第122話 お目覚めです

〈…えるか? …リン、きこえ……リン!〉


呼ばれた気がして目を開けたら、顔面ドアップのディアさんがいた。お腹がモゾモゾすると見てみれば妖精さんたちが乗ってるし。何だこれは。


「…よぅ」


あいさつしようと思ったら声が出ない。ディアを撫でたくても腕が重すぎて動かない。昔高熱出した時にこうなったことがあったから、もしかしたら熱出したのかな。


「ディアさん?どうかしました?」

〈リンが起きた〉

「「「えっ!?」」」


近くにいたらしいみんなが近付いてきて、ベッドの周りに集まった。そういえばここどこだろう?高級ホテルのベッドみたいなんだけど。ふかふかでシーツの手触りめちゃめちゃ柔らかい。


「先生呼んでくる、薬草にハマってここに寝泊まりしてるって言ってたから」

「私は両親に伝えてきます」


薬草にハマるって言い方こわいよ。カルダさんとナリアルさんがドタバタと急いで出ていって、他のみんなは動かない。あ、やっと腕動かせた。ディアやっぱりもふもふ…ちょっとゴワゴワしてる?お風呂入ろうか。


〈私熱出してたの?体動かないんだけど。あとここどこ?〉

〈色々あってずっと寝てた。今日で6日目だ。ここは王都にあるリンの親の屋敷だな〉


ってとこはアーベンティス家のお屋敷か。挨拶もせず寝てたなんて、失礼にも程がある。それにしても動けない。


扉がノックされて、おじいちゃんとカルダさんが入ってきた。カルダさんがノックしないで入ろうとしたらしく、怒られてる。お爺ちゃんと孫かな。


「おお、本当に目が覚めてるね。始めまして、僕は医者でセスタスと言います。少し診察したいんだけどいいかい?」

「…ぃ」

「無理に声を出さなくてもいいんだよ。頷いたりまばたきでも分かるからね。喉は乾いてるかな?」


頷くと、フランクさんがお水を用意すると出ていった。いつもの果実水かな、あれ美味しいんだよね。


「じゃあ診察させてもらうね。寝てたから貧血気味なのはしょーがないとして。綺麗な目をしてるね、見えにくいとかあるかい?」


頭をちょっとだけ横に動かす。このくらいなら動かせるし、伝わらなければディアを通訳にするから問題はない。さらっと目を褒めてもらえた。心がぽかぽかです。


「うん、問題なさそうだね。次は手を触るよ。魔力を流すからね。気分が悪くなったら手を握るか、そこの怖いナイトに伝えてね。僕ならパクっと一口で止められるからね。」


ディアさん、やる気出さないでください。パクっとはだめだよ。おじいちゃん先生も冗談なのか本気なのか分からないトーンで言うのはやめてください。


手を握られると、ゆっくり魔力が流されるのが分かった。やわらかいような優しいような、そんなイメージの魔力。このおじいちゃん先生にピッタリだ。


「流れは問題なさそうだね。このまま手に魔力を集められるかな?無理しなくていいんだけどね。少しだけでいいんだけど。」


〈ディア、暴走しそうなら止めて〉

〈わかった〉


少しでも魔力が上がればやってた魔力操作の練習。少しだけ手のひらに集めるように意識すると、すんなりできた。寝すぎて集中力落ちたかな、これだけでも疲れるんだけど。


「うん、いいねいいね、上手だね。これが君の魔力なんだね。温かくて優しいね。もういいよ、ありがとう。」


手を降ろされて布団に入れられる。フランクさんが果実水を持ってきてくれた。コップにストローが刺さってて飲みやすい。チューチュー吸って半分くらい飲むと体に染み渡る感じがした。どんだけ枯渇してたんだ。


「魔力量と体力がわかれば知りたいんだけどなぁ。どうしようかね。」

〈ディアさん通訳お願いね〉

〈わかったよ〉


−−−−−−ステータス−−−−−−

名前 リン

年齢 8才

職業 (未定)

HP 75/100

魔力 650/995

スキル 生活魔法(3/5)、風魔法(3/5)、土魔法(3/5)、水魔法(3/5)、鑑定(4/5)、錬金魔法(3/5)、精神苦痛耐性(5/5)、身体苦痛耐性(4/5)

備考 転生者 祝福を受けし者

−−−−−−−−−−−−−−−−−−


〈魔力が995分の650、HPが100分の75。どっちもちょっと上がってるよ。…あれ、おまけに精神苦痛耐性が5になってる。〉

〈伝える〉


「先生、ディアが教えてくれた。魔力Max995で残り650、HPがMax100で残り75」

「うん、そんなに減りすぎってこともないね。体がダルかったりツラかったらポーション飲んでもいいけど、なるべくは安静にして自然回復に任せてね。」


頷いてディアにお礼をいうと、ほっぺをぷにっとされた。それ久しぶりだね。くすぐったいので連続はやめてください。


ディアが落ち着くまでしばらく鼻でツンツンされまくった。ついでと言わんばかりに妖精さんたちも周りを飛び回って髪の毛で遊んだり布団に入ってきたりどっかから出したクッキー食べたり。クッキーどこから出した?


ちょっとしてナリアルさんが戻ってきた。両親への挨拶はもう少し後でもいいってことで、明日以降に会いに来てくれるらしい。ご迷惑をおかけします。


「お腹すいてるかな?食べられるならスープでもお腹に入れた方がいいんだけどね。」

「ぺこぺこです」


声出た。腕もだいぶ動くようになってきたしディアをもふもふするくらいは出来るようになった。おじいちゃん先生がフランクさんと出ていって、みんなにツンツンされまくってたらいい香りがしてきた。


「食べにくかったらスープだけ飲めばいいからね。噛むのも疲れちゃうかもしれないからね。」


おじいちゃん先生が説明してフランクさんが作ったらしい。キャロとオニヨン、ポテがとっても小さく切られてて食べやすそう。


〈ディア、背中支えてくれる?〉

〈あぁ。おい、手伝え。リンが体起こしたいと〉


おいはひどい。一番近くにいたアルダさんが体を起こしてくれて、ディアがソファになる。後ろに倒れそうになるから枕で背中あたりを支えたら完成。


「ありがとう」

「どういたしまして。つらくない?」

「へーき。」


〈ディアもありがと〉

〈なんてことない〉


なぜかナリアルさんに食べさせてもらってます。腕だるいけど自分で食べれるよ?って思ったけど、すごくすごく心配かけちゃったんだと思う。みんなニコニコしてるし、よかったねーってずっと言ってるし、おじいちゃん先生もうんうん頷いてるし。


心配されるってこういう感じなんだなーってくすぐったい気持ちになる。


お皿の半分くらい食べてお腹いっぱいになったのでごちそうさま。お腹が満たされると眠くなってくる。


「また起きたらお話しましょうね。今はおやすみなさい。」


ディアがスルッと移動して、ナリアルさんに支えてもらいながら横になる。


ちょっとだけおやすみなさい。


リンちゃんは気づかなかったけど、起きたのは深夜だった。先生もみんなも優しいね。

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