第136話 動作確認しちゃいます
王様たちとのお話が終わって、書庫に向かってるリンです。
王太子さまと副隊長さんが一緒にいるから、みんな道を空けてくれてる。その中を大勢で大移動。もちろんディアは大きいままで私の隣を歩いてます。
「せっかくなので見学しながら行きましょう。今の時間なら皆忙しくしてるので人は少ないですし。」
ってことで中央棟を案内してもらってます。入っていい場所をちょろっと見るだけかと思ったら、普通にいろんな部屋を見せてもらえた。
王族の方の肖像画があったり、すてきな花瓶があったり、見てわかるレベルで高級そうなお部屋があったり。
「それじゃあこのまま書庫に向かいます。道が入り組んでいるので離れないでくださいね、迷子になっってしまうので。」
「はい、大丈夫です。」
どうがんばっても迷子にはなれないと思う。前には先導してくれてるお2人がいて、左右に両親とディア、後ろにはその他保護者の面々。
きれいに囲まれてる中にいるし、自らダッシュしない限りはぐれる可能性はない。
「到着しました。今は私がいるので問題ありませんが、秘書庫に入りたい時は奥の入口の司書に先程お渡ししたメダルを見せてください。」
「はい。」
大きな書庫に入ると図書館みたいになってた。司書さんが数人本を運んだり片付けたりしてる。
ちなみにアーベンティス家の長男の奥さんエリンさんは、ここの司書見習いさんとして働いてる。
奥に進むと別の扉があって、騎士さんと司書さんが見張りをしてるみたい。王太子さまが手を挙げると騎士さんが横にずれて、タッチ式の制御版みたいなのが現れた。
「許可が出たらここにメダルをかざしてください。文字通り鍵になっているので、かざせば扉が開きます。ってことで、この方たちは立ち入りを許可しているから来たら通してあげてください。」
「「承知いたしました。」」
後半は見張りの人たちに言いながら説明してくれたみたい。タグをタッチして打刻する機械みたいな使い方だし、忘れることはないね。
中に入ると不思議な空間で、全ての本が鎖で繋がれた状態で棚に並んでる。そんなに数はないから低い位置にしかないから取りやすい。
「持ち出しは出来ません。棚には時間停止の付与がされているので書物が古くて崩れることはありませんが、丁寧に扱っていただけると助かります。」
「はい、もちろんです。」
「では、私は戻ります。好きなだけ見ていってください。なにか用があれば外の者に伝えるか、ハーマン副隊長に伝言を託していただければ助かります」
「分かりました。ご丁寧にありがとうございます。」
お礼を言うと笑顔で去っていく王太子さま。副隊長さんは他の騎士さんと一緒に外で待ってるので、ここにいるのは両親とディアと他のみんなだけ。
「じゃあリンちゃんが気になる本があれば読んでみよ。俺達は分かんないし座ってるから、何かあったら呼んでね。」
「うん、ありがとう。」
気になる本を開くと英語だった。ルーファス・ウィルキンスって名前かな、たぶん。
別の本を開くと日本語だった。これなら読めるし何か分かるかもしれない。本に繋がってる鎖は長いから、机でも余裕で読める。
書いたのは神保薫(じんぼ かおる)さん、日本人で看護師として働いてた26才。2016年、夜勤からの帰り道で車にひかれると思った次の瞬間には森にいたと書いてある。
国に保護されたけど、治療院でお仕事をしてたらしい。その年の流行り病のせいで国内外は大混乱、看護師としての知識と経験からインフルエンザに似てると判断し、対処法や予防を広めた。
「流行り病で世界が大混乱したのいつか分かる?」
「およそ70年前だな。記録を読んだことがある。」
「この人、元の世界ではわたしの16才年上なんです。そんなに年離れてないのに70年も前の世界に飛ばされたらしくて。同じ時間が流れてるわけじゃないみたいですね。」
「読めたのか?」
「はい。1つ目は少し知識がある程度の文字だったから読めなかったけど、こっちはわたしが使ってた文字だから読めます。」
