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私は縮こまりながら、呉服副部長と伸也先輩が赤根先輩を説得するのを眺めていました。何故縮こまりながらかというと、いつ私に話が飛び火してくるかわからないからです。
こっちに振られたら、上手く誤魔化せる気がしません。
「おいおいしっかり誤魔化してくれよ」
「あっちで話が完結してくれればいいんですもん」
「他力本願だな。ほら、無理のようだぞ」
「え゛」
先輩たちの方を見ると、一人の手芸調理部の先輩がこう口にした。
「それって、日隈さんの従弟くんのことじゃないですか?」
「え、知ってるの?」
「確か、冴木って子がそう言ってました」
ちょ、冴木さぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!?
まさか! そんなところから情報が漏洩しているなんて。
「漏洩というほど重要な情報でもないだろ」
くまくんにとってはそうかもしれませんけどね、私のJKライフにとっては致命傷になりかねない情報なんですよ。
「えっ、その日隈さんってどなた?」
ほらぁ、話題振られちゃったじゃないですかぁ! ちょっと皆さん、なんとなく私に目を流すのやめてくれません?
これ、名乗り出ないといけないパターンじゃないですか。
「わ、私です……」
あああああ、気まずい! こんなに気まずいことがあっていいんでしょうか。
「まあ、頑張れ」
すごい他人事ですね!? くまくん。
「まあ他人事だからな」
いやいや、くまくんの問題ですからね!? 結構がっつりくまくんの話題ですからね!?
「でもなんとかするのはお前の役目だろう?」
他力本願! 誰ですかさっき私を他力本願とか言ったのは。
「従弟くんは今おうちに?」
「あ、いえ、先日おじさんとおばさんが迎えに来て帰りました」
どうだ、これで騙されてください。
すると、赤根先輩は肩をがっくりと落とし、そうか……と尚一層暗い雰囲気になります。え? この流れって私が悪い? 私が悪い感じですか?
「こ、こないだは開校記念日だったのでたまたま休みで……」
「小学校にも開校記念日ってあるんだね……」
「雪子さん、日隈さんが責任感じまくってるから悄気るのも程々にしなよ」
伸也先輩、なんで私が責任感じまくっていることを見抜いたんですか。エスパーですか。
「うーん、見た感じ、読心術か何かを心得ているな。意識的か無意識か知らんが」
というのがくまくんの見解ですが、え、読心術って意識的にやるもんじゃないんですか?
「無意識で読めるやつもいる。ほら、長い間一緒にいるやつの行動傾向なんかわかることがあるやついるだろ? ああいうのは無意識だ」
なるほど……と思いましたが、私と伸也先輩はさっき会ったばっかりですよ!?
「わかりやすいからな、お前」
褒められてるのか貶されてるのかわかりませんね。
「たぶん貶してる」
わざわざ言わなくていいですよ!
「いいや、私は落ち込んでなどいないよ、伸也」
「え?」
予想外だったのでしょう。伸也先輩が目を丸くします。他の皆さんもそうです。
「私はいいことを知った。小学校にも開校記念日があると」
「それがいいこと?」
「私服のショタが街を歩いてるのを見られるんだぞ!?」
わー、ショタコン炸裂……伸也先輩が引いた目で赤根先輩を見ます。
「いや、小学生は普通は私服だし……」
いや、そこ? そこですか? 確かにそうだけれども。
「馬鹿、私立は制服だ。セーラーにショーパン」
「今時あるか、そんな学校」
そういえば、セーラー服というのは元々海軍の制服で、セーラーのひだの部分は海上で聞き取りにくい音を聞き取りやすくするための工夫なんだとか。
「いやいや、冷静に解説してないで。宥めるの手伝ってやれよ」
いやぁ、ここまで来ると一体何をどう宥めたらいいのかわからないんです。
馬鹿につける薬はないと言いますが、ショタコンにつける薬もなさそうですね。
「いや、ショータくん馬鹿ってことだろ?」
先輩に馬鹿とか失礼ですよ。
「俺に突っ込んでどうすんだ。あの先輩に突っ込んでやれよ」
ごもっとも。
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