第177話 気になるあの子。

「ちょっと森に行ってきていい?」

「もちろん。暗くなる前には帰っておいでね、日が落ちるの早いから。気を付けて。」


「ありがと、行ってきます!」


フランクさんとお昼ご飯を食べてリビングでまったりしてたんだけど、どうしても昨日の子が気になるから森に行きたい。


午前中はたくさんお料理したんだ。クッキーもスコーンも非常食としてカバンに入れた。もしもの時に役立つしね。これ意外とだいじ。


〈ごめんディア、また昨日の場所の近くに連れてってくれる?〉

〈もちろん。準備してこい〉


〈ありがと!〉


今日はずっとお家にいる予定だったから、服も緩いワンピース。なのでお外に出る用の冒険者服に着替える。ちゃんとマフラーもします。


「行ってきます!」

「行ってらっしゃーい」


庭でお洗濯をたたんでるフランクさんに声をかけて出発。


〈また気温下がったよね。〉

〈そうみたいだな。私にはあまり影響がないから微々たる差だが。〉


歩きながらちょこっと首をかしげる柴犬サイズのディアさん。可愛いんだから。


普段あんまり見ない門番さんに挨拶をして門を出ると、ディアの案内で昨日いた方に歩く。


〈あれっこっちだったっけ?〉

〈こっちだな。リンは道を覚える努力をしろ。帰り道すら覚えてないのか。〉

〈うっ。がんばる。〉


ディアが進む方向が思ってたより90度くらいズレてた。驚くほど道を覚えられないんだよね…ディアがいる安心感もあるけど、元々苦手。


しかも森だよ?方角なんて分かんなくなるじゃんね。言い訳だけども。


〈もう少しで昨日座ってた木が見える〉

〈全部同じに見えるんですけど。〉

〈少しずつ違う。〉


いや。同じだって。思いっきり曲がってるとかなら分かるけど真っ直ぐなんだもん。見分けるとかむりむり。


〈着いたぞ〉

〈ありがとー!座ってよ。帰るまでに来なければそれはそれで。〉


ってことで、また布をしいて座り込む。寒いのでディアに寄っかかりながら、温かい紅茶を飲んであったまる。


さすがにジッとしてると寒いのでその辺を歩いてキレイな落ち葉を拾って、ついでに草で紐を編む。草紐はお金かからないし色々使えるしわりと便利なのよ。


使える草を探して編んでを繰り返してたら、手を切ってしまった。乾燥して切れやすくなってたのかな。


悩んだけどポーション使いました。なんかバレたら保護者のみんなに怒られそうなので。


ディアにはちゃんと怒られたけどね!


鼻で横っ腹をツンツンされながらポーションをかけ、傷が治ったかちゃんと確認してもらい。


はたから見たらただのイチャイチャを繰り広げながらまた草を編みます。地味に楽しいんだよこれ。



〈昨日のが来たぞ〉

〈えっ〉


いちゃこらもふもふしてたらディアが耳を動かしはじめ、森の奥に視線を向けた。


その視線の先には昨日会った白い子?ともう1匹、茶色い毛色の子がいました。


〈増えた…〉

〈あれがジェムフェネクだ。2匹もこの辺にいるなんて変だな〉


やっぱり何か変らしい。そんなことはさておき。ちっちゃくて可愛いなぁ。


〈どうしようか。〉

〈何も考えてなかったのか…〉

〈うん。勢いで来たからね。〉


はい、気になった勢いのまま来ましたよ。会えたはいいけど、どうしましょ?


