第二章

第139話 楽しい馬車の旅

「今日はあと半分だよ。疲れてない?」

「大丈夫!疲れたらディアにのって気分転換するしいっぱい休憩とってくれてるもん。」


今は帰りの馬車の中。一緒に乗るのはアルダさんとディアだけ。みんなが交代で御者をしてくれてて、残りはもう1つの馬車に載ってる。


お父さまは馬車には乗らず馬で先に帰っていて、お母さまはポーションのお店関連でやることがあるからまだ王都にいる。


出発の前日は忙しかった。食事は作って持っていこうということになり、簡単に食べれる系のサンドイッチとかバーガーみたいなのを作りまくった。


あとはお屋敷の皆さんにお礼としてご飯を作って、一緒に洗濯したりさせてもらって、お話もしてまた絶対に遊びに来ると約束。


旅に必要な物はみんなが持ってたから、私は自分の着替えとかだけまとめて終わり。


ディアのご飯をどうしよう?ってことになったんだけど、お腹が空いたら道からそれた所で何か狩って食べるから問題ないと言われた。


ちなみに移動し始めて4日経ったけど、2回くらいしか行ってない。お腹が空いても小物は好みじゃないし魔力でなんとかなるから良いんだそうです。


「今日の宿、ご飯が珍しいって有名だから楽しみにしてるといいよ。」

「わーい!何があるんだろ、楽しみ。」


帰りの旅は宿に泊まることもあるしテントで寝ることもある。お外で寝るのはキャンプみたいで楽しいし、出会った時のことを思い出して懐かしい気持ちにもなる。


町に着いたら馬車を預けて宿に行きます。だいたいのお宿が1階に食堂とかレストランがあって、2階より上がお部屋になってる。


「2人部屋を2部屋と、従魔が入れる3人部屋を1部屋お願いします。夕食と明日の朝食もセットで。」

「はい、いらっしゃい。同じ階がいいかね?」


「出来れば。」

「それじゃあ3階の奥から3部屋だよ。お嬢ちゃんは風呂どうするかね?大浴場があるけど1人で入るのが不安ならお湯用意するよ。」


「お風呂入ってもいい?」

「リンさんが決めていいですよ。」

「大浴場に行きます。お気づかいいただきありがとうございます。」


「あら、しっかりした子だね。困ったことがあればいつでも声かけておいで。夕飯は17時から、朝食は5時からだよ。鍵見せれば割引入るからね」

「ありがとうございます。」


いつかの迷い人のおかげか、お風呂はだいたいどの宿にもある。お風呂好きの元日本人としてはとっても幸せ。


トイレは各フロアにあるのを使う事が多い。ちょっと高級なとこだとお部屋についてるけど、小さな町のお宿にはないよ。


そしてご飯のシステムもだいたい同じで、お会計の時に鍵を見せると宿泊割引がきく。1人1泊食事別で大銀貨3〜5枚。お風呂があってこれは安いと思う。


「今日はレイとナル。先に飯食うから部屋確認したら廊下集合な。」

「はーい。」


お宿の時は誰か2人と私とディアが3人部屋に泊まって、他の人達は2人ずつに分かれて寝る。今回一緒に寝るのはレイさんとナリアルさん。毎回交代してます。


「リンさんは真ん中で寝てくださいね。レイは部屋の確認をお願いします、ディアさんも何か見つけたら教えてください。」

「はーい」

「分かった」

〈分かってる〉


これはみんながいつもやってることなんだって。お宿のオーナーさんを疑ってる訳じゃなく、悪いこと考える人がいないと言いきれないから泊まる部屋は必ず調べて変なものがないか確認するんだって。


私は見ても分かんないのでお任せしてます。ディアは鋭いから何かあれば気付くかもだし、みんなも慣れてるから手出しするより大人しくしてる方がいいと思うんだ。


「特に何もない」

〈気になる事はないな〉

「ベッドも問題なさそうですね。」


「食事行くぞ」

「そうしましょう。」

「いこういこう!」


廊下に出るとすでに他の4人集まってた。みんなの部屋も問題なかったらしく、一緒に食堂に行きます。


「はい、メニュー」

「ありがとう。…えっ?」

「ね、面白いでしょ。」


「なんで?」

「ここ、ポテの名産地。」

「なるほど。」


ポテ焼き、ポテのグラタン、マッシュポテ、ピザにサラダ。


ベーコンと炒めたやつもあるし、スープも煮物もポテ満載。ここまでいっぱいあると面白すぎる。


「どれも上手いぞ。気になるのあるか?」

「ポテ焼きとグラタン!」


「んじゃそれとオススメ大量に頼みますか。ディアは食えそうなの食えよ、そんな味濃くないから」

〈あぁ〉


ってことで来ました料理の数々。ポテ焼きはくし切りのポテに油を塗って、オーブンでじっくり火を通した料理、だそうです。メニューに書いてあった。


グラタンはラザニアのパスタをポテにしたみたいな感じ。ソースとポテが折り重なって切ったらトローっとチーズが出てきてもう最高です。


「冷めないうちに食べよう」

「いただきます!」


塩だけの味付けのポテ焼きには色んなディップソースがついてる。これ帰ったら作りたい、美味しい。


グラタンはアッツアツでトロットロで無事上顎やけどしたけど、気にならないくらい美味しかった。ポテとチーズの相性ってほんとバッチリよね。


パンやスープ、サラダもどれも美味しくてもりもり食べた。


「明日は早めに出るから、風呂入ったらすぐに寝ろよ。夜更かし厳禁だ」

「はーい。朝からディアに乗っちゃだめ?」


「早朝は寒すぎるから日が昇ったらにしろ。あとこっから少し人多いから馬車から出ないようにしてくれ。ディアも走らせられん」

「はーーい。さすがにだめか。」

「だめだな。」


人通りが少なかったり、森を通っても大丈夫な時はたまにディアに乗ってるんだよね。気分転換とお尻の痛み改善とディアとの触れ合いのためにね。


帰ったら1番にお土産ぜんぶ確認するんだ!


くまさんに不思議食材いっぱいもらったし、調味料系も買ったのに鑑定してないし、服とかヘアオイルとかもまだ使ってないし。


お土産あけるのがこんなに楽しみなことなんだって初めて知ったよ。


旅行と言っていいのか分かんないけどね。でもみんなと移動したり、馬車でいっぱいお話したりおやつ食べたりが本当に楽しい。


初めての体験ができて私は幸せです。


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