店にやってきた。ここまで服店同士の距離が近いと客の取り合いになりそうだが客側からしたら移動が楽なのでありがたい。


「雪くんにはやっぱり可愛い系が似合うけど同じ系統の服ばっかり持っていても仕方ないからね」


「未来はそう言いながら可愛い系を着せたいと思ってるでしょ? まぁ私も同意見なんだけどね」


「ちょっと2人を驚かせてみたいので自分で選んできますね。センスはないですけど楽しみに待っておいてください」


そう言って雪くんが店の奥に入っていくが迷子にならないだろうかと少し思ってしまったのは雪くんには内緒の話。


「雪くんはどんな服を買ってくるんだろうね? 私たちの好みの服はもう買ってもらったけど雪くんって他人に流されやすそうだし似た感じの服を買ってきそう」


「正直雪くんはどんな服を着ても似合う気がするんだけど」


「余程やばい服じゃない限り大丈夫そうだよね」


しばらく経ったあと、雪くんがこのお店の袋を持って私たちの元へやってきた。


「もう暗くなってきたので先に帰りましょう。服を見せるのは帰ってからでいいですか?」


「そうだね、明日も学校だし未来は帰った方がいいんじゃない? 写真はちゃんと送るから安心していいよ」


「実際に見たいけどこればかりは仕方がないかぁ。それじゃあ雪くんも夏奈もまたね」


未来と別れて私は雪くんと一緒に家に戻った。


「よく考えたらパジャマを持っていなかったのでそっちを買いました。いつの時期でも着られるように薄いパジャマと上に着るパジャマを買ったんですけど、どうですか?」


「感想を求められても私の口からは可愛いとしか出ないよ」


私たちの好みを伝えたので上に着るパジャマは案の定猫耳付きのものだったが可愛いので問題は無い。


ちなみに写真を見た未来は翌日の学校で結構熱烈な感想を伝えてきた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る