第100話 よもぎクッキー

午後になったのでクッキー作りの始まりです。生地はいつもと変わらないのでお任せするんだけど、薬草クッキーは自分でがんばる。


初級の薬草は大葉っぽいから使えなくもないんだけど、上級薬草はよもぎ。よもぎ餅っておいしいじゃん?クッキーにしてもおいしいと思うのです。ってことで上級薬草を使います。贅沢だけどわんさか育ってるし欲しかったら畑から採れるし問題なし。たぶん。


朝ポーションを作る時に一緒に用意したゆで薬草を細かく切って、すりこぎで潰していく。妖精さんたちは小さいからなるべく葉っぱの形が残らないようにペースト状にしたい。・・・魔法使えば良いのでは?なぜここに来てすりこぎ?


疲れるからトルネードに変更。ボウルに入れてグルングルン回して、少し水を入れてさらに回すと無事にペーストになった。これを小麦粉に混ぜたら水分量を確認して、足りない分をたして混ぜる。渋みはないけどちょっと青臭いから甘さは強めで、はちみつと砂糖を両方入れる。完成したらまとめて四角い棒状にして、みんなが作ったものと一緒に保管庫に置いておく。


「何か手伝う?」

「いいの?」

「あっちは物騒な話で盛り上がってるし、2人もいたら大丈夫でしよ。」


フランクさんとナリアルさんの話に耳を傾けてみると、暗器や忍び込む方法の話をしてた。あれかな、アサシン系の人たちだからしょうがないのかな。見た目は優しいお兄ちゃんとおじ様なんだけど。


「これからジャムとシャーベット作ろうと思ってるの。混ぜるの手伝ってくれる?」

「任せろ!」


ジャム用のブルーベリーとペッシュ、ピーニャたちをそれぞれ鍋に放り込み、数滴のレモン果汁とはちみつ、ほんの少しお水を入れて火にかける。焦げないように混ぜる役目はアルダさんに任せて、私はシャーベット作り。ピーニャとペッシュをサイコロ状に切ったらブルーベリーはそのままで、それぞれミルクと少しだけ砂糖を入れて、ディアさんの元に。


〈この3つを凍らせてもらえる?カチカチにならない程度に〉

〈難しいな。良きタイミングでストップをかけろ〉

〈はーい〉


斜めにして確かめながら凍らせて、終わったら次を凍らせる。わっせわっせと全部凍らせたら、急いで別のボウル3つを準備して中に氷を出してもらう。その上にシャーベットが入ったボウルを乗っけて冷やしつつかき混ぜる。手が足りない。なぜ一気に全部作った私。


「リンちゃん、いい感じにドロッとしたよ。潰れてもよかったんだよね?」

「うん、ありがとう!食べやすければなんでもおっけー!」


ディアに冷ましてもらったら保存容器に入れておく。


「・・・忙しそうだね。」

「一気に始めちゃった自分を恨み始めてます。」

「あっははっ勢いに任せちゃったかー」

「できると思ったんだもん。」


ぶーたれたらもっと笑われて頭をポフポフされた。今の私は3つのボウルを抱えてディアの前に座り、休みなく腕を動かしている状態。ちなみにディアには軽く冷気を出してもらって表面が溶けないようにしてもらってます。


「やるよ。これ混ぜればいいの?」

「滑らかにしたいの。かなり力仕事です。」


「おっけー。やってるから休んでていいよ。」

「ありがとう。ディアもお水出すね」


お言葉に甘えてディアにお水を出したら水分補給をしつつアルダさんを観察。年の近いお兄ちゃんって感じだけどさすが上級冒険者、腕の筋肉がとんでもなくかっこいいぞ。


無事に完成したら冷凍保管庫に入れて終わり。クッキーの仕上げをするために戻ると、すでに大量に焼かれてた。


自分で作った薬草クッキーと、作ってもらった生地をもらってジャムサンドクッキーを完成させる。といっても切るだけなんだけど。薬草クッキーは厚めに、ジャムクッキーの方は丸と四角、楕円に形を整えたら薄めに切って焼いてもらうだけ。


焼けたら粗熱をとってジャムを挟む。丸はペッシュ、楕円はピーニャ、四角はブルーベリー。見た目で味が分かる方がいいと思ったんだ。


「王都で売っても遜色ないレベルですね。ジャムも手作りなんて素晴らしいです」

「心配かけちゃったギルドの人たちに持って行こうと思ってるんだけど、喜んでもらえたら嬉しいな。」


「心配いらないと思うよ?」

「大喜びだと思います。」

「「「僕(私)も食べたい(です)」」」


わお、いっぱい作って良かった。渡したいのは4人だけだし、みんなの分もちゃんとあります。よもぎクッキーも含めて1つずつ実食。ジャムサンドクッキーは薄いカリッと食感にねっとりとしたジャムが最高においしい。ディアの口にも突っ込んでみる。うん、おいしいみたいでよかった。


よもぎクッキーはサクッとしててほんのちょっとだけ薬草の風味があるけど、甘くしてあるし普通においしい。これは緑茶が飲みたくなるやつです。妖精さんが食べなくても私が食べるよこれ。


〈リン、鑑定しろ〉

「へ??」


〈草を混ぜた方だ。今すぐに鑑定しなさい〉

〈ふぇっはいっっ〉


珍しく語気強めに言われたので急いで鑑定。


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名前 薬草クッキー(上級)

特徴 初級ポーション程度の回復力がある。

備考 味よし効果よし。(よく思いついたね?)

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「なんでっ!?錬金魔法使ってないよ!?魔力込めてないよ!」

〈おもしろいな。〉


さっきの空気はどこへやら、クククッと楽しそうに笑うディアさん。


私の声を聞いてナリアルさんも鑑定したんだろう、フランクさんとアルダさんに説明したあとみんなで苦笑い。妖精のためだし許してください。


「まぁ配り歩くものでもないし、ここだけでならいいんじゃない?」

「一応リーダーには報告しますが、外に出さなければ問題にはならないと思いますよ。」


一安心です。夕方になっちゃったからこのまま夕食の準備をする。お疲れ気味なのでお肉を焼くだけで終わり。ソースを増やして楽しんでもらう作戦です。


カルダさんはやく帰ってこないかなー?

ピアス楽しみ!






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いつも読んでいただきありがとうございます‼

みなさまのおかげで無事100話突破できました。

今後もよろしくお願いいたします。

うさ

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