第168話 いい人悪い人

ガイトさんたちが入ってきたので1階に戻ろうとしたら、ナリアルさんが迎えに来た。それと交代で今度はカルダさんが先に下に行くみたい。


「ここからは私のそばを離れないようにしてください。鑑定するのは遠くから、相手に近づかないようにします。もし何かあればすぐに教えてください。」

「わかった、けどそんな危険な人はいないんだよね?」


「この場で襲いかかってくるような危険性で言えばないと思います。ただ何が起こるかは分からないので、念の為です。」

「バレないようにこっそり鑑定したらいい?」


「はい、リンさんが鑑定を使ったと知られないようにしているので、そこまで気にする必要もないんですけど。」


すごく申し訳無さそうな困った顔になっちゃったナリアルさん。特に気にしてないし安全のためなら何でも言うこと聞くんだけどな?と心の中で思う。私そんな暴走しないよ。


てことで、なぜか足元をぴったりくっついて歩くディアと共にみんなで下に降りる。階段はさすがに降りにくかったです。


階段を降りたら裏口と真反対にあるドアを少し開けて、店内の方をのぞき見る。ここがお店への入口だったのかーと今更思う。確かに店内への行き方知らなかったわ。ここか。


「あの4人が従業員候補です。休憩や急な休みも考慮して、4〜5人雇う予定になっています。」

「あのおばあさんは?」


「商業ギルドのギルマスです。」

「なんか…強そう。」


「まぁ敵に回したくないタイプですね、」


従業員候補の4人はこちらに背を向けてて、ガイトさんとおばあさんはドア側に立ってるのでここからでも見える。


おばあさんと一瞬目が合った気がするけど…。気にせず鑑定しちゃおう。ものすごくにっこりされた気がするけど気のせいだ、絶対に気のせい。


気を取り直して、とりあえず右から順に鑑定をかけていく。


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名前 ウェルト・ボトナー(本名)(21さい)

備考 アルデルン伯爵の紐付き

(作成者、作成方法、輸送方法などの情報を流すように指示されているね。雇っちゃダメなやつ!)

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初っ端これですか?マジですか?本名て、偽名もあるパターンが存在するってことですか?とりあえずオレンジ髪はアウトー。


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名前 マイーグ・テトラス (本名マグノル・パストミ)(25才)

備考 パストミ商会の3男で名前も経歴も偽証

(制作者、制作方法、その他紅嵐の盾や上位冒険者の情報を集める役。こいつもダメね。)

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うわぁいたよ偽名。しかも経歴も違うってダメじゃんね。別人だよそれ。パストミ商会てどこですか。後で聞こう。茶髪の男の人もアウト!


てか待って、さすがにこれ覚えられない。

メモとろうメモ。


とりあえず1枚のメモに1人分の鑑定結果を書いて、近くのナリアルさんに渡す。それをイヤカフで2人に伝えてるのかな?


よく見るとフランクさんと私以外みんなイヤカフ着けてました。準備万端かよ。


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ジェスタ・アドレー(16才)

備考 小さい妹がいて、体が弱いためお金が必要。

(双子と同じ孤児院出身、知り合いではないね。)

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よし、1人確保!この青髪のお兄ちゃんにはぜひ働いていっぱい稼いでもらいたい。なんならボーナス出してもらおう。絶対採用!


結果とおまけででっかく採用!!と書いてメモを渡したら後ろでアルダさんが吹き出した。ツボったみたいで必死に声を殺してます。なんかごめんね。


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ペレス・アドレー(17才)

備考 アドレー男爵に助けられ、借りを返すため必死に働く

(この子も孤児院出身で双子との面識はなし)

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2人ともアドレーさん?後で聞くとして、いい子っぽいしボルドーヘアーの女の人も採用でお願いします。


メモを渡したら頭を押さえたナリアルさん。そして見つからないように2階の奥の部屋に戻ることになりました。


全員問題なければ顔合わせの予定だったけど、さすがに2人もだめな人いたらね。私は逃げますよ。



「もうアドレーさんに全員紹介してもらったらいいんじゃないかな。」

「何故?」


2階のソファに沈み込むタイミングでポロッと言葉に出してたらしい。レイさんに聞き返されてしまった。


「問題ない2人は元々孤児院にいてアドレーさんの養子になったんでしょ?ならアドレーさんの所にいて、お仕事に就けない人がもっといるんじゃないかなーって思って。」


なぜか興味津々のみんなが思いっきり見てくるので答える。そんな不思議な意見でもないと思うんだけど。


カバンに入ってるお茶とクッキーとスコーンを出して、フランクさんにお皿とカップの準備をしてもらいながら尋問を受けます。ただの質問だけども。


「孤児は教育を受ける機会がほぼない。あの2人は商業ギルドで働いて知識を身に着け、ギルドからの保証もあり候補となった。」


「知識がある悪い人より、これから学ぶ気があるのにその機会に恵まれない人なら、私は後者と働きたいと思うかな。教える時間もお金もかかるけど。」


「アドレー男爵は孤児を買い取り奴隷のように働かせていると噂されています。その話の真偽は別として、その者の養子に入った者もよく思われないことが多いのです。」


「それこそ意味が分からないよ?だって商業ギルドは実際に2人を雇ってるし、それに2人ともしっかりした教育を受けてるっぽかったし。」


「教育を受けていると思ったのは何故ですか?」


「言葉にすると難しいけど、話を聞く態度と姿勢。背筋をしっかり伸ばして手は前で揃えてたし、常に喋る人を見てた。」


私は小学校の先生から話す人の方をしっかり見なさいって教わった。それを実践するかは別だけど、知らなきゃ咄嗟に出来ないと思うんだよね。


実際に貴族に雇われた人はずーっと店内を観察してたし、商人の息子は適当に相づちうってるだけで話を聞いてなかったと思う。おばあさんとお店に興味津々だったし。


そんなあんぽんたん2人よりよっぽど出来ると思うよ?あの2人の方が。


「鑑定しながらよく見てたな?」

「んー。右2人の印象が悪すぎて驚いちゃって。左2人と見比べたら全く態度違うし、これが選ばれた理由は何だろう?って考えてたからかも。」


苦笑い気味に答えると、この部屋から出るなと言い残して全員で見に行った。


大っきくなってもらったディアをもふもふしてたらみんなが戻ってきて、全員で大きなため息。


そうと言われて見てみると、紐付き2人の態度は店に興味がある様子だったと。しっかりしてる左の2人は話をちゃんと聞いてて、興味があるのは仕事内容の方。


そうなのですよ。納得してもらえて何よりです。



このまま顔合わせは出来ないので、4人がお店を出る前にお家に帰ることになった。戻るのはフランクさんと私だけだけど。


ちょうどお昼の時間だったので、その辺の屋台でご飯を買って食べて、茶葉と食器を買って帰った。


次はみんなと挨拶出来るといいな。

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