第24話 いざ、登録です

ユシリスさんと一緒に1階のカウンターまで来た。

5つブースがあって、それぞれに受付のお姉さんが座ってる。


1番左のブースに行ったら登録用紙とペンを渡された。その場では書けないので、後ろの机に移動して座る。ディアは足元。


「もしかしたら文字が書けないかもしれなくて。書いてみるので、読めなかったり間違えてたりしたら教えてもらえますか?」


前の世界のことを話していいか分からず、ユシリスさんの耳元でこそこそ話す。


「分かりました。話しにくいでしょう、お隣失礼しますね。」


そういって椅子ごと隣に来てくれた。

記入項目は5つだけ。


−−−−−−冒険者登録−−−−−−

名前:

年齢:

職業(使用武器):

魔法適性:

その他:

−−−−−−−−−−−−−−−−−−


名前と年齢を書いて確認するように見上げると、合っていると頷かれる。大丈夫、日本語で読めて日本語で書けてる。


「職業ってなんですか?」


「魔導師や剣士、拳闘士、あとは斥候などです。言葉の意味は分かりますか?」


うん、わかる。小説に出来きた。


「リンさんの場合、まだ子どもなので未記入で大丈夫です。成人の16才になった時、改めて正式に登録していただくことになります。なにも分からない未成年への特別措置ですね。」


なるほど。出来ることすら分からないからそれでいいのか。


「魔法適性は全部書くんですか?」


「生活以外の属性なので風、土、水魔法ですね。」

生活魔法はみんな使えるからそれ以外か。


「その他ってなにか書いたほうがいいですか?鑑定とか、耐性とか。」


「無属性は書かなくて大丈夫です。有名になれば嫌でも知られてしまいますがね。」


ナリアルさんとレイさんがいい例だと教えてもらった。A級って言ってたもんね。


教えてもらいながら全部書けた。ユシリスさんも頷いてくれてるので、ちゃんと読めるみたい。


紙を持って椅子から降りるとまた抱き上げられた。抱っこ移動が定番化しちゃってるよね。ディアを見ると頷かれた。これでいいらしい。


受付のお姉さんに紙を渡すと、プレートが2枚置かれて説明をうける。


「これは冒険者の身分証となる物です。1枚はギルドで保管、1枚は常に持ち歩いて頂きます。街の移動はもちろん、依頼の受注や完了報告にも必要ですので、首からかけておくことをオススメします。ここまで大丈夫ですか?」


大丈夫なので頷く。


「冒険者にはランクが存在し、E級からスタートします。最高位はS級となります。依頼の達成度や難易度、信頼度などでランクアップをしますので、無理のない範囲で依頼を受けて下さい。」


うん。それも大丈夫。


「プレートはSがプラチナ、AとBがゴールド、CとDがシルバー、Eがブロンズとランク別に色が異なります。ランクが上がれば自動で反映されますので、交換などはありません。」


自動で変わるのは不思議だけど、ここは異世界。そういう物だと理解する。


「説明は以上となります。質問はありますか?」


無いので首を降る。


「では、プレートに血の登録を行います。こちらに小さな針がありますので、刺して血が出たらプレートに1滴ずつお願いします。」


白玉団子みたいなのが出てきた。真ん中がくぼんでて、小さな針が見える。


人差し指をプスッとしてプレートに1滴垂らすと、じわーっと広がってブロンズのプレートになった。

指をギュッとしてもう1枚にも垂らすと、同じように広がった。プレートにはEの文字が浮かび上がる。不思議。


「これで登録は完了です。お疲れ様でした。」


そういってプレートの1枚と血を拭く紙を渡された。ありがとうございます、と受け取ると笑顔でバイバイしてくれた。手を振り返しつつプレートを眺める。


「登録できました!」


ちょっと興奮ぎみにプレートを見せながらお礼を言う。抱っこしてもらってたから知ってるだろうけど、今のリンには関係ない。


「おめでとうございます。依頼掲示板はこちらです。依頼にも種類があるので覚えておいてくださいね。」


依頼票について説明してもらった。掲示板に貼られた紙は3種類。

緑色:薬草採取や小さい魔物の討伐など、常設依頼

黄色:緊急性のない魔物討伐、お手伝い依頼など

赤色:緊急依頼。該当ランクの人は優先して対応


それぞれ紙の左上にランクが書かれていて、自分の冒険者ランクと同じか1つ下の依頼しか受けちゃいけない。


グループに加入している場合は例外あり。自分がC級でも、メンバーに2人以上B級がいたらB級依頼を受注可能。ただし、怪我をしても自己責任。


「緑色は報酬金額の確認用みたいなものなので、受付に持っていかなくても大丈夫です。納品物だけ提出したらいいですよ。」


掲示板は大人用だから子どもの私じゃ、どれも手が届かない。持っていかなくていいなら嬉しい。


「ひと通りの説明はおしまいです。プレートに通すチェーンとディアさんの装着具を選びましょう。」


そう言って連れてこられたのは、扉をくぐった先にある大きなお部屋。


「いろいろ持ってきますので、ここで待っていてくださいね。紅嵐のみなさんも呼んできます。」


椅子に降ろされて、ユシリスさんは出ていった。

ディアに大きくなってもらい、お部屋の端っこでもふもふする。


〈お部屋にディア用のラグを買おうね。〉

〈一緒にベッドで寝るんじゃないのか?〉


〈寝るけどさ、専用のスペースあったらいいじゃん。私も一緒にこうやって座るし。〉

〈そういえば、リンは地面に座る事も気にしないな。〉


〈地べたに座る方が慣れてるんだ。今の体じゃあ椅子から足が浮いちゃうし。〉

〈確かにそうだな。〉


ふふっと笑いながらのんびりお話した。

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