第125話 社会科見学?

小学生の時とかに行かなかった?工場見学とかそういう体験。あれが大好きだったリンです。


お風呂に入ってご飯を食べたら寝ちゃって、起きたらお昼でびっくり。そのままご飯を食べて体力も復活したので、おじいちゃん先生のところに来ました。ディアとともに。


「リンとディアです。邪魔はしないので、見学させてください。」

「ようこそ。と言っても、ここは臨時の工房で僕の家は別にあるんだけどね。ひと通りの道具は揃ってるし体調が戻ればここ使うと良いよ。」


「ありがとうございます。」

「ちょっとだけ確認させてね。お顔触るね。」


イスに座ったら診察が始まった。貧血のとか顔色の確認と、魔力の流れの確認。使い切るギリギリくらいを一気に使ったから、魔力の流れとか回復とかに影響が出てないか確認する必要があるらしい。全く問題なく回復も順調だそうです。


「いい感じだね。体調悪いとか頭痛いとかはないかな?ふわふわするとか気持ち悪いとか。」

「ないです。」


「結構な量のポーション飲んだんだけど、全く影響なさそうだね。やっぱり自分の魔力の入ったポーションだと馴染むのかね。」

「合わないこともあるんですか?」


「あるある。魔力に敏感な人が下手なポーション飲むと魔力あたりに似た状態になっちゃうんだよ。だからポーション作って売る時は一定の条件をクリアしないとだめでね。」

「クリアするのって難しいんですか?」


「難しいね。だからみんなできる人に教えてもらって修行するんだよ。あぁ、お嬢さんのポーションは見せてもらったけど合格ラインのはるか上、完璧だったよ。売っても全く問題ないからね。」

「ありがとうございます!」


合格ラインだって。嬉しいね。うきうき足を動かして、ディアをなでる。気分はルンルンです。


「じゃあ僕は作るから、気になることがあれば聞いてね。つまらなかったらその辺の本でも読んでてね。基本の本だからそれもつまらないかもしれないけどね。」

「ありがとうございます。お借りします。」


机に置いてあった【ポーションの基本】の本。もう文字ばっかりでびっくり。内容はだいたいの水の量とか葉っぱの枚数とか時間。鑑定が使えない人はいろんなパターンを繰り返して自分にベストな量を探すらしい。大変だ。


パラパラと見てからおじいちゃん先生に視線を向けると、すごくニコニコしてるけど目が真剣。楽しみつつ集中してるんだろうと思ったので大人しく観察。


上級ポーションを作ってるみたいで、薬草と水を入れて魔力を流しながら混ぜてる。大人だと片手で混ぜられるんだな、いいなぁなんて思いながら見つめる。


完成したポーションを瓶に移し替えてタグをつけて水分補給をするおじいちゃん先生。


「質問してもいいですか?」

「どうぞどうぞ。」


「その量で作ったのは理由がありますか?」

「この量が一番扱いやすいからだね。基本は1回でポーション瓶7〜8本くらい作るよ。」


「いっぱい作るためにお水増やすことってないんですか?」

「失敗する可能性が上がっちゃうからね。あぁ、そういえば水の量を増やして作ったって書いてあったね。報告書を読ませてもらったよ。」


ギルドに報告したやつの写しをナリアルさんが持ってたらしい。さすがです。


「効果も変わってたし多くするのもありなんだけどねぇ、どうしても集中が続かなかったり魔力がブレたりしちゃうんだよね。」

「上級なら水多くしても薬草茹でればかなり作りやすかったです。魔力もすんなり通った感じがしました。」


「資料の感じだと茹でるってお湯に通す感じかな?どのくらいお湯に入れたらいいのかな?」

「薬草の色が鮮やかになったら引き上げるくらいでいいと思います。10数えるくらいです。」


って、ことで湯がき薬草を作ります。卓上コンロみたいなアルコールランプみたいなやつでお湯を沸かして、茹でる。小型コンロっていう魔道具なんだって。冒険者も使うような一般的なものらしい。紅茶を入れるのに便利だからってここにあるんだって。引きこもりかな。


キッチンから借りてきたザルやトングを使って引き上げてお鍋に入れたら、まずは普通のお水の量で作る。完成したらそのまま水を増やして作ってみる。


ポーション作るの得意な人って調べるのが好きとか実験が好きとかって人が多いと思う。私もそうだしおじいちゃん先生もすごくすごく楽しそうだったもん。


「これは面白いね。乾燥した状態の良くない薬草を規定量で作るのと、新鮮なまま茹でて水を倍量入れて作るの、魔力操作の点だけで言えば後者のほうが作りやすくて効果も高くなる。興味深いねぇ」


ぶつぶつ言いながら結果を紙に書き出し頭の中を整理しているらしいおじいちゃん先生。ちょっと怖いです。


でもおじいちゃんの作業は見ててとっても面白かった。たぶんだけど、常に鑑定を使ってるわけじゃなくて、だいたい終わりそうなタイミングとか違和感がある時だけ見てるような感じだった。


ずっと見てるのも疲れるし慣れれば魔力の入り方とかで判断できるようになるんだろうなって思ったらポーション作りも奥が深いなーと。


時間もあるし借りてた本を読みながら気になったところをメモ帳に書き写す。薬草の良し悪しについては面白かったから、ちゃんとメモした。鑑定使えば状態も分かるけど目で見ただけで分かるようになればそれもすごいと思う。


文字を書きながら隣に薬草の絵を書いて、気をつけるべき部分とか色の変化とかを絵に書き加えていく。どうしても文字だけだと読みにくいんだよね。


「よしおわった。いやぁこの年になっても新しい発見があるなんて嬉しいなぁ。ありがとうね。」

「いえ。ベテランの方の作業が見れて楽しかったです。本、ありがとうございました。」


「君もなかなかの勉強家さんだね。そうそう、今日使った薬草は妖精さんからもらったものなんだ。あとで正式な書類にして金額決めてお支払いするからね。」

「分かりました。」


細かいことは保護者のみんなに任せよう。そうしよう。だって分かんないもん。


ってことでお部屋まで送ってもらった。ゆっくりだったけどポーションのお話しながら歩いた。大変なこととか昔のこととか聞けて楽しかった。


お部屋につくとみんな集まってて、すぐに抱き上げられてソファに置かれる。おじいちゃんが色々と説明してくれてるのを横目に見ながら、出てたクッキーをかじった。フランクさんの味、美味しい。


軽くシャワーを浴びて夕食を食べたらすぐに寝ちゃった。さすがに体力が減ってるので長時間動けないし、それがすごくもどかしい。はやく普通の生活ができるようになりたいです。


ベッドで丸まってるリンちゃんを見守る大人の目はどこまでも優しいのでした。

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