第39話 がんばったよ。

休憩が終わったら魔力の確認をして練習再開。風魔法はあまりよく分からない。攻撃特化なのかな?とも思ったりもする。


「とりあえずやってみるから、見ててね。」

アルダさんがお手本を見せてくれる。


1つ目は、いわゆるウィンドカッターとかそういう系のやつ。スパッと切れそうな風の刃が飛んだ。


お次は竜巻。小さいのを足元に出したら足止めに使えるし、大きくしたら押し倒すくらいは出来そう。


最後は空気砲。風だから見えにくいし、小さいやつは速くて当たったらすごく痛そう。


「風って水や土みたいに何かを生み出す力は必要ないから、基本は少ない魔力で発動出来るんだ。ただ2つ目の通称トルネード、これが他のより操作が難しいからちょっとだけ注意してね。」


竜巻を暴走させたら大変なので、最初は空気砲から練習する。


風を集めるイメージでいいのかな?と何となく飛ばしたら、でっかい玉がボフッと壁に当たった。目で追えるし、これはさすがにダメだ。次は手のひらを前に出しピンポン玉を飛ばすイメージをしてみる。軽くて速く飛びそうだからね。


何回か発動させたらものすごい速さで出せるようになった。ピンポン玉でも高速でぶつかったら痛いと思う。


同じ原理でいけそうなウィンドカッターさん。三日月型の刃が飛ぶイメージをしたらすぐに出せた。よく読んでた小説のおかげかな?


「トルネードやってみる?」

はい、と頷くと近くにきてくれたアルダさん。


「まずは手の上で小さいトルネードを作ってみて。危なかったらすぐ止めるからね。」


集中するために右手のナイフを持ち直す。深呼吸をして左手に集中。風が渦を作り少しずつ大きくなっていくのを見つつ魔力を増やす。


手のひらより大きくなったから投げようとして、失敗した。握ったら消えてしまった。


「トルネードって飛ばせないの。だから土魔法と同じで遠距離から発動して、足止めに使うことが多いんだ。」


そう言ったアルダさんはまた遠くにトルネードを発動させる。そういえば、さっきも地面に出してた。


そうと分かれば実践です。

的の下あたりにトルネードを発動させると、手の上に出した時よりかなり大きくなってしまった。びっくりしてフリーズしてると、アルダさんがウィンドカッターを数回打って消してくれた。ありがとうございます。


「風みたいな触れない魔法って発動者は消せるんだけど、他人が消すことは出来ないんだ。水や土ならそれを操ればいいんだけどね。消せなかったら別の魔法を当てる方法もあるから、覚えといてね。」


気を取り直してもう1回トルネード。今度はちゃんと小さく出せた。そこから何回か繰り返して、アルダさんからを合格をもらえた。


一度休憩をとったら、魔力が使える限界まで水、土、風魔法を順番に練習していく。風をちゃんと使えたからなのか、どれも発動がスムーズになってる気がする。また魔力が増えたら変わるかもしれないけど。


シャワーを浴びたら夜ご飯。いつも通りやったことの報告をしつつみんなのお話を聞く。食べ終わったてディアをもふもふしてたら、話があるからとソファーに呼ばれた。


「ちょっと真剣な話になるから、分からなかったり疲れたりしたら言ってくれ。いいな?」

ガイトさんからそう言われたので頷く。


「リンが順応型ってことは説明したよな。順応型はほぼ全員が魔導師になるってくらい、魔法に関してずば抜けた能力があるんだ。基本的な知識な。まず魔法の練習は魔力を感じるまで数日、そこから練って1か所に集めるまで1週間以上、実際に属性魔法を操るまでだいたい1ヶ月はかかる。リンは桁違いに早いんだ。」


わたしびっくり人間みたいな存在になっちゃったのかな。


「さらに付け加えると、リンちゃんの場合は魔力の成長がかなり早い。俺も順応型の中では早い方って言われてたけど、1日で10くらいしか上がらなかった。20以上増える人は見たこと無い。」


魔法の天才カルダさんが言うんだから、私が1人ずば抜けて異常なんだ。


「たぶんディアと契約してるのも影響してると思う。魔力をやり取り出来るだろ?そのおかげってのも少しはあるはずだ。」


魔法の練習をする前に魔獣と契約することはあまりないらしい。だからはっきりとは分からないそう。


「何が言いたいかっつうと、ただでさえ迷い人ってことで注目されてんのに魔法の才能ありまくりって事がバレたら、クソみたいな大人に目を付けられて危ないからどうにかしようって事だ。」


ガイトさんがしっかり目を見て話をしてくれる。子どもだからって誤魔化したりしないで、1人の人間として対応してくれる。


「ここに身を寄せているだけじゃ不安が残るし、今後俺らだけじゃ守りきれないかもしれない。ちっさい冒険者グループの権力じゃ、意地汚い貴族たちにリンを取られる可能性があるんだ。」


「すぐに出来る対応は家族関係登録をすることですが、こちらはあまり力がありません。もう1つは時間がかかりますが、我が家の養子に入る方法があります。」


家族関係登録はよく分からないけど、養子は分かる。でもなんでナリアルさんのお家?


「私はこのアーベントを治める領主の息子で、本名ナリアル・アーベンティスと申します。必要ないので普段は名だけ使ってるんですよ。」


お茶目な笑顔でとんでもないことを言うナリアルさん。ちょっと待って、領主の息子が何してるの?


落ち着くためにお茶を一口。ついでに足元にいるディアをもふもふ。よし、大丈夫。

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