第130話 新作ごろごろ

「おねがいします」

「こちらこそです。」

「はいはい、午後で終わらせたいからやるよー」


大きなくまさんとぺこぺこしてたらフランクさんに背中を押されました。ってことでバタークッキーをナリアルさんとフランクさんに任せて、私とくまさんはパウンドケーキを作ります。


「午前中にコンポートを作ってあるので、これでパウンドケーキを焼きます。ビルネの方はお酒を少し入れて、アポの方は紅茶にしようと思います。」

「ビルネの方をやります」

「はい。お願いします」


コンポートから少しだけとってサイコロ状に切って生地に混ぜる。ビルネの方はブランデーで大人が好きな感じに仕上げて、アポは煮出した紅茶と茶葉も入れて違う風味にする。


膨らまし粉の使い方が分からなかったらしいので、一緒に説明する。これがあればパンケーキも焼けるし朝食のメニューとおやつのメニューがとっても増えます。


「型はこのためにあったのか」

「使ってなかったんですか?」


「ドライフルーツやこの膨らまし粉と一緒に売ってたから買ったが、この形の物を作ることがなくて。ただの入れ物だったのかと。」

「例えばですけど、この型に薄いお肉を敷いて中にキャロの細切りみたいな野菜を入れて焼けば、変わった肉料理になります。」


「それはすごい…パン生地を敷いて中に具材を入れたら切って食べる主食になるのか」

「それならひき肉がおすすめですね。塩味の強いベーコンでも美味しそう」


「ひき肉とは?」

「塊肉を細かくした物です。あとで作りますね」

「新しい料理が大量に作れそうだ」


真剣な顔だと怖いけど、微笑むと可愛いくまさん。和みます。


型に生地を入れたら上には各コンポートをキレイに並べて乗せる。それぞれ3個ずつできたらオーブンへいってらっしゃい。


「こっちは生地を休ませるから時間できたよ。なんかメモする内容増えてたっぽいけど?」

「ひき肉もあると楽だと思って。」


「まぁあれは便利だよね。何にでも使えるし。それじゃやりますか」

「まずはカレーの作り方?」


「あとはざっくりと僕のわかる範囲で書いたやつがあるから、間違ってないか確認してほしいかな。」

「りょーかいです。」


カレーの他にも唐揚げやトンカツの作り方などなどあって、一緒にパン粉の使い方も書いてあった。いつの間に。


「かんぺき。」

「よし、じゃあひき肉も書いとく。料理長が隠し持ってたやつの鑑定と使い方を調べますか。」


「頑張りましょう。」

「はーい。」


ナリアルさんと手分けして鑑定して、私の知ってる物があれば使い方をメモしていく。


「あれ、これって…」


甘い香りの黒い枝を発見。知ってる物ならお菓子作りの幅が一気に広がるんだけど。


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名前 バニラ

特徴 森の奥になる。近くの実に触れると酷い痒みを引き起こすため要注意。

備考 希少なため高級品として扱われる。(自然に乾燥熟成して落ちるから便利よ。)

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「バニラだー!すごい、あるんだバニラ。くまさんくまさん、これどこで売ってました?」

「クマさんとは珍しい呼び方ですね。」

「俺名乗りましたっけ?」


「あっ、えっと、失礼しました…」

「リンさんが何をもってそう呼んだか分かりませが、間違いでもないですよ。彼の名前はクマールトなので。」


「名前もくまさんだ。」

「リンさんの言うクマさんとは?」


ナリアルさんに突っ込まれたので紙に熊っぽい絵を書いて説明。大きくて迫力のある『熊』という生き物が前の世界にいて、料理長さんが似てたから頭の中でくまさんと呼んでいたと。


