第109話 仲良くなりました

それぞれにポーションの説明をしてコップを渡したら、治療のためにロイくんに近づく。ジリジリ近づくとジリジリ逃げられた。なぜだ。


「これポーションだよな?高いだろ。」

「なんか高そうなクッキーもいっぱい…」


双子が困った顔でいらないと首をぶんぶん。アイラさんも隣で頷いてるんだけど、ポーションって高いんだっけ。材料費がかかってないから忘れてた。


〈ポーションは高価だからいらないって言われちゃったの。どうしたらいい?私が作ってるって言っちゃだめだよね?〉

〈…冒険者として活動してるから問題ないと言え。プレート見せたらいいそうだ。〉


なるほど。カバンからプレートと防御系アクセサリーもろもろを出して、ナイフも腰につける。装備を見せて冒険者プレートを見てもらったら信じてはもらえたけど、やっぱりいらないと言われる。


「あたしもこのままで困らないから、いらないよ。ポーションは不味いって聞くし。」


アイラさんが後半ボソッと言ったのを聞き逃さなかった。高いのもあるんだろうけど、不味いのは飲みたくないよね、大人でもキツイって聞くし子どもなら当然だ。美味しいの作ってよかった。


「におい、かいでみて。」


3人が恐る恐るコップの中身の匂いをかぐ。中身はMPポーションがレモンティー、初級はペッシュ、中級はアポとピーニャのミックス。飲みやすいようにはちみつも入ってるから普通に甘い香りがする。


「知ってるのと全然違う。これなんだ?ただのジュースか?」

「ううん、味が付いてる飲みやすいポーションです。これが普通のやつです。」


腕にかけるために持ってた味の無い中級ポーションを渡すと、しかめっ面になった。あく抜きしても青臭いんだよね。


「こんなのどこで買えるんだ?お前どこかのお嬢様か?」

「お嬢様なら冒険者にはなれないよ。」

「それもそうか。」

「でもどこで買ったか気になる。盗んだわけじゃないだろうし」


ロイくんとアイラさんから疑いの目が。作ったとは言えないし、領主様の養子ではあるからお嬢様っていうのも間違いでは無いんだけど、でも名前出すのも違う気がする。


「ポーション作ってる人と知り合いで、もらったんです。味の感想を聞かせて欲しいって。だから飲んでみてどうだったか教えてください。」


いい機会なので感想を聞いてみたくなりました。大人には飲んでもらってるけど子どもだと感じ方が違うかもしれないからね。作った人は言えないけど効果は確認済みと説明。納得してもらえたかな。


落ち着いた瞬間、問答無用もんどうむようで腕をつかみポーションをぶっかける。驚いたり慌てたりしてももう遅いので、大人しくしてください。


ロイくんの真っ青に腫れ上がった腕がどんどん治っていき、動かせるようになった。中級ポーションすごすぎる。私が腕を観察してる間にポーションを飲んだらしく、背中の痛みも引いたと喜んでる。痛かったのか。


みんなそれぞれ飲み終わったらお食事タイム。薬草クッキー以外はおかわりもあるので減ったら出してを繰り返した。


食べ終わって落ち着いたので寝ます。忘れてたけど今は深夜なので、お腹がいっぱいになると眠くなった。何かあってもいいように、私が入口近くに寝ることにした。もしものことがあっても動けるし、小さい換気口があるけどあれは子どもでも通れないので気にする必要なし。入口だけ見張っておやすみなさい。


__________________



人の気配で起きたらメイドさんがご飯を運び込んでるところでした。こっそり時間を確認したら、今は8時すぎ。みんなはまだ寝てるみたい。拉致されてから人の気配に敏感になった気がする。地球にいた頃はもっと分かったんだけど、優しい人たちと暮らし始めてサボってた感じ。相変わらず勝手に気配を消しちゃうのは変わらないけど。


「次は夜にお持ちしますので。」


夜のうちにクッキーやらポーションやらは全部片付けてあるので、机には今置かれたパンと干し肉とアポが人数分。移動中に食べてたのも同じメニューだったけど、決まりでもあるのか。こちとら成長期だぞ。


目も覚めたので身支度をする。洗面台とトイレはあるので水を出さなくていいけど、さすがにこの水を飲むのは怖いので水分補給は魔法に頼ります。外用の水筒に入れておけばみんなも飲めると思うんだ。


〈ディアさんおはよう。寒いけどみんなは大丈夫?〉

〈おはよう、こっちは心配ない。かなり魔力が減ってないか?〉


〈うん、ちょっとだけね。〉

〈回復しておけ。〉

〈はーい。〉


ディアとお話しながら味のないMPポーションを飲んでみた。結果、大量に水をがぶ飲みするはめに。これ戦いながら飲むとかどんな拷問ですかね、なぜ味の改良しようと思わなかった?


1人そわそわしてたらみんなが起きてしまったので、ご飯を食べながら自己紹介をすることに。アイラさんは小さい町のお花屋さんの看板娘で11才。双子は7才でアイラさんとは別の町の端の方で育ったらしく、同年代の子どもと遊んだことがあまりないらしい。双子ってだけで狙われることもあるんだって。


私も自己紹介したんだけど、8才と言ったら驚かれた。冒険者になれるのが6才以上だから、ギリギリ6才になったくらいか誤魔化ごまかしてるんだろうと思われてたらしい。双子にすら幼い子だと認識されてたことにショックを受け、しばらくいじけました。


その後はポーションについて聞いた。効果はあって、ちゃんと魔力も体力も回復してるしダルさもないそうだ。味はジュースみたいにおいしかったけど、果実水を飲み慣れてるからちょっと甘味が濃すぎて喉が渇きそうだと言われた。そういう意見はとっても助かります。


MPポーションはすっきりしてて飲みやすかったと喜んでもらえた。ただ、これを飲んでしまうとマズいポーションを飲めなくなりそうだと別の心配が出てきた。できることなら売りたいけど、これは大人に任せることにします。


あとはこんな味が欲しいとか、どうせ子どもが飲むのなんて半分の量だったり少量ずつなんだから、小さい瓶で売ってくれたらいいのにとか、安ければいっぱい買えるのにって話になった。子どもからの視点で大事だと思うのです。


ポーションの話が終わったらそれぞれの町の話や魔法の話、大きくなったらどんなお店で働きたいとか将来の夢みたいな話になった。学校で友達とわいわいしてるみたいでとっても楽しい時間でした。

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