第98話 信頼と安心

ご飯も食べ終わったので、おとり捜査の話し合い。実はみんなもこのままじゃいけないって思ってたらしい。でも私が動かなきゃいけないし、危険もあるし怖い思いをさせたくないと堂々巡り。私が突っ走ってよかったじゃんね?


「さて。動くとしたら明後日からになりますが、我々はどうしましょうか。」

「1人か2人が尾行だろうな。他のやつはそれぞれ街で行動して普段通りを装いつつ、警戒。何かあればすぐ動けるように常にフル装備持ち歩く。」


なんか真剣な話し合いなんだけどワクワクする。痛いのは嫌だけど、ドラマみたいで楽しい。これは精神苦痛耐性が仕事してるのかな。


あっそうだ、妖精さんのクッキー。隣のフランクさんの服をツンツンする。


「妖精さん、クッキー食べたんだけど何も入ってないのがいいんだって。作るの手伝ってくれる?あとサリアさんたちにもクッキー渡したいの。明日いっぱい作ろうと思ってて。」

「いいよ。って、妖精は食事するの?」


「水だけでもいいみたいだけど、クッキーあげたら美味しいって言ってた。薬草クッキーでも作ってみる?」

「薬草クッキーか、面白いこと考えるね。しばらく困らないくらいいっぱい作っておこうか。」


よかった。どのくらい食べるか分からないけど、いっぱいあれば安心。


「そこのポヤポヤ2人。なーんでクッキーの話をしているのかな?危機感ないのかな?ねぇリン、フランク?」


はい、ガイトさんに怒られました。他の人は苦笑いだしディアなんて呆れて寝てる。

いや、ぽやぽや2人ってなんだ。


「ごめんなさい。」

「妖精がクッキー食べたらしいよ、新発見だね。」


謝った私とマイペース全開のフランクさん。それは聞いてないと思うんです。あ、妖精について報告してって言われてたからこれも必要なのかな?そういうことにしよう。


「そうなのですか?それは興味深いですね。」

「お前もなにしれっと話に加わってんだよ。」


「いやぁ、リンさんを見ていると何故か危機感が全く無くてつられてしまいました。不思議ですね。」

「危機感もなにも。だってディアもみんなもいるし、絶対にどうにかしてくれるでしょ?わたしはただ歩き回って捕まればいいだけだし、なんかちょっと楽しみ。」


ねっ?とディアをなでると呆れつつ頷かれた。ここにいる人たちに勝てるのなんてドラゴンくらいかな。ドラゴンにも勝てるのかな。1人だけなら苦しいだろうけど、チームだしそこにフランクさんもいるし無敵じゃん。私が心配するのは痛かったら嫌だなーくらいだよ。


「そこまで信頼されてるなら、期待に応えないとね。」

「えへへ」


アルダさんに頭をぐりぐりされる。そしてぎゅーっとされたと思ったら横にヒョイッと渡されて、次はカルダさんに抱きしめられる。バケツリレー方式で次から次に横に流され、全員に抱きしめられることになった。なぜだ。


最後はディアのお腹近くに降ろされて、自らディアに抱きつく。これは条件反射みたいなものなので。


「捕まった後のことを話しとくぞ。恐らく王都か別荘に連れて行かれるはずだから、しばらくは大人しくしていてくれ。最初は抵抗して暴れてもいいけど暴力をふるわれる可能性があるから気をつけて。」

「うん。」


「俺達は確実に地獄に落とせるように動く。チームの名前も家族としても力は何でも全て使って大事おおごとにする。」

「うん、信じてる。」


「近くにいればディアと話せるだろうから、可能なら状況を教えてくれ。もし危険な場合はすぐにでも突入するから我慢せずに伝えること、いいな?」

「はい。ディアよろしくね」

〈あぁ。〉


少し離れててもディアとは会話ができる。怖くてもディアを近くに感じることができれば、なんだって耐えられる。この世界で得た私のナイト兼相棒は心強すぎる。


「終わったら王都を観光して帰ってこよう。ここよりもっと栄えてて楽しいよ、美味しい食べ物も多いし変わったお菓子も売ってるし。お土産いっぱい買おうね。」

「楽しみ!お金いっぱい持たなきゃね!」


こことは違うものがたくさん売ってるはず。妖精さんのお皿とディアのお皿を王都で買おうかな?おしゃれなのがあるといいな。楽しみがあれば頑張れるものなのよ、ワクワクするね。


「今日はフランクと寝てもらうが明日からはまた1人で寝るようにしてくれ。ないと思うが、侵入をねらってる可能性もあるから…ってこれが1番囮っぽいな。大丈夫か?」

「うん?今さら怖いも何もないよ?」


「強いな。」


レイさんが優しく微笑んでると思ったらアルダカルダ兄弟に頭をぐちゃぐちゃにされた。お兄ちゃんたちはとんでもなく優しいのです。


そして父ポジションのフランクさんはベッドメイクに走りました。お部屋キレイだったよね?急ぐことないと思うよ?


「今日はここまでだな。リンは先に風呂入ってこい。そろっと眠いだろ」

「うん、ちょっと眠い。行ってきます」


リンがお風呂に入ってる間はまた大人の話し合い。どう動くかの確認と、どこまでやっていいかの確認。優しいお兄ちゃんたちは、とんでもなく怒っているのです。


王都に行くのもただの観光ではなく、王宮に乗り込むから。アーベンティス家の人々も加わった最強集団で盛大にキレ散らかす予定なので、連れて行かれるのがどこだとしても王都に行くのは確定なのだ。


リンは楽しみにしているようだし、サクッと終わらせて思う存分王都を満喫してもらいたいので手加減はしない。


紅嵐の盾+フランクにディア、さらにはアーベンティス家を敵に回したらどうなるのかを馬鹿たちは知らないようなので、いい機会だし実際に見てもらおうというわけだ。


ちなみにディアも話し合いに参加中。どこまで破壊していいかと聞かれたメンバーは苦笑いしつつ、証拠を消さない程度ならと説明。得意魔法は氷なので紙類が消えて無くなることはないし、多少やりすぎても問題ないだろうと思うディアさん。ブチギレです。


ピアス楽しみ。

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