第99話 おこもり最終日

フランクさんとディアの間でおはようございます。小さくなったディアを抱きしめてディアごとフランクさんに抱きしめられているリンです。


〈おはよう。ごめんね、苦しくなかった?〉

〈問題ない。〉


「おはよう。よく寝れた?」

「おはようございます、いっぱい寝てスッキリしてるよ」


今日は午後からクッキーをいっぱい作る約束をしているので、朝は畑に行ってからポーションを作る。身支度を整えてキッチンに行くと、フランクさんが朝食の準備中だった。


「プレーンと薬草練り込んだクッキーは妖精さん用に作るんだけど、ギルドの人たち用はどんなの作ったらいいと思う?」

「いつものでいいんじゃないかな。あっ、小腹を満たせる用に木の実ゴロゴロと入れた食べごたえのあるやつもいいかもしれないよ。仕事中につまめるのがあると嬉しいんじゃないかな。」


「そっか、あとはドライフルーツのもあるといいかも。材料足りる?」

「午前中に買い物してくるから大丈夫だよ。僕もクッキーやケーキ作るのが楽しくて、使えそうなもの探すのが楽しいんだ。また一緒に行こうね。」


「うん。またあの不思議な商人さんのところにも行きたい。」

「あっはっはっ、あそこはいいよねー!またおもしろい物売ってそうだし絶対に行こうね」


頭をぽんぽんされる。こういう約束があると頑張れるって知ってるんだろうな。優しい人たちだ。


朝食をとったら畑に行って薬草の採集と水やりをして、あとは妖精さんとの触れ合い。きゃっきゃと飛び回るお花の子に薬草を食べるのか聞いてみたら、たまに口にするとのこと。まずいから少しだけなんだって。クッキーに入れてみると言ったら喜んでた。少しだけ体調が良くなるらしい。


お皿にもお水を出したらそのまま小屋に入ってポーション作り。


中級と上級、解毒と上級解毒、MPポーションを作って棚に並べたら味なしと味ありを初級含めて全種類3本ずつ持つ。神様バッグにいつの間にかカモフラージュ用の枠が増えていて、そこに入れた物は外からも見えるような仕組みになってた。私は手を入れたら切り替えられるので、味のない初級と解毒とMPポーションを見せかけの方にいれる。味ありと味のない上級は無限の方に入れて隠しておく。


みんなに買ってもらった冒険者用の方には中級と上級、解毒を2本ずついれて予備を増やす。即死じゃなければなんとかなるはず。


〈あと必要な物はあるかな〉

〈大丈夫だろう。心配するな、離れて声が聞こえずとも気持ちは伝わる。耐えられないと思えば暴れたっていい。ここにいる者たち全員がリンの味方だ、忘れるな。〉


少しだけ気持ちが落ちていたらしく、ディアに甘える。ここに来てひと月以上経つけど楽しい思い出しかない。これからもこの生活を続けられるように私も全力で抗う。


〈ごめんね、ディア強いのに一度は負けてもらわなきゃいけない。私たちはわざとって知ってるけど相手は出し抜けたって思うかもしれない。それがすごく悔しい。誰にも負けないのに。絶対に負けるわけ無いのに。〉

矜持きょうじなど捨てたから気にするな。どう思われようがリンが無事ならそれでいい。〉


抱き着いて顔を押し付けてグリグリとする。絶対に負けないのに一度は負けなきゃいかないのって、すごく辛いことだよね。今さら考えたって遅い。ディアを傷つける可能性を考えなかった自分に嫌気がさす。


不安定になってる。

パンッとほっぺを叩いて気合を入れたら動き出す。もうちょっとしたらお昼の時間だからお家に戻ろう。


〈王都でお土産買うの楽しみ。おそろいで使えそうなのあったらいいね。お皿も使いやすいのあるかなー、妖精さん用もあるからいろんなところ見に行こうね。〉

〈またデカい獲物でも獲ってくるか。〉


〈いいねー。皮は売ってお肉はいろんな焼き方していろんなタレで食べよう。お肉大好きだもんね!〉

〈リンの作るものはどれも美味い。〉


寄り添ってお家に入ろうとすると、フランクさんがシーツを干してた。お買い物行ってからお洗濯してたんだ。


ディアと一緒にお手伝いして、キレイに干せたらお昼ご飯。ピタパンに濃い味付けのお肉を挟んだケバブっぽいやつと、野菜いっぱいでさっぱりしたお肉のやつ。2つ食べたらお腹はち切れそうなくらい大きい。


ガイトさんとレイさんはギルドに行ってて、カルダさんはピアスを作ってるからいない。ナリアルさんとフランクさん、アルダさんとディアに私でちょっと静かなお昼ご飯。ガツガツ食べるメンバーが不在だからか、和やかな雰囲気です。


「お昼食べたらクッキー作るんだよね、僕も一緒に作ってもいい?」

「それなら私もご一緒したいですね。」


「んじゃあ君たちには生地を捏ねてもらおう。そこまで力はいらないけど量が多いからねー」

「わーいお願いします!いっぱい作れる!」


〈ディアにもお願いしたいことがあるんだ!よろしくね〉

〈任された。〉


これだけの人数がいたらいっぱい作れそうだし、新作があってもいいと思うんだ。貴族はビスケットにジャムをつけて食べるって聞いてから作りたかった、ジャムサンドクッキー。サリアさんたちに持って行くのにおしゃれで可愛くて、ちょっと変わったものを準備しようと思っていたの。


ジャムは売ってるけど、今日は自分で作ろうと思います。種類はブルーベリーとペッシュ、ピーニャの3種類で全部煮詰めて売ってるものより気持ち固めに作りたい。トロトロのジャムをクッキーに挟むと食べにくいし手も汚れるし仕事中には食べにくいと思うんだ。


材料は買ってきてもらったのでいっぱいある。さすがにお金を出したいと言ったらいろんなレシピを教えてもらってるからいらないと言われた。町に出たら材料買い込んでいっぱい恩返ししよう。


午後は大量生産工場になります!

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