第171話 顔合わせと
あれからまた数日経ちました。その間に全員1回ずつお手伝いをしてもらったよ。さすがに1日は厳しいから午前と午後でわけて。
パン生地こねてもらったり、パイ生地伸ばしてもらったり、ひき肉作ってもらったり、お肉を薄くスライスしてもらったり。とっても助かりました。
今日はまたお店に行って、従業員さんとの顔合わせになるんだって。
「リンちゃん着替えてこようか。」
「え。これだめ?」
「十分可愛いんだけど、今日はちょっとおしゃれしよ。」
「わかったー。」
いつもの走り回れるワンピース着てたんだけどカルダさんがだめって。だから王都で買ったちょっといいやつにした。
玄関に全員集合したら出発です。今日はフランクさんも一緒。
そしてわたしは出発と同時にナリアルさんの腕の中。なぜだ。
「たまにはレイじゃなく私にも抱っこされてください。」
ってことらしいです。いいんだけど。
ディアはいつものように、ちっちゃくなってナリアルさんの足元を歩いてる。
お店に着くと、そのまま2階に上がって会議室に入る。フランクさんはキッチンでお茶とお菓子の準備中。買ってきたカップが大活躍。
「失礼するよ。」
入ってきたのは、前ガイトさんと一緒にいたおばあちゃん。目が合うとにっこりされたので頭を下げておく。
「その子があんた達の思い人かい?」
「変な言い方はやめてください。妹のリンさんです。リンさん、こちら商業ギルドのギルマスです。」
「はじめまして。私はピリエナだよ、よろしくね。」
「アーベンティス家の養女で冒険者のリンです。この子はディアです。よろしくお願いします。」
「しっかりした子だねぇ。」
変わらずニコニコのままのピリエナさん。雰囲気はバリバリお仕事出来るって感じだけど、嫌な感じはしない。
「じゃあ従業員たちを呼ぶよ。リンはそこに座ってな、後ろの魔獣も目を光らせておいてね。いい抑止力になるよ。」
今度はニヤリと笑った。ピリエナさんの言葉にディアが動き、大きな姿で私の横に座る。この状態だと頭撫でやすくていいね。もふもふ。
満足そうに頷いたピリエナさんが、5人を連れて戻ってきた。2人は見覚えがあるけど、他の3人ははじめまして。2人も私が勝手に見ただけではじめましてなんだけど。
同じ制服を着た4人はディアを見て目を見開き、私をみて不思議そうな顔になった。変化がおもしろい。
「ほれ、自己紹介を。」
「はい。ペレス・アドレーと申します。どうぞよろしくお願いいたします。」
「ジェスタ・アドレーです。よろしくお願いいたします。」
最初は前にもいた真面目そうな女性。話し方も姿勢もしっかりしてて頼れるお姉さんって雰囲気の人。
その次も前にいたお兄さん。面倒見よさそうな優しい雰囲気のお兄さん。あめちゃん持ち歩いてそう。完全なる偏見だけど。
「ルクラです!よろしくお願いしますー」
「ピート・トルマです。」
ルクラさんは元気いっぱい末っ子キャラ風。手を挙げて挨拶してるしゆるゆる系かな。
ピートさんは名字が違う。そしてとんでもなく無口タイプかもしれない。レイさんと雰囲気が似てる。
そう思ってレイさんを見たら頷かれた。そしてそれを見たアルダさんが吹き出した。みんな思うことは一緒だったらしい。
「名札ほしい…」
「なーにそれ?」
「名前書いてあるちっちゃいプレート?冒険者ギルドのお姉さんが着けてるやつ。」
「あぁ、ネームタグ。名前覚えきれない?」
「うっ。そうなんだけど。でも名前覚えられて犯罪に巻き込まれるとか危険が増えるとかならいらない。」
「そこは後で要検討だけど、あってもいいかもね。」
カルダさんとこそこそ話してたらナリアルさんに頭をぽんとされた。ごめんなさい。聞いてます。
「彼は元アーベンティス家の使用人で、今後店の売上や従業員のサポート、管理を担う責任者ポジションに就きます。」
「クーディル・ハープと申します。ナリアル様からご紹介いただきましたが、店舗の管理から金銭、商品管理、その他事務系を担当いたします。どうぞよろしくお願いいたします。」
1人スーツの男性はお屋敷から来た責任者さんだった。私がポーションを作ってることも、ポーション運搬についても知ってる人。箱を開けて管理する役目の人。お世話になります。
「従業員は全員労働者として、魔法契約をすることになる。契約主はリリアナ様で、レベルは1だね。この後書類を作るよ。」
「質問がある者は今ここで聞いてください。後から聞いていなかった、納得していなかったは許されません。」
魔法契約は後で詳しく聞くとして。ナリアルさんがちょっと怖いです。
「質問いいですかー?」
「どうぞ」
「ここに小さなお嬢さんがいるのは何故なのでしょうかー?」
「彼女はアーベンティス家の養女で私の妹のリン。我々と共に暮らしており、彼女自身が冒険者として活動しております。これから会う機会が増えると思いますので、覚えておいてください。」
「わかりましたー。」
「よろしくお願いします。」
ぺこっとしておく。なんか挨拶はしなくていい雰囲気なので黙っておく。
「よろしいでしょうか。」
「はい、どうぞ」
「従魔…かと思いますが、その子も今後ここに来る可能性があるということでしょうか。」
お、ペレスさんの言葉でディアさんに注目が集まった。可愛くてもふもふですよ。いい子ですよ。普段は小さいですよ。
「ディアは我々と契約していますが、基本的にリンさんと行動するよう伝えています。なので答えとしてはYES、リンさんが来るのなら一緒にディアも来ます。」
あ、そうだった。ディアってガイトさんたちと契約してるって話なんだった。ナリアルさんが言うまで忘れてた。
そしてちょっと不機嫌なディアさん。注目が集まってる事にじゃなく、契約者についてかな。ここだけだし我慢してください。
「街で見かけた時はもう少し小さいと思ったのですが、その子とは別個体でしょうか?」
「いえ、同一個体です。いいですか?」
ディアは頷くと後ろに下がり、小さい姿になってからまた大きくなる。これで大きさを変えられることは伝わるね。
「大きさが変わるのですね…、承知しました。ありがとうございます。」
「ディアが形態変化をすることはあまり知られていないので、その辺でペラペラと話さないようにお願いします。頭が良いので迷惑をかけることはありません。」
みんなペラペラ喋るタイプじゃないと思うよーナリアルこわいよー。
あとは少し確認をして、終わり。
「次は運搬担当だね。あんた達は下で待ってな、契約の事もあるからね。」
クーディルさん以外の4人とピリエナさんが部屋を出て行った。お茶を飲んでほっと一息。緊張した。
「ほれ、入んな」
扉が開くと入ってきたのは大っきな獣人さんと
リューリーさん……?
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