第170話 反省とその後
怒りと悲しみとがぐちゃぐちゃになって謎のお説教をしちゃったんたけど。みんなそれぞれ分かってくれたみたいでよかった。
「アドレー男爵さんから紹介してもらうのって出来るの?」
「可能です。午後にでも母に伝えてきます。」
「なんでお母さま?お父さまじゃないの?」
「ポーション屋は母が作らせた、という話で広めています。そのお話がまだでしたね。」
そこからポーション屋さんについてのお話が始まった。
わたしが迷い人としてこの世界に来たことは、貴族なら当然知ってる。
そして保護したのが紅嵐の盾で、そのメンバーのナリアルさんのお家であるアーベンティス家の養子となった。
そのアーベンティス家が急にポーション屋を作ると言い出したら、わたしが関係してると思われるのは当然のことで。
「なので我が家がポーションの改良と普及を目指す理由を考えました。」
「なんかすごく迷惑かけてる気がする…」
「楽しんでるので問題ないのです。理由としては、リンさんを可愛がる母が大暴走し、苦くて飲みにくいポーションの改良と普及を超特急で進めている、という話になっています。」
「ありがとうお母さま。」
「自らそうすると計画したのは母です。アーベンティス家は男児が産まれやすい家系のようで、過去を
「ナリアルさんも4人兄弟だし、家族登録してもらってる俺たちも男だしな。」
隣で聞いてたカルダさんが楽しそうに言ってるけど、そう言えば双子は家族登録してたんだっけ。
「母も女の子が欲しいと思ったそうですが、産まれたのは全員男児で4人産んだ時点で諦めたそうです。そこにまだ幼いリンさんの登場ですよ。あからさまな態度には出しませんが、かなり喜んでいました。私たち兄弟も父も、使用人も全員含めて。」
そしてわたしが作った味のあるポーションを、どこかの村の子どもに飲ませてしまった。口止めをしても話はどこかから漏れるだろうし、わたしは貰い物と説明していた。
ならそれを本当にしてしまえばいいと計画されたのが今回のお話。
「母が元冒険者ということは知られていますので、それを利用して苦いポーションを飲む辛さと娘可愛さを貴族の茶会で語っているそうです。」
「お母さまにお礼しないと。」
「必要ありませんが、もしかしたら新規事業のお手伝いをお願いするかもしれません。」
「何したらいいの?」
「新商品の試着です。子供用の冒険者服を作るそうですよ。」
これは前から欲しいと思っていたんだけど、なかなか手を付けられずにいたんだそうだ。
そこに現れたわたしが冒険者として活動すると言い出し、末っ子と一緒に暮らしていると。それなら今始めるべきではないか、とイケイケどんとん状態だそうです。
「ポーションの話と一緒に茶会で広めている最中ですね。貴族の服は子供用だろうが動きにくい物が多いですから。」
男の子ならしっかりしたスリーピースも普通に着るし、女の子は重めのドレスやワンピースなんて当たり前。長さもあるし歩きにくそうだよね。
わたしのよく着る動きやすいワンピースは、庶民向けだからシンプルだし軽い。丈も膝下くらいか、長くてもスネくらい。走っても邪魔にならないから好きなんだよね。
動きやすいといえばジャージだけど、その世界にあるのか?そんなもの。
「ジャージとか体操服はないの?学校で着る動く用の服とか。」
「ジャージやタイソーフクが何か分かりませんが、ないですね。乗馬服はありますが、基本制服のみです。」
「制服って動きやすい?」
「動きやすさは皆無です。」
「ただのステータスのための制服か。」
「まぁ、はい、そうですね。リンさんの世界でも同じ様な状況で?」
「ないこともない、かな。可愛い制服を着たいからって学費の高い学校に行く人もいたけど、お金がある家だけだし、そういう人もいるって程度。」
中学3年の時の同じクラスの女の子が、制服目当てで私立の高校に進学すると言っていた。お金があるって凄いなと思ってたけど、今思うと可愛い制服というのがステータスだったんだと思う。
ちなみにわたしは公立の私服校。偏差値67と高めだったから必死に勉強して入った。体操服も自由だったから、中学の時のをそのまま着てたんだよね。
制服と体操服って高いんだよ。なのに3年しか着ないし、傷みにくい生地だからわりとずっと着れるし。身長が変わらなければ全然余裕で使える。
「お母さまが作った服、いつでも買うって伝えておいて。」
「買う必要はないですよ。ただ着心地など確かめるために、何着か着てもらうことはあるかと思います。」
「どんとこい!って思ったけど、貴族向けに作るなら高級品になるの?」
「いや、貴族令息令嬢用と冒険者平民用で店も服の作りも変えるそうですよ。そしてこの街で売るのは冒険者向けのみです。アマンダさんと相談して決めていくと言ってました。」
「アマンダさんも一緒ならよかった!せっかく作ったのに冒険者に使えってもらえなかったら悲しいし、服ならアマンダさんだもんね。」
お母さまは商売系に強いみたいだし、これなら安心だ。
「あと、運び方やらの説明するからな。まだ出ていくなよ」
「あ、はい。」
もう終わりかな?と思ってお皿をキッチンに運ぼうと思ったらガイトさんに止められました。まだ続くそうです。
「登録してもらった箱あるだろ?あれがあと何個かあるから、届いたら登録してくれ。で、あの箱のルートを説明するな。」
王都の瓶工房→王都のおじいちゃんの所→届いた半分をこのお家宛に送る→箱が届いたらわたしがポーション作って入れて、鍵をする。
それを専用の運搬人さんがお店まで運んで、責任者さんが鍵を開けて並べて売る。
「王都からこの家、この家から店までの運び屋は奴隷を使おうと思ってる。奴隷とは強めの魔法契約が出来て、秘密を喋らないように制限できる。情報のとリンの安全を最優先するしそこは譲れない。」
「わかった。苦しい仕事はないよね?お金ちゃんと出る?」
「ないし給金もしっかり出る。ただ運ぶ時に狙われる可能性かあるから、ある程度戦える者にはなると思う。そっちはいま選定中だ。ここまでいいか?」
「ん、大丈夫。」
「よし、続きな。王都からポーションを届けさせてるって話にしてあるんだが、普通に考えたらこの家を経由する理由がないだろ?だからあの箱は2重ロックになってて、ここで1つ目を開け、店で2つ目を開ける必要があるとしてある。」
ここでポーション作ってるって知られちゃまずいもんね。
「どこまで正確な情報を伝えられるの?」
「雇う者には外用の理由のみ伝えられる。知ってるのはここのメンバーとアーベンティス家の方々のみだな。」
「あれ、お店の責任者も知らないの?」
「責任者はアーベンティス家で働いてる者になりますので、知っています。今度顔合わせしましょうね。」
ということです。それなら納得。
「店員さんの安全は大丈夫?」
「そこも今話を詰めてるが、防御アクセサリーか何かを持たせることになると思う。」
「それなら安心。」
情報を話せとか、ポーションを出せとかって言われたら困るもんね。ゼロにはならないだろうけど、少しでも安心な環境であってほしい。
「お店のオープン楽しみだね。」
「午後はギルドで話してくるよ。あ、ナルは屋敷だな。絞られてこい。」
苦笑いのナリアルさんと楽しそうなガイトさん。ちょっとお母さまから貴族のあれこれ教えてもらってきてね。
そして話し合いに必要ないだろうと自らお手伝いを名乗り出てくれたレイさんと双子さん。双子2人は却下くらったけど、レイさんは問題なし。
ってことで、午後の力仕事要員確保です!!
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