第111話 長い1日のはじまり

連れて来られたのが深夜であれこれやって寝たのが2時過ぎ。人の気配で起きた現在の時刻、7時半。とんでもなく眠いリンです、おはようございます。


ドアから入ってきたのはメイドさんで、食事を持ってきてくれたらしいんだけど時間はやすぎないかな。


次々にご飯が置かれ、何事も無かったかのように出て行った。机の上には柔らかそうなパンとサラダにソーセージ、スープとオレンジと人数分の水差しにコップ。部屋もそうだけど、食事も少し豪華になった。


スコーンやクッキーの残りが少なくなってたので、一安心。みんなが起きてくるまで時間がありそうなので、念のため全部の鑑定をしてから食事を神様カバンにしまう。毒で即死も嫌だけど、変な薬でじわじわ苦しむとかは嫌なので。ここにある分は大丈夫でした。


〈ディアおはよう。〉

〈あぁ、起きたか。はやいな〉


〈メイドさんがご飯持ってきてくれて、気配で起きちゃった。〉

〈こっちは朝方に交代した。戻ったやつらで証拠集めをするそうだ、叩けばいくらでも埃が出そうだと喜んでた〉


何をやってたんだろうね。人身売買は確定で、何かしら不正してるとかなのかな。こんな貴族なんて世のために潰すべきだと思います。


のんびり会話しながら身支度を整えてソファーに移動、しっかり水分補給をする。ふとディアのもふもふ成分が足りない、と思ってしまった。起きてもふもふするのが日課だったし、なんなら一緒に寝てたもふもふ。寂しい。帰れたら思いっきりもふらせてもらおう。


〈リン情報が入った。明日、日の出前に闇商人へ引き渡されるそうだ。動くのは取引を確認してからになる。〉

〈動きもそうだけど、情報入ってくるの早かったね〉


〈すでにこっちで調べていたんだろ〉

〈私はどうしたらいい?〉


〈作戦が決まり次第報告する。動くのは明朝みょうちょうだろうからしっかり休んでおけ〉

〈分かった〉


のんびりから一瞬で思考を切り替える。眠くて頭が回らないのは怖いので、ご飯を食べたら仮眠をとりたい。夜中には起きていたいので、早めに寝て調整しよう。


ちょっとだけ怖いと感じる。みんなを信用してるし私だって全力で抵抗するけど、ナイフや魔法から逃げられるか分からない。日本じゃ魔法なんてなかったしね。


「はやいね、おはよう。何かあった?」

「おはようございます、みんなが起きたら説明しますね」

「そうね、それにしても眠いわ」


大きなあくびをしながら洗面台に向かうアイラさん。どうにか3人だけでも傷一つ付かないように守りたい。


アイラさんが戻ってきたタイミングで、双子が起きた。みんながそろったら朝ご飯を食べます。ここ数日まともな食事をとってなかったから、みんな喜んで完食した。


「それで?何があったの?」

「わたし達は明日の日の出前に、闇商人へ引き渡される予定だそうです。なので取引を確認したタイミングで仲間が動きます。作戦はまだ決まってないので、分かり次第すぐにお伝えします。」


「闇商人か。」

「人身売買、違法奴隷…」


双子が暗い顔になる。違法奴隷まで考えたことがなかった。こっちの世界では正規の奴隷商がいるし、奴隷の売買は合法。それでも法律を守らない人はどこにでも存在する。なじみがないから頭にもなかった。


「絶対に守ります。連れて行かせません」

「なんでリンが守るんだよ。お前だって俺達と一緒でただの子どもだろ。」


ただの子どもではないんけど。私って何なんだろうね。この世界の人間じゃないし、17年分の記憶がちゃんとある。体がこっちの世界用だっただけで、生まれも育ちも地球の日本。保護者はいっぱいいるけど、レアキャラな迷い人だから。


「今すぐやることもないんでしょ?ならゆっくりしようよ。夜になれば起きなきゃだろうし、仮眠もとってさ。」

「そうですね。先に寝てもいいですか?あまり寝てないのでだいぶ眠くて」


「寝て寝てー」

「もし食事が運ばれて来たら先に食べててください。」


「わかった。おやすみ」

「しっかり寝ろよー」

「おやすみなさい。」


ちょっとだけ沈みかけた気持ちを浮上させて、今日と明日のことに集中する。うじうじ考えたってどうにもならないもんね、今は無事に帰ることだけ考えよう。


お布団に入るとすぐにまぶたが重くなり寝ることができた。


その間子どもたちは大人しく遊んだりゴロゴロしたりと、自由にしつつリンがしっかり寝れるように気を遣ってくれていた。優しい子たちです。



__________________




〈リン、作戦が決まった。〉

〈んー?でぃあ?〉


〈すまん、寝てたか〉

〈ちゃんと寝れたし大丈夫、どうなった?〉


起きて座ったままディアの話を聞く。


いきなり起きたのにフリーズしている私を3人が不思議そうに見てるんだけど、手をふって大丈夫と伝えて話に集中。


タイミング、動き、やるべきことや、もしもの場合にどう動くかを全て教えてもらった。子どもたちを確実に守りつつ最小限の人数で攻め込む作戦。


私はみんなを守りつつ、もしものことがあれば内側から崩壊させる役目。ディアと連携をとり外の様子を把握、臨機応変に動けるようにしとくらしい。とんでもなく難しい気がするんだけど、大丈夫なのだろうか。


私は魔法をバンバン使うことにする。邪魔なリングのせいで魔力が半分に減らされてるので、ポーションを飲んで回復させつつ使いきらないように気をつける。残りのMPポーションは味付きが1本と、味なしが2本。使うタイミングをちゃんと考えないとだめだね。


もしもの場合はディアが魔力を分けてくれるって言ってたけど、それは最終手段。危なければお願いするけど作戦には入れません。頭の中を整理したので、みんなに報告をします。


忙しいな。

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