第174話 お約束ですか?
だんだんみんなが接客にも慣れてきた午後3時くらい。さすがに疲れたので、1階の休憩スペースでお菓子を食べてます。
「¥€%゜…だろっ!」
「うるせぇ
「#%¥€$!!」
「うるせぇなぁ」
男の人の怒鳴り声にびっくりした。対応してるのはグルガルさんなんだけど、怒鳴ってる人の言葉が聞か取れない。
〈外の人、なんて言ってるか分かる?〉
〈孤児と獣人を雇う店なんか使う価値ない、ここで買う客もみんなバカかと叫んでる〉
近くにいるディアに聞くと答えてくれたんだけどね。
これはムカつくね。
色々ムカついたよね。
私はお子さまだからさ。沸点低いんだよ?
〈ディアさん、ちょっと裏から出て屋根から
〈出来るな〉
〈じゃあよろしく。殺気飛ばすのは叫んでる人と仲間と思われる人にだけでお願い。〉
〈近い内に唐揚げを作ってくれ〉
〈お安い御用!明日のご飯は唐揚げにする。ありがとうね。〉
てことで小さいままのディアさんを裏から出して、カウンターにいたクーディルさんに説明。
従業員さんには何食わぬ顔で接客してもらい、買っても帰れない状況なのでお店の中にいるお客さんには初級ポーションを試飲してもらうことにした。
完全に私の独断なので怒られたら素直に謝るよ。たぶん許してくれるだろうし。みんな甘いからね。
試飲というシステムが無いらしく驚いてた従業員さんを放置して、初級ポーションをキュポキュポ開ける。それを半分だけカップに入れて、お客さんに配ってもらう。
運悪くナリアルさんは商業ギルドに行ってるんだよね。近いし騒ぎが続けば気付くかもしれないけど、そしたらそしたでお任せするよ。
「゜#%*>!獣には #@¥…!」
〈ディアさんなんて言ってる?〉
〈獣に獣とはお似合いだと。私の契約者はリンなんだが、知らんのだろう。
んー。グルガルさんもディアも獣の文字はつくよ。獣人だし魔獣だしね。でもそれって違うよね。差別的な意味で言ってるよね。
どんな人なのか気になって2階から見てみた。
格好は冒険者なんだけど小物感がすごい。叫んではいるけどディアたちに近づいてないし、身振り手振りが大きいけど怖さは感じない。
…窓から顔出して覗いてたら、通りの向こうにいるガイトさんと目が合いました。おかえりなさい。
みんな帰ってきたなら片付くだろうし、知らせようと思って下に降りるとナリアルさんがいた。
「おかえりなさい。ガイトさんたちが見えたよ。もうちょっとで着きそうだった」
「それはよかったです。騒がれても
そんな話をしてるとおぉーーー!と歓声のような声が聞こえた。
〈何があったの?〉
〈ちょっと黙らせようと思ったら、何故かこうなった。もういいだろ、煩い。戻る。〉
いわく、煩すぎてキレたディアさんが氷の塊をぶつけて黙らせようとしたと。頭に。物理的に。ドスンと。
で、それはさすがにやり過ぎだとグルガルさんに言われたので仕方なく飛ばした氷を
ディア的にはただ細かい氷の粒に砕いただけらしいけど、見てる人からしたらキレイな魔法に見えたんだろうって話だった。
〈なにそれ見たかった〉
〈後でいくらでも見せてやるから
言質とったー。裏口から戻ってきたディアをもふもふとする。ありがとう。
しばらくするとガイトさんたちが現れ、3人の冒険者の腕を掴んでどこかに引きずって行きました。
「すまん、騒ぎになった」
「ケガはない?」
「ないない。叫んでただけだし力量の差も測れない小物だったよ。ただ…」
「お任せください。調べます」
だよなーと苦笑いで答えるグルガルさん。誰かの差し金ってやつかね。そこはナリアルさんとお父さまたちにお任せです。
