第67話 確認だいじ。

朝ご飯も食べ終わって落ち着いたので、地下に移動して魔法の練習をします。ウォーターボールとかウインドカッター、トルネードはミスると暴発する可能性があるから絶対やる。生活魔法の水出すだけならいつもやってるんだけどね。


〈少し離れてるぞ〉

〈うん、暴発したらごめん。〉

〈なんとかなるさ。〉


入口付近で座ってるディアにカバンを預けて、お皿に水を出して置いておく。


入口から離れて訓練場の奥に行き、壁に向かって魔法を発動。ただの空気砲であるウィンドボールは想像の倍以上の大きさで吹っ飛んで消えた。壁に当たる前に弾け飛んだんだけど?そんなことある??


〈ぜんっぜん前と違うんだけど!〉

〈綺麗に弾けたな。〉

〈吹っ飛んだくせに壁にも届かないのなんで!〉


〈でかい丸だったのはわざとか?〉

〈ううん、あの半分以下で手に乗るサイズにしたはずなんだよ。どデカいのか吹っ飛んだけどね。〉


〈どう考えても魔力量が多すぎだな〉

〈分かってるもーん。〉


悔しすぎるからもう1度空気砲。今度は手の上で玉をつくるように魔力を集めて投げ飛ばす方式でやってみた。これなら魔力操作はできるけど、発動までがおっそい。


〈準備してる間に食べられちゃうね〉

〈パクっと一口だな。〉

一口で食べないでください。やめてください。


最初にやった練習と同じように、まずは魔力を操作して小さくとどめて、その後射出させるってやり方で練習していく。ウィンドボールやらカッターやら、ウォーターボールやらを出しては消してを繰り返して魔力操作に慣れさせる。


〈少し休憩しろ〉

〈はーい。ディアもクッキーいる?〉

〈いらぬよ。〉


大きいディアに寄りかかりながらクッキーをかじりつつ紅茶を飲む。砂糖漬けのレモンをもらって紅茶浮かべ、冷たいレモンティーにしてぐいっと。美味しい。


〈コツはつかめたか?〉

〈うん、もう大丈夫。〉


たぶんもう大丈夫。魔力の絞り方も慣れたし多少増えてもいけると思う。さすがに倍は無理。


落ち着いたから練習再開。錬金するより1回に使う魔力量は少ないし、集中力もそこまでいらないから楽にできる。しばらくボンボンシュッシュッ魔法を放ってたら発動も簡単に出来るようになってきたからもう大丈夫。


〈トルネードやるから気をつけてー〉

〈逆だ。リンが気をつけろ。〉

〈はーい。〉


思いっきり魔力をしぼって発動させたのに、ブワッと広がって消滅した。悔しすぎるんだけど。


〈霧散したな。〉

〈自信あったんだけど!〉

〈風は絞りすぎるのも良くない。中心だけ強くしたら勝手に周りは弱くなるからそれだけ考えればいい。〉


〈分かった、やってみる。〉


トルネードの中心だけ強くして、周りのぐるぐるは風を回すイメージだけで縮めない。何回か繰り返したら思い通りの大きさに出来たし自然と調節できるようになった。


〈ディアありがとう、できたよ。〉

〈なんてことないさ。もう昼近いから上がろうか〉


朝いっぱい食べたのにもうお腹が減ってる。腹減り体質って言われて最初は気にならなかったけど、最近はお腹が減るのがちゃんと分かる。良いのか悪いのか分からないね。


ディアとリビングに入ると居残り組が話し合いをしてた。机に地図?を広げて作戦会議みたいな感じ。魔物の強さとかどの魔物がどこに多いとかそんな感じの内容。私は大きいディアのお腹に埋もれてもふもふタイムを満喫します。ナイスもふもふ。


「気付かなかった、リンちゃんおかえり。お腹すいた?」

「うん、ペコペコ」


「じゃあ準備するから待っててね。」

「わたしも手伝う!」


フランクさんが気づいてくれて、お昼ご飯の準備をすることになった。もう作ってあったみたいで、ホカホカの出来立てをボックスから出すだけで完了。


「今日の夜もまたリンちゃんのメニューになるから、お昼は簡単にいつものやつね。ペッシュが安かったからいっぱい買ったんだけど、苦手なら残してね。」


メインはミノタウロスのお肉を塩コショウで焼いたシンプルなお肉でハード系のパンとサラダとスープと果物。

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名前 ペッシュ

特徴 皮も食べられる甘くジューシーなフルーツ。

備考 (桃に似てるけど固くてさっぱりした味。)

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やった、桃だ桃!昔はアレルギーが酷くて食べれなかった夢の桃ですよ!食べてみたかったんだよね。もしかしたら日本のと違うかもしれないけど、嬉しい。


それぞれ食べ始めるけど、私は食べ終えるのに必死。早く桃が食べたい。


「そんなにお腹すいてた?」

「ううん?」


「珍しく物凄い勢いで食べてるから、どうしたのかと思って。」

「ペッシュが早く食べたくて。」


素直に理由を話すとみんなに笑われてしまった。いいじゃん楽しみなんだから。


「好きなの?」

「ううん、食べたことはないの。こっちの世界でなら食べれると思ったら嬉しくて。」


「そっか、もっとあるから切ってくるね。取った分の肉食べたらペッシュいっぱいお食べ。」


フランクさんは頭をポンポンするとキッチンに入っていった。みんなもニコニコしてる。なんかくすぐったい。


それでもお肉をかじってパンをスープで飲み込んで手元にある分を食べきった。夢の桃さんですよ。


フォークをシャクッと刺すと一口かじる。ジュワっと果汁が一気に広がってもうお口も鼻も桃が充満。


「美味しすぎる…」

「良かったね。」


みんなに見られてるけど気にしない。今は桃と向き合いたいんです。


黙々と食べ続け、お皿に乗った分が無くなると急に苦しくなってきた。食べすぎてお腹チャポチャポ。水っ腹です。でも大満足!


しばらく動けそうもないのでソファーでゆっくりすることにした。ディアのところがよかったんだけど、地面に座るのすら苦しくてソファーで我慢。


こんなに思いっきり食べたのなんていつぶりだろう?


苦しいけど幸せなリンのお昼でした。

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