第95話 増えた称号

「さて、まずはリンさんに妖精についてお話しますね。私たちにとっての話になるので、実際の生態などはディアさんから聞きましょう。」

「はい。よろしくおねがいします。」


リビングに戻って始まったのは、ナリアル先生の妖精講座。ディアは小さくなって足元で寝てる。もふもふ


先生の話によると、妖精はほとんど幻の存在らしい。見たことのある人が昔にいたのか文献には載ってるけど、実際にはどこにいるかも分からないんだって。普段は見えないんだもん幻の存在にもなるよね。


「たまに家の中の小物が動かされていたり夜中に笑い声が聞こえたり、悪いことをすると小さなバチが当たることがあるので、それらの不思議な現象はすべて妖精のいたずらと言われています。」


お化け屋敷みたい。ポルターガイストみたいな?怖いけど、あの可愛い子たちがやってると思うとなんか癒やされる。


〈いたずらでもあるし、実際にバチが当たってることもある。好きな場所を汚されたとか気に入ってた人間を傷つけられたとか理由は様々だが、あいつらは精霊魔法が使えるしいろんなことをやらかす。〉


「精霊魔法ってなに?」

「精霊魔法?それは私も知りたいです。」

「知りたい知りたい」


あ、ディアの声みんなに聞こえてなかったのか。私の言葉にナリアルさんとカルダさんが反応した。と思ったら、みんな前のめりになってた。興味津々みたいです。


〈精霊魔法は我々魔獣や人が使う魔法とは違って、魔力を使わずに発動する精霊・妖精のみが使える魔法。やつらは自然と共にある存在。草や木、水、土などを操る能力がある。〉


「精霊もいるの?」

〈いるが、人前には出ない。極稀ごくまれにエルフ族に祝福を与えるらしいが詳しくは分からん。〉


「エルフもいるんだね、この世界。祝福って何?」

「我々が知る祝福は、少し魔力が上がるとか別属性の魔法が使えるようになるといった感じですが。実際はどうなのでしょうか?」


〈妖精が好いた物に送る称号みたいなものだ。その者のためなら魔法を使うし小さな手伝いもする。見えない妖精が魔法を使えば近くにいる者の術だと思うだろう。〉

「……リンさん、ステータスを確認して下さい。今すぐ」


なんか怖い笑顔のナリアルさんに言われたら断れないので、うんうんと頷いて確認する。


−−−−−−ステータス−−−−−−

名前 リン

年齢 8才

職業 (未定)

HP 91/95

魔力 930/970

スキル 生活魔法(3/5)、風魔法(3/5)、土魔法(3/5)、水魔法(3/5)、鑑定(4/5)、錬金魔法(3/5)、精神苦痛耐性(4/5)、身体苦痛耐性(4/5)

備考 転生者 祝福を受けし者

−−−−−−−−−−−−−−−−−−


「備考に【祝福を受けし者】って追加されてます。」

「各自確認しましょう。」


私が祝福を受けたということは、みんなも受けてるはずなんだけど。仲間がいれば怖くない!


「スキルに【祝福(小)】が追加されてる。メインはリンで俺らはおまけみたいなもんか?」

「私もそうですね」

「「「俺(僕)も」」」


〈姿を見る、声を聞くための力を与えられたからだろう。人に当てはめればスキルになる。〉

「そういうことか。わたしは?」


〈祝福を直接受けている者は妖精に好かれた者。頼めば力を貸してくれるぞ。〉


仲間が増えたけどなんか違った!うん。諦めよう。

「妖精さんは草や木魔法が得意なんだよね。育ちにくいものも育つのかな?今度お願いしてみようかな。」

〈対価はリンの出したら水か肥沃な土を増やすことくらいだろ。〉


「お菓子は食べないかな?」

〈聞いてみたらいい。〉

「そうする。」


「今後のことについてですが…リンさんは妖精のところに行きますか?」

「えっいいの?」


「行きたそうにしていたので。決まったことは夕食の時にでも報告しますので、リンさんも彼らのことで分かったことがあれば報告してください。」

「わかった、行ってきます!」


いっぱい聞きたいことあったんだよね。お言葉に甘えてディアとお家を飛び出して畑に向かう。


入ると妖精さんたちが自由に飛んだりお水で遊んだりしてた。外で座る時用のシートを広げてディアはそこにいてもらう。ディア用のお水を出したら私は歩き回ってお話してくれる子に聞きまくる。


『リンの魔力は特別だよー』

『リンの魔力は心地いいんだよー』

これはなんで私に祝福をくれたか聞いた結果。


『この葉っぱが多いと嬉しいのー』

『私たちはこの葉っぱが好きなのー』

薬草は妖精のお気に入りらしい。全種類植えてあるからよりどりみどりで嬉しいらしい。


『土がいい。』

『たまに落ち葉欲しい。』

土の妖精さんは恥ずかしがり屋さんだけど、隠れながらも話をしてくれた。たまに落ち葉を入れればいいなら簡単。いつもやってるし。


『お水をください。』

『お水だしてだして。』

水の妖精さんが催促するので魔法でお水を出して、霧雨のようにサラサラとまく。キャッキャと遊ぶ花の妖精と水の妖精、湿った土から出たり入ったりモグラみたいにポコポコと遊んでる土の妖精。


クッキーを手に出して見せたら集まってくる花の妖精。クンクンと匂いを嗅いだら少しだけ欠片を食べた。美味しかったらしく、1枚持っていった。他の子も食べたそうにしてたからあげていく。


『たまに食べたい』

『たまにでいいのー』

『サクサクだけがいい』

『他には入れないでー』


ナッツやドライフルーツは食べにくいらしいので、次は妖精さん用のプレーンクッキーを作ろう。落ち着いたらディアのところに戻って私もおやつを食べる。


〈薬草と私の魔力で集まったのかな?〉

〈そうだろうな。薬草と呼んでいるが、元は妖精が好む葉に祝福がかかり、何かしらの効果が出るようになったものだろう。それを人が使うようになっただけのこと。〉


〈そっか、元々好きな葉っぱだったのか。〉

〈それがこれだけ集まり、リンの魔力で満たされた空間がある。あいつらには最高の空間だろう。〉


〈私の魔力は特別って言ってたけど、異世界の人間だからかな?〉

〈それもあるだろうが、リンの魔力には不思議な魅力がある。〉


〈んーよくわかんないや。〉

〈それでいい。〉


とりあえずお水を出したお皿は2つとも妖精さん用に置いておくけど、新しく可愛いのを買おうと思う。ディアのがなくなるのも困るし。


楽しそうな妖精さんたちを眺めたらお家に戻りましょう。みんなに任せっきりで申し訳ないから、夕飯の準備くらいは手伝わなきゃ。

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