第38話 難しいけど楽しい
みんなでお昼ご飯を食べたら、また地下の訓練場に戻る。一緒にいるのはナリアルさんとアルダさん、それとディア。用事のある人たちは別行動でたまにフランクさんが来てくれるらしい。
「どの属性が操作しやすいとかある?」
「風はいまいち分からないですけど、水と土はあまり変らないです。」
「さっき水飛ばしてたし、水からやろうか。」
アルダさんがそう言うと離れて、ナリアルさんが近付いてきた。ディアはアルダさんの足元。
「水の攻撃魔法はあまり威力が出ないと言われるのですが、魔力と操作方法によってかなり変わります。見ててくださいね。」
そう言うナリアルさんの手の上には大きい水の玉。それを壁の的へ飛ばす。かなりのスピードが出てたと思う。
「もう1回お願いしてもいいですか?」
もちろん、と再度手に水を出すナリアルさん。さっきは手だけ見ててよく分からなかったから、今度は的を見つつ玉を追えるようにする。
水の玉はちょっと長細くなって飛んでるように見えた。ピストルの弾丸みたいな感じかな。
最初は小さい玉からやってみる。さっきは指先から出したから、手のひらから出せるように構える。魔法を発動させると水は出せたが、そのまま落ちてしまった。その場に留めておかないと飛ばせない。
留めるイメージが良いのか、そのまま出した瞬間飛ばすイメージが良いのか分からない。どっちも試してみる?
出した瞬間飛ばす方が簡単に出来る気がする。手に魔力を集めて手のひらサイズの水を出すと同時に、そのまま飛ばすイメージ。うん、これは出来る。
次は手の前で留めておいて、押し出すイメージでやってみる。のだけど、これがかなり難しい。何回かやってみて空中に置いておく事は出来るようになったけど、そこからスピードを出して押し出すのが難しい。
「ちょっと休憩しましょう。魔力の確認もしてくださいね。」
ナリアルさんから声がかけられたので、ステータスを確認してからアルダさんたちの所に戻る。
ちょっと疲れてたみたい。果実水が体に染み渡る。
「後半ちょっと苦戦してた?」
アルダさんがクッキーを差し出しながら聞いて来た。見てて分かるほどだったみたい。
「発動させた瞬間に飛ばすのは何とか出来たんです。でも、ナリアルさんみたいに出してから時間をおいて飛ばすのが難しくて。」
どう説明するのがいいかと悩む大人たち。コツはあるんだろうけど、こればかりは慣れるしかないのかもしれない。
「もし考える時間が欲しいなら、無理に留めようとせず手のひらにボールを乗せてそれを投げるイメージで良いと思いますよ。それに飛ばすなら時間差があるより一瞬の方が良いです。」
軌道が読まれないですからね、とナリアルさん。確かに発動と同時に飛んできたら逃げられない気がする。
「手のひらの玉を飛ばす時は水が飛ぶイメージをしてますか?」
「私は押し出すイメージですね。」
「僕が飛ばす時は標的に吸い付くようなイメージでやるかな。土を引っ張る感覚の逆だね。」
そう言うとアルダさんが手に土の玉を出して的に飛ばした。硬かったのか、鈍い音がして落ちた。
「土って出せるんですか…?」
あるものを操る魔法だと思ってた。そうだよ、出せないわけないじゃん。水が出せるんだから!
「一応出せるよ。この後やってみる?どっちもやるとコツが掴めるかも。」
うんうん、と頷いてクッキーを食べる。魔力はあと280くらいあるから大丈夫。
休憩が終わったら土魔法の練習開始。
「さっきのは水みたいに飛ばしたけど、まずは足止めに使える系ね。」
アルダさんが手を前に出した瞬間、地面から細長い土の杭がいっぱい出てきた。しかも先が尖ってるやつ。刺さったら痛いどころじゃないかも。
〈…えげつねぇな。〉
ディアさん。ぼそっとつぶやかないでください、笑っちゃうでしょ。
「運悪く上にいたら刺さるし、運良く避けても混乱はするやつ。やってみて。」
ニコニコ笑顔のアルダさん。もしかして意外と腹黒い…?
余計なことは置いといて、やってみる。午前中に練習してたから立ってても出来るし、これはイメージしやすい。太さを変えて何回か試したら完璧。尖らせるのもやったよ、ちゃんと。
「じゃあ次は土出してみるよ。石みたいに硬いのだとダメージも入るし投げやすいよ。飛ばすのは水と同じね。」
お手本を見せてくれたアルダさん。まずは土を出すところからスタート。手のひらに石っぽくて硬い、いっぱいダメージを与えられそうな玉をイメージ。
なぜかトゲトゲしたボールが出た。あれです、足の裏のマッサージに使うゴムボールみたいなやつ。何でかな。
〈リンもトゲ好きか。〉
やめてくださいディアさん。思わず振り返ると呆れたような顔をされた。なぜだ。
とりあえず飛ばさなきゃ始まらない。最初だから、的に向かって普通に投げてみた。なぜかスピードが出て思いっきり真ん中にぶつかった。これで正解?
水も手に出してから投げてみる。握ってるのに潰れないし、軽く投げてるのにものすごいスピードが出てちょっと怖い。
「投げるほうがやりやすいですか?」
「手に出したら投げたほうが良いみたいです。」
「それが分かれば上出来です。休憩してから風魔法の練習をしましょう。使えたら森に出ても安心です。」
水分補給しつつ、いつもあるクッキーもかじっておく。美味しいしちょっとお腹すいちゃうんだよね。
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