第167話 お店についてのお話

大量にパイ生地を仕込み次の日にはこれまた大量にパイ料理を作り、ご飯におやつにちょっとずつ食べて大満足な日々を過ごしているリンです。


あれから数日、今は朝食の時間。さすがに朝からパイは違うと思って、フランクさんに特製スープを作ってもらいました。温かい優しい味がしみる。


「今日で店と諸々の準備が終わるんだ。見に行く予定だけど一緒に行くか?」

「わたし行っていいの?」


「リンが俺らと一緒に住んでるのは街のみんな…てかまぁリンを知ってるやつには周知の事実だな。うん。」


みんな苦笑いで頷いてるけど、有名人になった記憶ないよ。


「まぁそこは置いといて、ナルが領主の息子なのも知られてるし、領主が主導で動いてる店ってのも知らせてるから俺らとリンがいても不思議は無い。」


じとーっと見つめてみたけどスルーされました。


「行けるならいってみたい。どんなところで売られるのか気になるし。」

「フランクどーする?」


「リンちゃんのボディーガードとして着いて行こうかな。」

「んじゃ飯食ったら行くんだが、リンが嫌じゃなければ頼みたいことがあってな。」


とんでもなく難しい話かと思ったら、働いてくれる予定の従業員さんの鑑定をしてほしいってことだった。


ナリアルさんが見て、商業ギルドでも調べて害のない安全な人なのは確かめてるんだけど、貴族の紐付きの可能性があるらしい。


紐付きっていうのは、どこかのお偉いさんに雇われてて、安全とかお金を保証してもらうかわりに情報を流す人のこと。


ポーションの情報、作成者、その他お店の状況とか売上とか詳しく知りたい貴族も商人も多いから、念の為なんだって。


そんな事でいいなら見るだけだし、やります。私の情報がどっかに筒抜けになるのも嫌だもんね。


「んじゃ準備したらレイとフランクとカルと店に来てくれ。俺たちは先行って色々準備してくる。」

「はーい。」


急いでガーッと食べた3人は先にお家を出て行った。私とフランクさんとカルダさんで食べ終えた食器たちを片付けて、外出の準備。今日は外出用のワンピースにします。


〈ディアのアクセサリーも増やしたいね。首にスカーフ巻く?〉

〈いらないよ。それより寒くないようにしておきなさい。〉


〈はーい。〉


ディアはお母さんかな?最近言われることにママみ出てきた。ママみ。


そんなことはどうでもよくて、玄関に降りたら残りのメンバーで出発です。


「なんで?」

「いいじゃん、久しぶりに高いところからの景色楽しみなよ!」


「なんなら僕の肩に乗る?」

「わっ、レイさんそのままでいいから!」


家を出たらレイさんに抱き上げられ、当たり前のように腕に乗せられたので思いっきり首を傾げた。


楽しめばいいと言ったのがカルダさん、肩車しようかと言ったのはフランクさんで、その言葉に反応して即座に肩車しようとしたレイさん。


思いっきりニコニコしてるし遊ばれたね、これ。


反応が楽しかったのか、時たま腕を持ち上げようとするレイさんに吠えながらお店に向かいます。



着いたのは木造2階建てのシンプルなお店。1階と2階に大きな窓が2つずつあって、陽の光で店内は明るそう。


場所は大通り沿いでギルドより住宅街寄り、森に出るための冒険者と普通の住民が気軽に買いに来れるような場所だとおもう。


「ここが店で表の入口、今日は裏から入るよ。」


私とフランクさんに説明しながら裏口の方に進んでいくカルダさん。もう勝手知ったるって感じ。


「ここが裏口ね。はい、リンちゃんちょっとここに魔力通して、終わったらフランクさんね。こっちは俺たちと従業員しか開けられないから、基本はこっち使ってね。ドア閉めると勝手に開かないようになるよー」


ドアノブ近くにある小さなフタを横にずらすと魔石が現れた。そこに魔力を込めて、終えたらフランクさんも入れて、カルダさんが何かの操作をして終わり。


ものは試しでディアもやってみた。ただの思いつきで、魔獣も出来るのか気になった私が質問したせいです。


だって他の結界みたいなのは魔石使わないんだもん。気になるじゃん?


ってことで、入れすぎー!というカルダさんの叫びが聞こえたけど無事に全員設定できました。ありがとうカルダさん。


「なーにしてんの」

「登録してた。ディアも一緒に。」


「できたの?」

「出来たっぽいよ。カルダさんがちょっと叫んだけど。」


「うん、それ聞こえたから迎えに来た。」


ドアの前でわいわいやってたらアルダさんが出てきた。めちゃめちゃ笑ってるからたぶんお店の中にも丸聞こえだったんだろうね。ごめんなさい。


レイさんに降ろしてもらって、みんなで中に入るとシンプルな部屋だった。置いてあるのは机とイスだけで、あとは2階に行ける階段だけ。


「ここは従業員の休憩とか、僕たちが来た時に軽く使えるようにあるんだけど。他の部屋も見てもらうと分かるかも。」


ってことで隣の部屋に入ると、今度は棚と下に行く階段があるだけの物置部屋だった。ちょっと貴族の屋敷で閉じ込められてた部屋っぽく見えたけど、嫌な感じはしなかったので問題なし。


地下はお家にある小屋の地下と似てて、ひたすらに棚があるだけの物置でした。


2階に上がってすぐの正面にはキッチンと向かって右にトイレがありました。水回りはここに集めたみたい。


階段上がって左にあるドアから入ると、1階にあるのより大きい机といっぱいのイスが置かれてた。


「下は軽くって言ったのはここがあるから?」


「そーいうこと。」

「ここと隣は防音もしっかりしてるから、相談とかいろいろと使えるようになってるんだ。」


聞いたらアルダさんとカルダさんが答えてくれた。キッチンもここにあるしお茶飲みながらってなるとここ使うんだろうね。納得。


さらにその奥のドアを開けたらソファと机が置かれてた。入口近くにはいつもディアが使ってるようなラグがあって、たぶんキッチンと繋がってるんだろう扉もあった。さっきは気付かなかったな。


「ここは空間が余ったから、どうせだし落ち着ける空間作っちゃおうって出来た部屋。いつでも入っていいし、ディアもここなら大きくなってくつろげるでしょ。」

「うん、ありがとう!」


〈ここならもとに戻っていいって〉

〈ここに長くいるならそうするよ。〉


お店だけど、そこまで広いわけじゃないから小さいままのディアさん。


「あそこのキッチンは従業員も使うけど、こっちは入らないから紅茶とか好きなの持ってきて置いといていいよ。」

「わおっ、フランクさんお家にある茶葉ここにも置こう!」


「今度買いに行こうね。カップもここ用に買っちゃった方がいいかも、一緒に見よっか」

「うん、そうする。」


ひと通り案内してもらって窓からの景色を眺めてたら、ガイトさんと知らない人数人がお店の表から入ってくるのが見えた。


この後は少しだけ鑑定さんの出番です。


いい人だと嬉しいんだけどな。

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