フランクさんは大爆笑。ナリアルさんは肩を震わせてるから笑ってると思う。料理長さんは苦笑い。


「なるほど、だからくまさんね。くまさんいいんじゃない?ねぇ?」

「俺はなんでも。お嬢様が呼びやすければ。」


「お嬢様は慣れないのでリンと呼んでください。くまさん。」

「リン様?…リンちゃん」


リン様と呼ばれてあまりにも違和感があったので、ジト目で見つめたらリンちゃんに変えてくれた。満足してニコニコしてたら隣でフランクさんがまた大爆笑してたんだけど、気にしなーい。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−

名前 カカオ

特徴 ダンジョンでのドロップ品。

備考 眠気覚ましのために噛じる冒険者がいるが、オススメはしない。(チョコの原料だとは知られていないのよね。)

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「えぇぇ、まさかのファンタジー要素。」

「あれ、なんでこんなとこにカカオがあるの?これ冒険者くらいしか食べないでしょ。」


「食べるの?このまま?」

「食べると言うかほんの少し噛じるかな。眠気覚ましとか頭をスッキリさせたい時とか、単純に腹減って食べるものが無い時に。」


カフェイン要員か。


「苦いし渋いし変な味するからリンちゃんは食べない方が良いよ。なんで買ったの?」

「このバニラと一緒に売ってたので。製菓系の何かかと思ったんですけどよく分からず放置してましたね」


「わたしの知ってる使い方をしたらお菓子にもなりますよ。バニラも使って色々作ってみましょうか」


フランクさんとナリアルさんはカカオの味を知っているのでちょっと困惑ぎみ。くまさんは興味津々でノリノリ。


まずはカカオからチョコレート作り。もう殻は付いてないので、このまま魔道具の中に入れてひたすら粉砕、撹拌かくはん。お砂糖を入れて油分がじゅわっと出てきたらボウルに移して、お湯と氷水を準備。


まずはお湯につけて温度を上げて、ツヤが出てきたら冷水につける。混ぜながら固まらないように気をつけて、ドロっとしたらまたお湯につける。温度が上がりすぎないように混ぜながら取り出して、たぶん完成。


型がないのでお皿に一口サイズに垂らしていき、残りはホットミルクに入れてココアにする。


「甘いし濃厚で美味しいね。砂糖の量を調整したら普通に大人でも美味しく食べれそうだよ」

「固まったらこっちも食べてみて。次はバニラかな。時期は微妙だけどアイスにしよう。」


バニラを切って中からビーンズを取り出し、ミルクとエッグの黄身とお砂糖と一緒に鍋に入れてよくかき混ぜる。混ざったら弱火で火にかけて、沸騰しないくらいで上げたら氷水につけて冷やす。


冷えたらザルでこして平らなバットに入れまして、ディアさん召喚。


〈ディアさん、今いい?〉

〈今行く〉


何も聞かずに数秒で舞い戻ってきたディアさんは念入りにクリーンをかけられてキッチンに入ってきた。何をするか説明して、冷やしてもらいながらたまにかき混ぜて、固まったらまたかき混ぜる。


いい感じに冷えたらスプーンですくって、盛り付けにミントも乗せたら完成。卵白はあとでメレンゲクッキーにしよう。


「これがバニラのアイスです。」

「さっきのとは全くの別物ですね。味よりも香りが豊かに感じます」


「わたしはこれをクッキーに混ぜるのが好きです。美味しいですよ」

「私は好きですね。」

「僕も甘くて好きだな。暑い時期なら大量に食べたい。」


くまさんにも2人にも好評でした。ちなみに手伝ってもらったディアにもあげたんだけど、冷たいのが気に入ったらしい。これならいくらでも冷やすと喜んでました。


猫にアイスはどうなのかと思ったけど、氷の魔法が得意なディアにはお気に入りの甘味になったみたいです。


ディアは美味しい物を食べて満足したらしく、また外に戻っていった。呼んだら何も聞かずに来てくれるディアさん、なんてかっこいいのでしょう。


ってことで他にも作れる物をメモしておわり。ショユとかミソもあったし、それは今日の夜ご飯になりそうです。

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