第176話 何気ない日常?
〈帰ろっか〉
〈満足したか?〉
〈した。いい空気吸ってスッキリした気分。〉
〈それならよかった。街が嫌になったらいつでも何処へでも連れて行けるからな。〉
〈ありがとう。〉
お昼を食べ終え、木の根本に布を敷いて温かい紅茶を飲んでました。ディアをもふもふしながらね。
ディアに乗ればどこにでも行けそうだよね。そうなる前にみんなに相談するけど。最終的にほんとにどうしようも無くなったらディアに頼るよ。
最高で最強の相棒です。大好き。
そろそろ戻ろうかと後片付けをして、忘れ物がないか周りを見てたそんな時、可愛い小さな何かがこっちを見ていました。
〈ディア、ちっちゃい可愛いのがいる〉
〈ん? ジェムフェネク…じゃないな、グルナフェネクか。森の奥から出ない種のはずだが、なぜこんな所にいる?〉
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名前 グルナフェネク
特徴 ジェムフェネクの変異種で希少種。
備考 群れに属さないこともある。(白変種・アルビノに近いね)
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見た目はフェネックギツネかな、たぶん。お耳が大きくて目がくりくり。だけど額に赤い粒が付いてるから、やっぱり魔物だね。地球とは違う。
〈どうしたんだろう?〉
〈衰弱してるな。〉
〈えっそれ先に言って!てか鑑定したら良かったのか、気付かなくてごめんね。〉
とりあえず落ちてる葉っぱにナッツ入りクッキーを置いて、長細い葉っぱで笹船を作ったらそこに初級ポーションを少しだけ入れる。
ちょっと離れて様子を見守ります。
クッキーとわたしを交互に見て、悩んでる様子のフェネクさん。
〈ディアちっちゃくなってみて。あの子には怖いかもしれない〉
〈わかったが、警戒してるのはリンだぞ?〉
〈わお、まじか。〉
警戒しながらもここまで来たのはディアがいたからか、それともお腹がすきすぎて出てきちゃったのか。
分かんないけどとりあえず、わたしも同じクッキーを出してかじる。食べても大丈夫だよーと伝えるために。
しばらく悩んだ後、そーっと近づいてクッキーだけ咥え、ダッシュで草むらの奥に戻っていった。
〈あれだけじゃ足りなそうだけど、しょーがないね。〉
〈奴らの額の宝石は高く売れるぞ?〉
〈お金はいらないし、あんなにキレイならあの子に付いてるべきだよ、あの石は。〉
てかあれ宝石なんだ。よく知ってるな、ディアさんは。
あの宝石を狙われるんだと思うと切ない。とってもキレイな粒だったし。わたしは宝石にもお金にも興味ないし、出来たら触りたかったなーとは思ったけどそこまでです。
ちょっとしたトラブル?があったけど無事に街に戻ってきました。
そのままギルドに行って、サリアさんとロレンさんにお久しぶりの挨拶と薬草の納品。あとは部屋で少し鑑定のお仕事します。
久しぶりだけどいつも通りにディアに寄りかかり、床で仕分け作業。これも集中すると時間が溶けるんだよねー。
〈ジェムフェネクってあの子と似てるの?〉
〈色が違うだけでそっくりだな。体毛は茶が多くて額の宝石も茶に近い。赤いのはグルナの特徴だ。〉
〈あの子は大人?〉
〈若い個体だが成体ではある。幼体は額の粒が小さすぎて毛に埋もれて見えない。〉
〈森の奥にいるんだよね?冬はどうするの?〉
〈土の中に巣を作って生活する。集団で行動するから今の時期は食い物を蓄えてるはずだ。〉
〈あの子はどしたんだろうね。〉
〈さあな。さすがに会話はできん。〉
そりゃ話せないんだけどさ。無事ならいいな。
そんなこんなでボーっと作業してたらナリアルさんがお迎えに来てくれました。
森から戻って来る時にお店を通ったんだけど、忙しそうだったし声かけなかったんだよね。従業員さんが見かけて教えてくれたらしい。
受付に座ってるロレンさんにバイバイしてギルドを出た。