「そうか。元の世界とこちらの世界の時間の流れは同じではないのだな。」
「それに、この人は事故にあった瞬間こっちの世界に来たみたいです。元の世界で亡くなっちゃったのか分からなですけど、わたしの理由とは違うみたいです。」
「ふむ。」
お父さまが考え込んじゃったので、続きを読む。
インフルエンザ大流行の後、すてきな方と結婚。3人のお子さんが産まれて幸せになった。事件に巻き込まれることもあったみたいだけど、ずっと王都で暮らしてたから解決も早かったと。
魔法に関しては治癒系魔法のみ器用に使えて、その他はダメダメだったと書かれてる。どうしても他の魔法を使おうとすると魔力が乱れちゃったんだって。
うーん。あんまり私と似てない。情報としては嬉しいけど、参考にはできないね。
ぐぅ~〜
「お腹すきました。」
「うん、そうだね。もう読まなくていいの?」
「んー。似てるところがあんまりなくて。気にることができたら読みに来ることにする。」
「なら帰ろうか。美味しいご飯とスイーツ食べよ」
盛大にお腹がなったので帰ります。今すぐ知りたい情報はないからまたいつか読めたらいいし。
外の見張りの方にお礼を言って副隊長さんも一緒に書庫から出ると、廊下が騒がしかった。紙がいっぱいあると音吸われるんだよね。
「何があった」
「はっ。基礎訓練中だった1人が消えました。現在第1と第2が捜索中、すぐに門を閉じたのでまだ城内にいると思われます。」
「そういうことはもっと速く報告しろ」
「申し訳ございません。」
「全員警戒、このまま会議室まで向かいます。すみません、非常事態なのでご飯はもう少しお待ち下さい。」
「「「「了解」」」」
「はい。」
話を聞いた副隊長さんの雰囲気が一瞬で変わった。警戒するように言われたみんなはすぐに武器が取れる態勢になり、ディアのまとう空気も変わった。
〈嫌な気配がする〉
〈わかった。みんな持ってるし私もワンド出していいかな?〉
〈いいだろ、今更だ〉
〈確かに。出しちゃお〉
神様カバンに入れてたワンドを取り出すと、握って魔力を瞬時に操作できるようにする。私を中心に周りを大人が囲んだ状態で歩く。この感じ、狙いは私かな。まだいたのか敵さん。
もう少しで会議室に着くと教えてもらい、警戒しながら廊下を進む。
曲がり角にさしかかった瞬間、火の玉が大量に飛んでくるのが見えた。
スローモーションのようにゆっくりと近づいてくる玉を熱そうだなーとのんびり考えてたら、ディアが目の前に立って守ってくれた。そして近くを通った火の玉がバチッと何かに弾かれた。
〈作動したな。あれは下級の魔法だから結界で守られる。リンには傷一つ付けられんから安心して待ってろ〉
〈わかったけど、ディア熱くないの?大丈夫?思いっきりぶつかってたよ〉
〈あんな弱い魔法に負ける体ではない〉
〈さすがディア。〉
武器屋のおじいちゃんがくれた防御アクセサリーが胸元で光ってる。これが守ってくれたんだね、ありがとうおじいちゃん。
そしてみんなもすごかった。私には効かないと分かった瞬間に動いた前衛組と、咄嗟の判断で結界や土壁で安全を確保してくれた後衛組。
みんなどんだけの訓練をしてるんだろう?あんな一瞬で判断して動けるってすごいと思う。ディアもすぐ目の前に出て守ってくれたし。ただ無茶はしないでほしいな。
大丈夫だよ、と双子に頭を撫でくりまわされながら終わるのを待つ。
双子は一緒に壁の中、お母さまとナリアルさんは壁の外、意外なことにフランクさんはトップレベルの速さで前に走ってた。びっくり。
外からの合図があって壁を崩すと、すでにみんな周りに集まってた。ケガをしてる人はおらず、みんな私の心配をしてくれる。
犯人は取り押さえられ、連れて行かれた後らしい。
このまま一旦会議室に向かいます。
クッキーかじってもいいかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます