第64話 一方その頃。

リンが小屋の中で荷物整理をしている頃のお話。


___ナリアル視点___


「もうこの辺りはいません。」

「疲れたんだけど!?」

「さすがに疲れたな。」


「アルダ落ち着いてください、少し休憩しましょう。」

「はーい。」

「了解。」


道をそれた所、少し開けた草むらまで入りましょう。さすがに私も疲れましたね。


「クッキー出すよ。紅茶いる?」

「いただきたいです。冷たい方をお願いします。」


「俺もくれ。甘いクッキーはあるか?」

「あるよ。どっちも出しとくね。」


準備はアルダに任せて、私は周囲の警戒をしましょう。まだ残党が残ってるかもしれませんからね。レイも常に前衛でうごいてもらったので、疲れているでしょうし。


それにしても、私達には気を遣っていたアルダがここまで話せるようになるとは。今回はいい機会だったと思いましょう。


「さすがに一睡もせず動くのは疲れましたね。」

「こんなに狙ってくるバカがいるとは思わなかったよ。無駄なことなのにご苦労なことで。」


「下級貴族が殆どでしたが、数人伯爵の手の者がいましたね。私が鑑定を使えると知った上で隠さなかったのだとしたら、相当自信があったのでしょうが、何にせよ短慮な行動です。」


「途中から数えるのもやめちゃった。羽虫かってくらい湧いて出てくるんだもん。」


「あなたも言うようになりましたね。」

「いつもは自分より先にみんなが言うから、言葉にする必要がないだけ。僕だって人並みに言うし怒りもするよ。」


「その方がいいですよ。」

「どーも。」


100人超えたあたりから数えるのもバカらしくなったのは同感ですね。指揮をとる貴族が分かれば用もないですし。


「昨日のうちにカルダへ信号を送ったので、2人がこちらへ向かっているはずです。来るまで交代で仮眠をとりましょう。」


「今日中に帰りたいなー。」

「そのためにも寝てください。レイとアルダは先にどうぞ。」

「だって、レイさん先に寝よう。」

「何かあったら叩き起こせ。」

「分かってます。」


すぐに動かなくなったので寝たのでしょう。スリープは必要無かったですね。


さすがに毎夜襲われるとは思いませんでした。昨日の早朝、日が昇るより前に宿を出て丸1日動きっぱなしですからね。


リンさん本人が狙われるよりは良かったと考えましょう。それにバカ共も4人判明しました。証明書を奪っても、我々が死んでも、全く関係無いのに脳無しの考えることは分かりませんね。


今頃何をしているのでしょうか。またポーションの研究をして驚く成果を出していそうです。ギルドの職員との顔合わせも無事に終わってるといいのですがね。


アルダに出してもらったクッキーはどれもフランクとリンさんが作ったと聞きました。色んなナッツ類が入っていて栄養面と食べごたえを考えてのことらしいですが、助けられました。これが無ければ腹減り体質の2人には酷だったでしょう。


「…早かったですね。」

「急いだからな。どのくらいだ?」


「ここに落ち着いて半刻ほどかと。」

「分かった。カル、結界張ってくれ。それと警戒は俺等がやるからナルも寝ろ。」


「助かります。」

「一応外から見えにくいようにしとくねー」

「ありがとうございます。」


リーダーたちも来ましたし、軽めのスリープをかけて寝ましょう。


_____________________


「おはよう、スープ食べる?」

「あぁ、いただきます。」


起きたらメンバーで火を囲んで食事をしていました。時間は15時ですか、寝すぎました。いい匂いがしてお腹が鳴ります。


「話はだいたい聞いた。貴族の名前は分かるか?」

「フォルターノ侯爵、アルデルン伯爵、ダノリア男爵にナナリー男爵です。」


「うっわ、やっぱあの侯爵か。バカ息子が爵位継いで借金地獄になったし想像はしてたが。あとは権力を得たい弱小たちだな、了解した。」


「リンさんはお元気ですか?」

「元気だぞー。昨日の夕方ポーション作成に失敗して爆発させてたけど、怪我もなくピンピンしてたし今日も朝から小屋にこもる予定だそうだ。」


「爆発って何したの?リンちゃん失敗しない筈じゃないの?」

「よく分からんが上級解毒の発熱効果を無くすために初級薬草と一緒に錬金して、魔力を流しすぎたらしい。」


「さすがに物凄い揺れてビックリしたよ。俺達みんな外にいたけど、襲撃されたと思ったし。リーダーとポーション持ってダッシュで地下降りたらディアに包まれたリンちゃんいて、腰抜かしてた。」

「すごいことを考えますね。」


「ギルド職員もビビり散らかしてたけどその後スムーズに紹介出来たし、何とかなった。」

「そのポーションは失敗作だったのか?」


「いや、たぶん鑑定すらしてないと思うぞ。鍋も棒も無事だったからすぐに上に戻ったし。一応瓶に入れ替えてたから液体にはなってたっぽいけど。」

「帰ったらそれも確認しましょう。」


「体力戻ったか?」

「私は大丈夫です。」

「俺も行ける」

「僕も大丈夫。」


「馬に無理をさせられないから、ゆっくり戻る。到着予定は夜中だ。」


「「「「了解」」」」


「俺とナルは前、カルは後ろを頼む。レイとアルは休みつつナルと交代。」

「クッキーとかも持ってきたから、みんなに渡しとくね。帰ったらリンちゃん考案メニューの夕食が待ってるよー。」


「お前絶対何か食べただろ!」

「うるせーよー。出てくるなんて知らなかったしな、リーダー?」


「いいから帰るぞ。カルは煽るな、アルは帰ったら食えるんだからいじけるな、子供か。」


「仲良しですね。」

「早く帰りたい。」


周囲を警戒しつつ街に向けて出発します。

早くリンさんにこの書面を渡したいですね。


夕食はなにが出てくるのでしょうか?楽しみです。

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