第175話 八つ当たり禁止
さむっ。
朝起きて早々ディアに抱きついたリンです。
おはようございます。
〈ディアもふもふ感増したよね。魔獣も換毛期あるんだ?〉
〈毛が増えないのなんて人族くらいだろ。獣人族だって多少は増える〉
わお、まじか。グルガルさんもリューリーさんもかな。次会う時聞いてみよ。
ぼーっとしながら1階に降りると、すでにフランクさんがご飯の準備をしてくれていた。
「おはようございます」
「おはよう。眠そうだね?」
「んー、なんか眠い。」
「ソファでゆっくりしてていいよ、朝食はもうできるから。」
「ありがとーー。そうだ、今日の夜ご飯に唐揚げ作りたいんだけど、大丈夫?」
「そう言えば最近唐揚げ食べてなかったね。準備しとくよ」
「ありがとう。夜はわたしも作る。」
お言葉に甘えてリビングに行きます。ソファじゃなくて、ラグに座ってディアのお腹もふもふ。表面はひんやりしてるけど、ぴったりくっつくと温かい。
「おはようございます。昨日はありがとうございました、あの冒険者達のことも分かったので食べながらお話しますね。」
ディアとイチャイチャしてたらナリアルさんが2階から降りてきた。
「おはようございます。わかってよかったー」
みんな地下で運動してるみたいだけど、ナリアルさんは書類のまとめでもしてたのかな。手には紙の束がいっぱい。
またぼーっとしてたらみんな集まったので、朝ご飯スタート。
「昨日の冒険者たちは、八つ当たりであの騒ぎを起こしただけでした。」
「八つ当たりって。迷惑すぎる。」
変な人に雇われてるとかじゃなくて良かったけど、普通に大迷惑。
「詳細は?」
「3人グループで全員ランクD、よその村から出てきた者たちです。」
「あぁ、思うようにランク上がらず荒れてた感じか」
「そうですね。強くないので討伐依頼の達成が難しく、冒険者業だけでは生活費が稼げなかったそうです。この街の店で働こうとしたそうですが、元々の態度が悪すぎて門前払い。新しく出来たポーション屋ならと住民に話を聞いたら、従業員は孤児や獣人が多いと知り、何故自分よりいい生活してるんだと八つ当たり同然で騒いだそうです。」
「薬草採取でも頑張れば稼げるのに。」
「そうですね。頭の弱い冒険者は薬草採取などの仕事は受けたがらないんですよね。それに彼らの場合は、そもそも薬草を見分けられないと思います。知識不足すぎて。」
それで稼ぎがないと騒ぐのはどうなのだろう。本気で頑張ってもいない人にお金がいくわけないでしょーが。
てか、自分がうまくいってないからって暴れるなよ!しかも孤児とか獣人が働いてるからって理由なのが何より納得できない。嫌いだ。
「リンも冒険者なら覚えておけ。小さな村や町出身の冒険者の中には、勘違い野郎がたまにいる。自分は強いと思い込んでるバカが一定数いるんだ。」
「わかった。態度でかくて弱そうな人には近づかないようにする。」
「そうしろ。まぁディアが一緒にいりゃあ、それだけで
「うん。」
街の中にいる時はディアは小さい。けど実際はものすごく強いし、種族を知ってて手を出すのは本気のバカしかいない。
なのでわたしは実質最強なのです。
「今日は店に行かなくても良いですが、どうします?」
「んー、久しぶりに森に行きたい。あとギルドのお仕事しようかなって。」
「それなら俺らと行くか?少し奥まで行くから途中までだが。」
「うん、そーする。森でのんびりしたら午後は軽くギルドのお仕事してくる。」
「家で休んでいてもいいんですよ?最近ずっと動いてましたから。」
確かに眠いしここ最近ずっとドタバタしてたし疲れてはいる。けど家にいるより外でゆっくりしたい気分なんだよね。特に依頼も受けずにきのこや山菜とったりしたい。
「今日は森に行く。なんか外にいたい気分なの。」
「無理しないでくださいね。」
「ありがと!ご飯の準備までには戻って来るね。」
「気にしなくていいのに。けど一緒に料理したいし待ってるね。」
一緒に料理したいって。フランクさんがイケメンでした。元々カッコいいんだけど。
ナリアルさんは今日もお店を見に行くそうで、森は他の4人と行く。ダンジョンじゃない森は久しぶりだ。楽しみ。
軽くお弁当を作ったもらって、出発!
〈暴れたい?〉
〈私を何だと思っている?〉
〈なんかほら。有り余る力を開放したいとかあるのかなって。〉
〈動けばスッキリはするが、暴走衝動はない〉
〈そっか。〉
今度1日かけてちょっと奥まで行こうかな。ディアにお肉獲ってきてもらうのもありだし。みんなのお仕事が落ち着いたら相談してみよ。
「おっ久しぶりに森か?寒いから早めに帰ってくるんだぞ、風邪ひいちまうからな。」
「おはようございます!今日はお昼すぎに戻って来る予定です。」
「そっか。気を付けて行ってらっしゃい」
「行ってきます!」
門に着くと門番さんが声をかけてくれた。彼はビグナーさんで、見かけたら必ず声をかけてくれる優しいお兄さんです。
見た目はいかついんだけどね。
手を振って門を出ると森の様子が変わっていた。葉っぱは落ちて木が寒そうだし、その分落ち葉がいっぱい。持って帰って畑に混ぜてもいいかもしれない。
薬草あれば採ろうと思ってたけど、見つけにくそう。畑にあるし無理に探さなくていいかな。
「俺らはこっちだ。あんま奥まで入るなよ」
「気をつける。どっかの木の下でシート敷いてまったりするよ。」
「ディアがいるから大丈夫だと思うが、気を抜きすぎるなよ。」
「うん、大丈夫。行ってらっしゃい」
バイバイ、と手を振るとレイさんと双子に頭をぽふぽふされました。大人しくしてるから大丈夫だよ。
みんなと別れて森を歩く。それにしても落ち葉がすごい。
〈歩き
〈ふかふかしすぎてて、足がとられる〉
〈乗るか?〉
〈んーん、まだ大丈夫。疲れたらお願い。〉
ディアさん紳士です。
〈あっきのこ。これ食べられるって〉
〈探すか〉
〈そだね、お願い〉
見つけたのはマルマというきのこ。聞いたことないから、この世界特有のやつかな?傘が丸くて可愛い。
〈これも採るか?〉
〈んー?あっチコリだ。普通に生えてるもんなの?これもあったら教えてー〉
〈わかった〉
のんびりせずにきのこ狩りと山菜採りが始まりました。これも楽しいからありだよね。
疲れたら切り株に座ってちょっと休憩して、食べれそうなのを見つけたら採る。
薬草もあったからそれも採ったよ。秋でも枯れないんだね。冬に入ったらどうなるか気になる。
〈こんな日もありだね〉
〈リンが楽しければ何でもいい〉
〈カッコいいなぁディアさんは!〉
大っきなディアに勢いよく抱きついても、安定感抜群なんだよね。
わたしの周りイケメン紳士多すぎやしないだろうか。
こっちの世界で大人になったら、ちゃんと恋とかするのかな。全く考えられないけど。
みんなと比べちゃいそうだよ…。
まっ、ディアさんがいいって言う人じゃないとお付き合いもできなさそうだし。まだまだ子どもだからねっ。
うん。思考迷子終わり。
お昼食べたらゆっくり帰ろう。
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