騒ぎも収まったのでお客さんも帰っていく。カップを集めるペレスさんとルクラさんにナリアルさんが事情を聞き、わたしも試飲をしてもらったと説明。
おじいちゃんおばあちゃんが、飲みやすくて赤ちゃんにもお年寄りにもありがたいって感想をくれました。
「よっ!大変だったな」
「おかえりなさい。ありがとー」
「久しぶりに疲れたよ。お菓子ある?」
「裏に置いてあるよ」
「もらう。」
「僕ももらうね」
カルダさんアルダさんはお腹ぺこぺこみたい。
「とりあえずギルマスに引き渡してきた。」
「ありがとうございます。一度報告を入れてきます。リンさんは皆と帰って下さいね」
「わかった。行ってらっしゃい」
ナリアルさんは実家に報告、ガイトさんレイさんは2階でのんびり、双子は1階でおやつを食べながらたまにお手伝いをすると決めたらしい。
ディアも1階でつぶれてます。わたしは楽しいので接客を続けるよ。
「ありがとうございました。」
「わたしはなんにもしてないですよ。ディアが優秀なだけです。」
クーディルさんにコソッとお礼を言われたので、わたしもコソッととぼける。ディアはナリアルさんたちの契約獣だからね。
「在庫取ってきます」
「本日はもう出てる限りで。
「分かりました。伝えてきます。」
「お願いしますね」
いつも無口だけど接客の時ちょっと表情が柔らかくなるピートさん。子どもとお年寄りにだけだけど。それでも優しいのが伝わってくるんだよね。
「ピートさんもだけど、みんなすごいね。」
「元々優秀な者たちですからね。」
会計も接客もポーションの説明も、全員が全部こなせる。1人が抜けても別の人がフォローに入れるし、ここお願いの言葉も最低限で伝わる謎の以心伝心。カッコいい。
「あのー」
「はい、どうしました?」
「ポーション味見してみてもいいですかー?」
ルクラさんが小さく挙手して近づいてきた。接客してた従業員は何言ってんだ!?って顔になったけど一瞬で営業スマイル。プロでした。
「どうします?」
「いいと思いますよ?従業員さんは知ってた方がいいと思うし。ちょっとは疲れもとれるだろうし。何味がいいですか?」
「オレンジのさっぱりしたのがいいですねー」
「裏に準備しておくので交代で飲んでください。行ってきます」
じゃあレモンかなーと考えながら裏に向かう。
「私がやりますよ!」
「裏に2人いるし手伝ってもらうので大丈夫ですよ。」
クーディルさんも忙しかっただろうし、一緒に飲んでもらおうと思います。
裏にいた2人にポーションとカップを取ってきてもらって、半量入れたら味を書いておく。一応アポも2つ出したので飲み比べも可能です。
その後はすれ違ったジェスタさんに頭をぽふっとされ、ペレスさんには頭を下げられた。わたしはただの子どもですよー。
もう残り少ないしお店の閉店作業はお任せして先にお家に帰ります。
「お疲れさまでした!」
「「お疲れ様でした。」」
挨拶して裏口からみんなでお店を出ると、外はもう暗くなり始めていた。
「さむっ。」
「もう気温低いな。」
「リンちゃんおいで。」
風が冷たくてブルっとしたらアルダさんに抱き上げられました。歩くの遅いしちょっと疲れてたから助かる。
「早く帰って暖まろう。」
「うん。もうすぐ雪ふるかな」
「降るかもしれないね。ちゃんとした雪用のブーツも買おうね。」
「そーする。」
もうすぐ9の月。10の月くらいからは普通に雪が降るらしいので防寒対策しとかないと動けなくなりそう。
いろいろやらなきゃいけないんだけど、なんか気付いたらひと月終わってる。
時間が経つのが早いのはいい事だよね。
ねむいぃ。
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