と思って見てたら、何やら2匹で会話をし始めたっぽい。茶色い子が首をかしげたりして、白い子が必死に喋ってる感じ。


〈おっ近づいてきた。またクッキーいるかな〉


近くに落ちてる大きめの葉っぱにクッキーを乗せて、ちょっと距離をとる。


〈あの茶色い子も小さいね〉

〈同じくらいなんだろ。額の粒も小さい〉

〈比べると色ちがうねー、白い子はやっぱりキレイな色してる。〉


ディアとおしゃべりしてたら、白い子がクッキーをくわえた。どこかに持ち帰ることなく、その場でカリカリと食べてます。可愛い。


そんな白い子の様子を見てた茶色の子も、クッキーが安全と判断したのかそーっと近づいて匂いをかいでる。


魔物が食べれないようなのは入ってないと思うんだけど。知能高めなのかな、この子たち。


あまりジッと見るのもどうかと思い、その辺の草を拾ってまた紐を編む。


〈食べたな〉

〈お、茶色の子も食べた!やかったよかった。さすがにあれだけじゃお腹いっぱいにはならないかな〉


追加で出そうか悩んでたら、急にピューッと走って逃げてしまった。どしたんだろ?


〈小僧らが近づいてきてる〉


ちょっとしょぼんとしてたら、ディアが別の方を見ながら鼻をひくひくさせ始めた。


〈小僧って、ガイトさんたち?〉

〈あぁ、もうすぐ近くにいる。あいつらの気配で逃げたんだろ〉


気配なんて全く分からないのはわたしだけですか?


ディアが見てた方を見てたら、木の奥からカルダさんが現れた。


「えっやっぱいたし。リーダー!いた!」

「ん?ディアだけか?」

「わたしもいるよー」


その後ろからきたガイトさんとレイさんに手を振ると、思いっきり不思議そうな顔をされた。


気になって午後からここにいることを説明すると、さすがに寒いから帰ろうと言われた。もうちょっと暗くなり始めてたの。気付かなかった。


「会いに来たのか?」

「うん、今日は茶色の子が1匹追加できたよ」


「ジェムも来たか…」


森の変化があるらしい。けどまだ原因もなにも分かってないみたいで、やっぱりしばらく森に入るんだって。


「可愛かったよ」

「リンは毛があるのが好きなのか?ウルフ系にも興味津々だったよな?」


「うん、もふもふはすきだよ?」

「もふもふ…」


「うん、もふもふ。ディアはもふもふだけどサラサラだし最高だよ。」


レイさんの口からもふもふの言葉が出るとちょっと可愛い。


今日はギルドには行かず、みんなでお家に戻ったらゆっくりシャワー浴びて夜ご飯。


寒かったからってお風呂にお湯も入れておいてくれたんだよ、フランクさんほんとに優しいよね。しっかり温まった。




「連れてきちゃったーとかないよね?リンちゃんならやりそうなんだけど?」

「やりそうって何ですかー」


森でのことをフランクさんにも報告したら、なんか呆れた顔で見つめられた。わたしまだやらかしたことないと思うけど。


いや、あったわ。不思議ポーション作ったし。


でも、もふもふに関してはないよ!


みんなもフランクさんと同じ事考えたのか、しばらく考えて、まぁリンだからねぇと落ち着いた。わたしだからなんですか。


〈戦える種ではないからな。連れ帰ったとしても一緒に行動するのは難しいだろ。〉

〈ディアまで。あの子たちは集団で暮らすんでしょ?それに臆病なら街に来ないよ。〉


〈まぁなるようになるだろ〉


そうだけども。


〈魔物が増えたらイヤ?〉

〈全く。魔物は愛玩用として売れると聞いたことがある。それに妖精の方がよっぽどやかましい。〉


おっと。お花の妖精さんたちってお喋り好きだもんなぁ。ディアとは合わないよね。


まぁもし今後魔物飼うことがあっても、絶対ディアの許可はとるよ。だって契約獣だもん。合わないとかケンカしまくるとか嫌だし。



「変なの捕まえてきてもディアがなんとかするだろ。」

「ディアがいるもんねー」


ディアとお話してたら何かガイトさんが丸投げ発言した。カルダさんも爆笑しながらのってるけど、わたしは何だと思われてるんだろうか。


軽くぶーたれながら食べるシチューは心も体も暖めてくれました。



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2024年12月1日 20:00 毎週 日曜日 20:00

転生少女は今日も元気に活動中 黒野うさ @daifuku_yukimi

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