第110話 貴族って・・・?

地下室に放り込まれて3日が経ちました。今の時間は夜10時。朝起きた時にディアから今日にでも動きがあるだろうと言われたので、準備を整えて待機しています。みんなには何も言ってないのに全員起きてて雑談中。


〈人が入るぞ、気をつけろ〉

〈了解〉


わいわい雑談しながら、常にディアから外の状況を教えてもらってた。私の雰囲気の変化を感じたのか、みんな静かになる。表情に出しすぎたかな。


「何かあるんだろ?笑ってるけど目が真剣だ。」

「ここ数日ずーっと一緒にいたんだから、あたしたちは騙せないよ。」


詳しくは聞かないから自分たちにも教えてほしいと言われた。知らない方が安心できると思ってたけど、下手に隠されたら不安になるよね。


「黙っててごめんなさい、仲間から外の情報を聞いてました。今から誰か入ってくるらしいので、警戒してください。」

「おーよ。」

「抵抗する?大人しくしとく?」


「今は大人しくしています。これからどこかに運ばれる可能性があるので、動くとしたら目的地に着いてからで。」

「りょーかい。」


小声で話してたら、ドアのカギを開ける音がした。入ってきたのはリューリーさんとジゼルさん、失礼な貴族と知らない商人風の男が2人。私とアイラさんはジゼルさんに、双子はリューリーさんに抱えられ、2人1組で箱に入れられた。街から出た時のより大きいけど、やっぱりいろいろ付与されてて声は外にもれない仕様。


〈ディア聞こえる?〉

〈また箱か〉


〈ご名答。前のより大きいけど付与は同じみたい。双子の兄妹が別の箱に入れられたから、なにかあったらよろしくね〉

〈リンが最優先だ〉


〈私は魔法が使えるんだよ。一緒にいるのも魔法が得意な子だし大丈夫〉

〈…伝えた〉


ナリアルさんたちに伝えてくれたみたいなので、大人しく運ばれます。神様カバンから布団を取り出したらアイラさんと一緒にくるまる。寒いので。


冒険者用のカバンをロイくんに預けたので、あっちも大丈夫だと思う。毛布やクッキーなどは一通り詰め込んであるし。最初はアイラさんに渡そうと思ったんだけど、双子はセットで動くだろうからとロイくんになった。ナイス判断だった。


「この箱、外に声がもれない様になってるので話しても大丈夫ですよ」

「そんな仕掛けがあったのね。そりゃ叫んでも気づかれないわけだ」


叫んだのか。喉が無事でよかったです。


「他にも認識阻害に魔法耐性付きです。こうやって子どもを運ぶ時用なんでしょうね。」

「最低なやつらだね。お貴族様は才能の無駄遣いが大好きなのかな。」


なかなかに辛辣。アーベンティス家みたいな良い貴族もいるんですよ、今は言えないけど。


ガタゴトと運ばれること2時間ほど。寝ないように座っておしゃべりをしてたら動きが止まり、箱が持ち上げられた。


〈別の貴族の屋敷に着いた。〉

〈近かったね。どの辺なの?〉


〈王都の中だ〉

〈はい?誘拐した子どもを王都に連れてきたの?小さい町とかじゃなく?〉


〈こっちの奴らも呆れてる。今回の件で貴族を2つは潰せるらしい。〉

〈わー、たいへんそー〉


ちょっと遠い目になったのは許してください。アイラさんに説明したらひとこと。ただのバカね、と。同感です。


〈屋敷の中に入った。ここからはどこに運ばれるか見えない〉

〈りょーかい。警戒しとく〉


箱が開けられて出た場所は、高い位置に小さな窓があるだけの簡素な部屋だった。たぶん地下では無いと思うんだけど、分からない。大きなベッドが2つ並んでて、テーブルもソファーもあって子ども4人なら余裕で生活できそうなくらいには広い。全員が運び込まれてドアにカギがかけられた。


「部屋に何があるか確認しよう」


アイラさんの言葉にそれぞれ気になる扉を開けていく。


〈ディア、ここ魔法かかってる?〉

〈屋敷全体に結界が張ってあるそうだ。外からの侵入防止と、軽い魔法攻撃を弾く程度らしい。〉


〈内側からだったら破壊できそうだね〉

〈まぁ出来るが、攻撃的だな〉


外からが難しければ内から仕掛ければいいと思うんだ。ポーションはまだあるし、変な腕輪があっても魔力は500弱ある。やっちゃっても許されるでしょ。


〈こっちのメンバーが代わるみたいだぞ、長髪はギルドに帰って今いるやつらと先に王都へ来ていた奴が交代だと。デカいのだけ留守番らしいが〉

〈レイさんがお留守番?〉


〈あれは尾行に向かんだろ。〉

〈確かに。帰るみんなにありがとうって伝えて、ここまで大変だっただろうから。全部終わったらディアには豪華な料理ごちそうするからね。〉


〈伝えた。気にするな、王都で美味しいもの食べよう、だと。〉

〈楽しみにしてる!〉


ユシリスさんが街に戻って、ガイトさんとアルダさんが来るってことであってるかな。私は地下でも布団があったし普通に寝れたけど、尾行組はまともに休めてない気がする。ゆっくりして欲しい。


部屋の探索に加わって分かったことは、トイレと洗面台、なんとシャワーが完備されてて前の牢屋みたいなところよりかなり快適な場所だということ。深夜だしいつもなら寝てる時間だけど、みんなアドレナリン出まくってて眠くないからと交代でシャワーをあびることにした。自由です。


服は着てるのしかないので、全員分クリーンをかけて綺麗にしてからお布団に入る。ベッドは2つあるけど子どもなら1つにまとまって寝れるので、カバンから布団を取り出して団子になって寝ます。ついでにカバンを返してもらった。無いと違和感があったので。


それにしても、なんで王都に運ばれたんだろう。アイラさんじゃないけどお貴族様ってバカなのかな。普通なら持ち物全部奪うとかすると思うんだけどカバンもナイフも無事、なんなら布団持ってきちゃってるし、クッキーもポーションも取り出し放題。


使ってる道具はプロ仕様っぽいのに、ちぐはぐ。考えても分からないので今は休もうと思います。


あと何日この生活なんだろう。

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