第112話 作戦と決戦
「動きが決まりました。」
「待ってました。」
ベッドから出てみんなに近づくと、ここに座れとソファーをパシパシされた。ロイくんが可愛いです。お水を飲んで時間を確認すると、今は午後1時。3時間くらい寝れたし頭もスッキリしてる。
「説明しますね。まず、明日の朝早い時間であることは確定だそうです。商人との取引が確認でき次第、外にいる仲間たちが動きます。こっちの人数は7人と契約魔獣が1匹。白くて大きい魔獣ですが、絶対に危険はないので見ても攻撃しないでくださいね。」
6人は紅嵐のメンバーとフランクさん、あと1人は教えてもらえなかったけどかなり強い人らしい。ユシリスさんは帰ったって言ってたし、誰なんだろう。
「わたしたちの行動は2パターン考えられて、1つは取引より先にあの箱に入れられた場合、もう1つは箱に入れられずに作戦が開始した場合です。」
「あの箱は厄介だもんね。」
「ですね。箱に入れられた場合は仲間がこじ開けてくれるので、開いたら移動して安全な場所で大人しくしてます。箱に入れられなかったらこの部屋にこもります。」
「どっちにしてもやることはなさそうね。」
「はい、わたし達のお仕事は敵に捕まらず安全に逃げることです。わたしは無駄に動かないよう釘を差されました。」
突っ込んで行ったりみんなを守るために前線に出ようとしないこと!って約束させられた。そんな無鉄砲じゃないと思うんだけどな。まぁいざとなったら何するか分からないけど。
「最初からここに立てこもれば良くないか?わざわざ箱に詰められる必要ないだろ。」
「わたし達が抵抗すると相手の動きが変わってしまう可能性があるので、仲間が動くまでは予定通りと思わせないといけないんです。」
「なるほどな。ギリギリまでは大人しい子どもでいるわけか」
「はい。わたし達は良い子に運ばれる哀れな子ども達です。」
言い方がおかしいけど言葉のままで、大人しく良い子を演じる。ガイトさんたちが行動開始したら逃げるだけ。
「ねえ、とんでもなく今さらなんだけど取引ってこの屋敷でするの?普通見つからない場所とかじゃないの?ここなの?」
「それなんですけど・・・仲間の言葉を借りるなら『とんでもなく頭の弱いバカ貴族』だそうです。闇商人をここに呼びつけて当主自ら取引をするらしく、踏み込むのもここだけだそうで。」
「バカだとは思ってたけど、とんでもないわね。」
同感です。私も何でそうなる?って思った。犯罪の証拠を自ら家に招き入れるとか意味が分からないし、なんならここに書類が残ってる可能性が高いと聞いて驚いた。あるとしても別の場所に隠したりするでしょ。リスクありすぎるじゃんね。
「動くのは明日の早朝3時から4時頃になるそうなので、早めに寝て日が変わるくらいに起きればいいかと思います。それまではゆっくりできます。」
「飯来たから先に食った、リンも食え」
「夜は6時頃に持ってきてくれるって。」
「ありがとう。」
双子に言われて見れば、机に1人分の食事が置かれてる。みんな用にクッキーを出して私はご飯を食べる。あまりお腹がすいてなかったので、スープやサラダを食べてパンやアポはカバンにしまった。いつか役立つかもしれないし。
みんなクッキーをかじりながらお話したり手遊びしたり、絵を描いたりしてる。紙もペンも持ち歩いててよかった。
嘘はついてないけど、言ってないことはある。違法奴隷商なのは予想してたしなんとなく感じてるだろうけど、相手が貴族だけじゃないことは言わない方が良いと思った。お隣の帝国が関わってるなんて知らない方がいい。知る情報は少ない方が身のため。
ちゃんと説明してないけど、私も魔法を使う。箱が運ばれた後なら移動する時に壁を作るし、部屋にこもるならドアを土壁で塞いで入ってこれないようにする。
それぞれ身につけてるアクセサリーを確認。防御もあるしリングで居場所もすぐに分かる。今回ナイフをワンドとして使うから、しっかり握れるように右腰に着ける。土属性と相性がいいから、土魔法が使いやすいと思うんだ。
みんなとのんびり過ごしたら夜ご飯が運ばれてきた。いつものメニューだけど心なしかほんの少しだけ豪華に見える。野菜が多かったりパンがふわふわだったり。
「最後の晩餐ってか?」
「不吉なこと言わないの。死ぬわけじゃ無いんだから。」
ほんとに、やめてくださいロイさん。さすがに商品である私たちを殺すことはないと思います。ないと思いたい。
〈リン、腕に着いてるやつの鍵は手に入れた。解除可能だ〉
〈ほんと?よかった!これ鍵で外せるんだね、魔力に反応してるんだと思ってた。ぱっと見鍵穴とかないし着けられた時は一瞬だったし。〉
〈外すのは指定者の魔力認識でしかできないが、着けるのは誰でも出来るそうだ。今回は犯罪目的の使用だから緊急用の鍵を使うらしいぞ。指定者が誰か分からんし、私が壊すと言ったら反対されてしまった。〉
〈ディアこれとれるの?〉
〈凍らせるか噛み砕くか許容量以上の魔力を流せばいけると思う。〉
〈それ私まで木っ端みじんにならない?〉
〈わからん。と言ったら断固拒否された。〉
〈さすがに腕まるまる凍るとか魔力で失神するとかは嫌だよ。〉
とんでもないことを言うもふもふである。契約してて耐性があってもディアのぶっ飛び魔力に当たりたくはない。怖すぎます。
〈アイラさんのも一緒に外せるんだよね?〉
〈もちろんだ〉
〈ありがとう。私たちは少し寝るね。〉
〈あぁ、おやすみ。〉
ご飯を食べ終えたので、全員布団に入る。早い時間なので寝れるか心配だったけど、すやすや聞こえるので大丈夫だったみたい。私も寝ようと思ったんだけど、お昼寝したからなのか興奮してるからなのか全く眠くない。
意味も無くリングやアクセサリーを鑑定して遊んでたら屋敷内が騒がしくなった。時間はまだ10時くらいで予定の時間までは5、6時間ある。
〈リン、緊急事態だ今すぐ起きろ〉
〈起きてるよ、何があったの?〉
〈バカ貴族が乗り込んできた〉
〈はい?〉
〈前からリンを欲しがってた貴族だ、何があるか分からんから全員起こして状況を逐一報告しろ。場合によってはこちらのメンバーと念話を繋ぐからポーションの準備をしておけ〉
とりあえずみんなを起こして状況を説明。狙われてるのは私だけだと思うけど、危険があれば守ると約束。味のない初級ポーションを3人に1本ずつ隠し持っててもらう。
大きな足音がして入ってきたのは40代くらいの貴族男性と執事さん風のダンディなおじさまに、若い貴族男性。若い男性の方が怒りながらもアワアワと焦ってる様子。
何があったんだ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます