第149話 いざ出陣
まだ太陽がのぼりきる前に目覚めた。
目は開けたんだよ、開けたんだけども。
〈さっっむい〉
〈急いで着替えてしまえ〉
〈むり。やだ。むり。〉
ちょっと寒すぎたのでディアにくっついて温もりチャージ。少しだけ温まったら、勢いで着替える。
寒い期間が長いって聞いてたけど、本当だね。夏なんて一瞬で過ぎ去ってすぐ秋になって冬になる感じ。その貴重な夏は誘拐事件でまるっと消えたわけですが。ちくしょう。
「おはよう」
「おはよう、起きれたな。朝飯食えるだけ食って、残りは持って行っていいぞ。すぐ出る」
「わかった。フランクさんありがとう。」
「昨日ついでに作ってたやつだから。残りはこれに入れて持っていくといいよ。」
朝食はサンドイッチ、入れる箱もあるから今食べれるだけ食べて、あとはお昼のために持っていく。神様カバンに入れとけば傷まないしね。
リビングに入れば、みんな準備万端で地図とにらめっこしてた。
急いで畑に走って妖精さんたちに挨拶して、お水とクッキーをだしたら今日は帰りが遅くなるかもと伝えておく。
次は小屋に入っててポーションを一通り持つ。解毒と傷用は上級もいっぱい。
〈どうした?〉
〈ん?なにが?〉
〈顔が怖い。〉
〈女の子に向かってなんてこと言うんだ。…ちょっと緊張してるのかも。強い魔物だし、何かのミスで皆を傷つけるかもしれないし。足手まといになるかもしれないし。〉
勢いで行くと言ったけど、もしもがあったらどうしよう、と考えてしまう。1人なら気にしないのに、誰かと一緒に行動するとなると途端に怖くなる。
みんながケガしたらどうしよう、邪魔になったらどうしようって、頭の中でどうしても考えてしまう。
〈安心しろ、リンは私が守るしあいつらは強い。私が言うのだから信じてやれ。〉
〈うん。ありがとう。〉
何かやっちゃったとしても、私を捨てるような人たちじゃないし、そんなこと思うのも失礼なことだと理解はしてる。
どうしても心が落ち着かないからポーション大量に詰め込んでたんだけど。ディアにはバレバレなんだよね。私の相棒は最強で最高だ。
〈ありがとう、戻ろう!〉
〈あぁ。〉
急いで戻ると少しだけご飯を食べて、すぐに出発する。
信じるよ、みんなの強さ。
「みんなのその感じ、久しぶりに見た」
「カッコいいだろ」
「かっこいい!フランクさんもかっこいい!」
「僕も?ありがとー」
家を出て気付いた、みんなしっかり冒険者の格好をしてる。鎧とか剣とかちゃんとあるし、服装もいつものラフな感じじゃなくてカッコいい。
「はじめましての時はこの格好だったもんね。」
「うん、数ヶ月前のことなのに懐かしい。レイさん重くないの?それ」
「重さはあるが慣れたらなんてことない。リンは持てないぞ、潰れる」
「わぁぁ潰れたくはないかも。」
レイさんは大っきな盾を背中にかけてる。私の身長よりもデカいんじゃないかな?潰されたくないので見るだけ。
「レイさんの盾は攻撃を受けることがメインだけど、重さを利用して動きを止めたり振り回して跳ね返したりもするんだよ。力と動きを見る目とそもそもの強さが必要だけどね。」
「レイさんすごい」
アルダさんの解説。盾は前で防御するだけじゃなく攻撃もできるのだと。ただし、身体能力があって強くて攻撃に負けないのが前提。強すぎない?
「カルダとナリアルさんは軽装に見えるけど、ローブに防御付与されてるしナリアルさんに関しては武器を隠し持ってるタイプだから、見た目以上にガッチガチの装備。」
「そんなに見つめられても、今は何も出ませんよ。戦闘になれば出しますが。」
思わずナリアルさんを見てたら頭をぽふっとされました。懐から毒針でも出てくるのかと思ったけど、今は見れないみたいです。そりゃそうか。
「ちなみに俺はこれで全部。一応ナイフはあるけど接近戦になればボコボコにされる。」
「こう言ってるけど、接近戦になると目の前で魔法発動させて首落としたりするから。容赦なくズタズタにするよ。」
「ずたずた」
「非常時だけだ。そこまで近づく前に
双子の言い合いみたいになってるけど、たぶん2人とも強いんだよね。A級のグループにいるんだし。
「リーダーと僕は見た目のままだよ、剣使いと弓使い。リーダーは魔法剣士で僕は普通の弓使いだけどね。」
「魔法剣士ってなに?」
「属性魔法を使いながらメインは剣で戦う人のことかな。魔力制御は苦手だけど魔力はあって属性魔法を使える人は、魔法付与されてる剣に追加で魔力を流して攻撃力上げて戦ったりするよ。」
「ちなみにですが、リーダーの火魔法の制御が甘く大暴発して、さらに楽しくなったカルダが風で火を大きくしたことがきっかけで
「大惨事じゃん。」
「大惨事でした、本当に。」
アルダさんの解説にナリアルさんの補足が入った。火魔法で楽しくなっちゃうカルダさんは危険人物だと思うんだけど。
「アルダは矢に風魔法を軽くかけて、軌道修正や貫通力上げをしています。ここまでできる弓使いは少ないですよ。」
「アルダさんも普通じゃなかった。」
「僕は普通の部類なの、一応。この人たちほんとぶっ飛んでるから。」
ナリアルさんの追加説明に苦笑いのアルダさん。弓使いながら魔法使うのは普通じゃないと思うんだけど。なんかディアの言う通り心配しなくても十分強いぞ、この人たち。
「この中じゃ僕が1番地味かなー。」
「何を言いますか、先輩」
「先輩はやめようか、クソガキ」
フランクさんとガイトさんが楽しそうに言い合いを始めました。クソガキとか言うのね、フランクさんも。そこに驚きです。
「フランクさんはナリアルさんと同種だと覚えとけばいいよ。もしかしたらナリアルさんよりも上。本人は絶対に認めないけどね」
「それってものすごく強いんじゃないの?」
「うん、レッドベアなんて簡単に倒せるくらいには強い。」
「こわ。」
「そこのお2人さん?なにかな?」
「「なんでもないです!」」
アルダさんとこそこそ喋ってたら、フランクさんに気づかれた。そしてニコニコなのに何故か迫力ある顔で何かな?って。こわいこわい。
とりあえずここにいる全員がみんな強すぎることはわかった。
〈私がいてもブレないくらい強い?〉
〈ようやく気付いたか〉
〈なんでディアの方が分かってるのさ!〉
〈何度も動きを見てる。1人は未知だが〉
何度も訓練とか言って一緒に動いてたからか。1人はフランクさんのことだとして、アルダさんの話だとナリアルさんと同じかそれより上。
〈保護者最強すぎない?〉
〈今更だ。〉
〈もう今日は楽しむ余裕があってもいい気がする。〉
〈リンの言うピクニックだな〉
めちゃ
いろいろ心配してたけど、それも不要かも?と思い始めたリンでした。
みんなの戦い方見るのが楽しみです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます