第138話 帰る準備とその後
「明後日アーベントに戻ろうと思う。諸々の結果はいつでも聞けるようにしておくし、なにか要望があれば伝えられるようにする。」
「ありがとうございます。」
昨日お城から帰ってからは、おじいちゃん先生とポーション談義したりおやつ食べたり、ディアと外で体走り回ったり。体力も戻って元気に動きまくった。
体調も魔力も安定したし、長時間の移動も苦にならないだろうってことで出発が決まりました。
長く捕まってたり王都にいたりで寂しさがちょこっと頭を出し始めた。アーベントが私の故郷になったんだと思う。帰る場所があるっていいね。
「今日は何するんだ?」
「先生とポーション作るの。薬草いっぱいあるみたいだし作り方とか手順とか比べてみようって話になってね。」
「ディアは?」
〈何かあるのか〉
「体が鈍るから相手してほしいんだよね。リンちゃんとディアがいいならだけど。」
「ディアの好きにしていいよ。」
〈ならやるか。〉
ってことで喜んでるカルダさん。動きの速いディアに魔法を当てるのは難しいもんね。練習でゆっくり動いてもらうけど、それでもかなり集中しないといけないもん。
今日はフランクさんが一緒にいてくれるらしいので、2人でおじいちゃんのところに行く。
「いらっしゃいな。おぉ、手伝いも連れて来るなんてさすがだね。それじゃあ作っていこうかね。」
「よろしくお願いしまーす。」
同じ分量で作ろうと思っても、鑑定すると少ないとか多いとかでちゃって落ち着かない。ってことで、失敗するの前提で分量を固定にすることにした。
いろいろ比べるのって大切なんだね。あと失敗するのも大切って気付いた。どこを変えたら成功するとか、ここが違うと絶対に失敗するとか、データ収集は必要不可欠。
私とおじいちゃんで作っては、フランクさんが瓶詰めしたりメモとったり並べたり。いろいろ細かいことしてくれた。
お昼ご飯を食べてからも続けて作業して、疲れたら2人で作ったポーションの飲み比べしたり味比べしたりで楽しんだ。
あれやこれや試した結果、やっぱり薬草の鮮度は重要だった。味は置いといて成功させるってことに重点を置くなら、絶対的に鮮度の良い乾燥させてない薬草がいい。
あとは薬草の量も水も固定で作ると、ある程度のクオリティの物はできる。でも売れるかと聞かれると微妙だし、やっぱり自分にあう分量を知ることが大切だねってことになった。
「ここまでの実験が出来ればあとは繰り返し試していくだけだね。協力してくれてありがとうね。」
「いえ、わたしも楽しかったです。道具も使わせてくれてありがとうございました。」
錬金魔法に必須な道具たちはおじいちゃんが用意してくれてた。2人並んで一緒に作業するためにもう1つ持ってきてくれてたの。道具が違っても感覚は変わらなかったし良かった。
「いやぁ楽しかったね。そうそう、ポーションの瓶はいっぱい発注かけてるからね。近い内に送るから好きなだけ作って売ると良いよ。」
「瓶に悩まなくてすみます!ありがとうございます!」
「リンちゃんお母さんもお父さんも、お兄さんたちもみんな優秀だからね。困ったことがあればいつでも頼るんだよ。もちろん僕に出来ることなら声かけてね。」
「ありがとうございます、本当に。また発見したこととかあったら1番にお手紙書きますね。」
「楽しみにしてるよ。僕も定期的に手紙を書くからね。お返事ちょうだいね。」
なぜこんな挨拶をしているかと言うと、おじいちゃん先生は今日からもうお家に帰って自宅の工房で作業をするからなのです。
ずっと私の診察のためにお屋敷にいてもらってたんだけど、もう回復してお墨付きをもらったのでポーション屋さんのために動き始めるのだそうだ。
いっぱいお世話になりました。いつでもお手紙書けるし、今生の別れでもないから楽しくばいばい。
その夜、王城からの遣いだという騎士さんがお手紙を持ってきてくれた。内容は処罰に関してと、報奨やら謝礼やら謝罪やらなんやら色々と荷物がいっぱい。
難しいことはスルーして要約すると
1つ目、攻撃を仕掛けてきたダノリア元男爵の息子さんは平民落ちの罰から奴隷落ちとなるとのこと。
2つ目、ディアが気にしてたメイドさんは、紅嵐メンバーや王太子様と仲良くしている私が気に食わなかったから、ちょっといたずらしようと思ったとのこと。
風魔法で少し服を切るとか汚れた雑巾で服を汚そうとかそんなレベルだったみたい。貴族の末っ子で甘やかされて育った弊害だとみんなが呆れてた。
処罰はしっかりされたらしいし、実害もなかったし気にしなーい。
3つ目、報酬やら謝礼やらのこと。これがまたすごいんだ!
「通信魔道具のセット、これは紅嵐の家と領主邸を繋ぐもの。この片方だけなのは王城に直通で、届くのは第1の隊長室。すげぇな」
「ねぇ見てよこれ、2個セット3つと3個セットが2つ、4個セットと6個セットが1つずつだって。」
「大盤振る舞いだな。」
ガイトさんが見てるのは、家庭用のコピー機みたいな魔道具。紙に書いた文字をあっちで転写して読めるようにしてるらしい。FAXだね。
カルダさんと珍しくレイさんが大興奮で見てるのは、シンプルなイヤーカフ。だけどこれも通信用の魔道具らしい。
「ディアの肉についてもあるぞ。マジックバッグ3つ分パンパンに詰まってるそうだ。よかったな、食い放題だぞ。」
「これから寒くなると肉の確保が大変になるから助かるし、よかったね。かなり高級なのもあるっぽいよ。」
〈だって、よかったね!〉
〈リンの要望はなにもないな〉
〈ディアのお肉もらったし私の希望は叶えてもらったよ?〉
〈そうだが。防御アイテムでももらえばよかったのではないか?〉
〈それならナイフくれたおじいちゃんかカルダさんか、サリアさんロレンさんに頼むよ。〉
〈リンに合うものを作れそうな人選か〉
〈ただ信頼してるだけだよー〉
いつの間にか妖精さんたちはいなくなってたし、ずっと会ってないギルドの人たちにもギルマスさんとユシリスさんにも会いたい。
畑も気になるし冒険者としてまた森に行きたいし、お買い物に行ってお店の人と話したり近所のおばさまたちとお買い得商品の話ししたりしたい。
ここまでやりたいことがポンポン出てくることにびっくりだけど、アーベントでの生活は本当に楽しくて幸せで好きなことをできて。
自分の人生を考えたこともなくて、生活の中心が自分じゃなくて、わけも分からずただ必死に生きてた地球での生活はもうない。
これからも、また嫌な記憶がフラッシュバックして動けなくなることがあるかもしれない。
危険なことに巻き込まれたり、狙われることもあるかもしれない。
でも私には頼もしい保護者がいて、強い相棒がいて相談できる人たちがいっぱいいて心配してくれる人もいる。
迷惑かけちゃってごめんねって思うけど、ごめんねは言わないように気を付けて、いっぱいありがとうを言うよ。
私に関わってくれるみんなに感謝!
これからもやらかすだろうけど、よろしくおねがいします!
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