「楽しめましたか?」
「うん、いっぱいきのことか採ったしのんびりできた。」
それとグルナフェネクに出会ったことを報告。ナリアルさんも存在は知ってるけど、実際に見たことはないらしい。本当に臆病でジェムフェネクですら自然に見かけることもないんだって。
「森に変化が起きたのかもしれません。メンバーに話して少し調べてもらいましょう。」
「何もないといいね。」
ってことでお家に到着。ナリアルさんはまた書類仕事があるらしく自室に行きました。
「ただいまー!きのこいっぱい採ってきたよ」
「おかえり、助かるー。夕飯に焼いて出そう」
フランクさんにただいまをして、一緒に唐揚げの準備をします。昨日がんばってくれたディアへのお礼にいっぱい仕込むよ。
「せっかくだし何種類か味と肉変えようか?」
「楽しそう。ならタレも何個か作るね。唐揚げパーティーだ!」
フランクさんが楽しみはじめたので、わたしもテンションあがりました。唐揚げパーティーなんて楽しそうすぎる。
「唐揚げパーティーはいいね、ならここ最近忙しかったから打ち上げってことでいい肉使お」
「おお!さすがにスープはさっぱりがいいね」
「いいねいいね、きのことミソで作れる?」
「作れる!絶対美味しい!」
メニューは決まったので早速準備開始。
お肉を切ってタレに漬けて、その間にサラダやスープを煮込む。きのこは塩水につけて虫抜きしました。しなくていいかもしれないけど、ちょっと気になるので。
付けて食べるようにマヨ、チーズソース、レモンねぎとヨーグルトソースを作った。こってり2種とさっぱり2種でいい感じ。
漬け込みはショユベースと、塩コショウのやつ、あとは衣にハーブを刻み入れる3種類になりました。
お肉は4種類。謎にオーク肉も登場です。唐揚げがトリだけとは言ってないもんね!美味しいと思うよ!
そしてとんでもなく豪華になりました。
大量に揚げたよ。大皿に種類別にドーンと盛ったんだけど、さすがに面白い量になった。給食の仕込みってこんな感じなのかね。
「いい匂いすんな?」
「「腹減った!」」
「シャワー行くぞ」
「「おかえりーー」」
ガイトさんを先頭にみんなが帰ってきました。もうそんな時間だったんだ。
お腹すいたとテンション爆上げの双子を引っ張っていくレイさんは、本物のお兄さんです。
匂いに釣られたナリアルさんも登場して夜ご飯開始!
〈どう?〉
〈色々あって美味い。〉
〈それはよかった!〉
ディアさんにも満足していただけた様です。
よかった。
言わずもがなで、みんなの食べるスピードがすごいのなんの。
さすがに全部は無くならないだろうけど、ちょっと心配だったのでそれぞれ2個ずつお皿に確保しました。
「疲れた体にしみる…」
「ジジイか」
「明日も少し頑張ってもらいたいので、英気を養ってください。」
「えっ。何かあった?」
カルダさんとおじいちゃん発言にみんながツッコむけど、軽くグルナフェネクの話をすると何処を調べようかと話し始めた。
「場所は覚えてるか?」
「えっと。ディアわかる?」
〈大体は。〉
「ディアが分かるから後で聞いて。」
「ディアがいるからっていた場所くらいは覚えとけ」
「ごめんなさーい。ずっと下見て歩いてたし、きのこ見つけてあちこち曲がったから分かんなくなっちゃって。」
ガイトさんに軽く怒られました。森から出るのもディアの案内で街道まで戻ったからね。本気で分からん。
「数日は森の奥に入るから帰るの遅くなるかもしれん」
「そしたら余った唐揚げをお弁当に持ってって」
「「「余らないと思う」」」
「うん。そだね。また作る。」
双子とレイさんまでそろって。気に入ってもらえたなら良かったけど。
夕食後、次の日のお弁当用に唐揚げを追加で作る2人でした。
わたしも英気を養ったしまた明日もがんばろう!
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