第126話 2度目まして
おはようございます。外行き用っぽいシンプル可愛いワンピースに着替えたリンです。目が覚めて3日目くらいの今日、初めて両親に挨拶をします。緊張しています。
〈そんな緊張するな、悪い奴らではない〉
〈ディアは知ってるんだもんね。我が家の子だと思うなとか言われたらどうしよう、息子に頼まれて養子にしただけって言われたらその通りなんだけど〉
〈それはない。〉
〈緊張してお腹痛い…〉
キレイな服なんだけど、あまりにも落ち着かないから今はディアに抱きつきながらラグに座ってる。髪の毛はノーラさんに結んでもらってリボンも付けてもらった。ハーフツイン、我ながら可愛く出来上がってると思う。
ぐだぐだしてたらナリアルさんに抱き上げられた。そのまま連行されます。
連れてこられたのは広いダイニングルーム。壁際に見慣れたメイドのメルさんがいたから小さく手を振る。ニコッとしてくれたから満足です。
床におろしてもらい、向かい合うのは綺麗な女性と見覚えのある冒険者さん。
「始めまして、リンちゃん。あなたの母になったリリアナと申します。」
「父のクロードだ。だいぶ顔色も良くなったようで安心した。アーベンティス家へようこそ。」
「はじめまして、リンです。養子にしていただき、ありがとうございます。えっと、ご迷惑をかけないようにします。クロードさまは、あの時助けていただいて、ありがとうございます。挨拶もできずに申しわけありません…」
緊張やらなんやらで変な話し方になり、泣きそうになる。スッと隣にディアが来てくれて、ナリアルさんに頭を撫でられる。精神年齢が8才に引っ張られてる気がする。
「あらあら、気にしなくていいのよ。可愛い娘ができて大喜びだったんだもの。リンちゃんにはお母さまかママと呼んで欲しいわ!アーベンティス家へようこそ。」
「あのドタバタ状態で顔を覚えていたのか、すごいな。うちは一応伯爵家ではあるが、俺もリリアナも元冒険者で息子4人は好きなことやってる。縛ることもない。自由に好きな場所で好きなことをしてくれ。」
「お父さまお母さまって呼んであげて下さい。2人ともリンさんには親だと思って欲しいと言っていましたので。」
ナリアルさんが耳元で教えてくれた。リリアナさんは姿勢を低くして目線を合わせてくれてるし、クロード様はしゃがんでくれてる。とっても優しい人たちだと思う。お部屋まで準備してもらって、お洋服もそろえてもらった。感謝しかないです。
「お父さま、お母さま、よろしくお願いします。」
ペコッと頭を下げてから2人を見ると、お母さまにおいでおいでされる。ナリアルさんを見ると頷いてくれて、ディアも行けと目線で訴えてくる。
近くに行くとお母さまが近づいてきて、膝立ちになったと思ったら抱きしめられた。いきなりのことで驚き固まる。
「いつでも甘えて、わがままを言って、私達を頼ってね。あなたは私達の娘でナリアルたちの妹。誰もあなたを傷つけないし、あなたの言う事を無視しない。困ったことがあれば一緒に考えましょう。楽しいことはいっぱい聞かせて。あなたらしく生きていけるようにお手伝いするから、何でも言ってちょうだいね。」
言葉が出なかった。何を言われたのかうまく理解が出来なかった。
紅嵐の人たちやフランクさんは優しくて頼れるお兄さんで、皆にポーションとか面倒事をお任せしてるのは無駄に口を出す方が話がややこしくなると思うから。
まだこっちの世界の物の扱いや価値については勉強中。ポーションは必要なものだし自作なら買うお金も浮くから、できることをやって少しでもお礼できればいいなって思ってた。
お父さまもお母さまも、私が好きなことやってわがままを言ってもなんの得もしない。無駄にお金がかかるかもしれないし、意味わからないわがまま言うかもしれない。損しかしないと思う。
「犯罪をするなら全力で止めるが、君はそんな子じゃない。それなら親である俺達は全力で君を守り助けるだけだ。それが親の役目であり仕事。君は気にせず好きに動けばいい。俺達は君を見守る楽しみを得られるだけで十分だ。」
タコができてゴツゴツした大きな手が頭に乗る。びっくりしたけど優しい手だった。
〈リン、お前の家族だ。〉
〈かぞく〉
家族という言葉がじわじわと温かく胸に広がっていく。保護者として守ってくれる、兄として先輩としていろいろ教えてくれる皆がいて。十分幸せなのに私にも家族と呼べる人ができた。無視もされず、痛いこともなく、話を聞いてくれるらしい。
「あなたは十分すぎるほど頑張っているのよ。」
お母さまが私のおでこにキスをして、ハンカチをほっぺにあてる。不思議に思ってたら目が霞んで、皆の顔が見えなくなった。
わたし、泣いてるんだ
瞬きをすれば涙がこぼれる。ディアが小さくなって足元にきて、周りに皆が集まってくる。頭を撫でられたり、ほっぺをぷにぷにされたり、お口をタコにされたり。
感情が追いつかなくてボーっとされるがまま。
しばらくそんな状態が続いて、涙もひと通り出しきった私。泣いたという感覚があまりなく、疲れもせずに頭がスッキリしてる。
メルさんがホットタオルを持ってきてくれて、それで顔を拭いたらもうスッキリサッパリ。
そんな私をお父さまが抱き上げ、イスに座らせる。みんなも座ると朝食が運ばれてきた。そういえばお腹ぺこぺこだ。
メイドさんたちが持ってきてくれたのは普通の朝食メニュー。ここ数日はお腹に優しいスープメインの食事だったから、ソーセージがあるのがとっても嬉しい。
お父さまの合図で朝ご飯いただきます!さっきのことはどこに行ってしまったのか、ご飯に夢中です。ディアもラグの上でお肉をいっぱいもらってる。よかったね。
パンもたまごもスープも全部おいしい。美味しいけど、さすがに胃が小さくなってていっぱいは食べられない。
「お腹いっぱいになる前にポポをどうぞ。甘くて美味しいですよ。」
ナリアルさんがくれたのは見慣れない物体。
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名前 ポポ
特徴 甘さの強いフルーツ。
備考 貴族に人気。(バナナとマンゴーのいいとこ取りのあまーい果物)
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鑑定してみても知らない果物だった。
お言葉に甘えてスプーンですくってひとくち。びっくりするくらい甘かった。これポーションに使ったら苦みとか吹き飛ぶくらい甘くなる気がする。
どこで買えるか聞いたら、あとでメイドさんがメモをくれるらしい。ありがとうございます!
緊張したり泣いたり食べたり忙しかったけど、昔の冒険のお話とか聞けてとっても楽しかった。お母さまが魔法特化型の破壊魔と暴露したお父さまが睨まれてて笑っちゃったひと幕もあり。
両親はやることがあると言うので、食べ終わったらここでばいばい。夜はまた一緒に食事することになった。
私はフランクさんに抱き上げられ、ディアも一緒にお庭を散歩。日かげでのんびりしながら魔物の本を読みます。
ディアが日にあたってぽかぽかふわふわで、最高でした。
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