第22話 ギルドでご挨拶

「マジックバッグは持ったから大丈夫だな。リンはまたレイに抱えられろ。ディアは俺の隣にいてくれ。」


レイさんの腕は私の定位置になったらしい。

「よろしくお願いします。」


またひょいっと左腕に乗せられる。安定感。

行ってきます、とフランクさんに声をかせてみんなで外に出る。


「わたしも冒険者になれますか?」

噴水に向かって歩く途中、レイさんとお話。


「6才以上であればなれるが、冒険者になりたいのか?」


「出来る仕事があったらいいなーと。」

思っていることを伝えると考え込んでしまった。


「ギルマスたちと相談しよう。迷い人の対応はよく分かってないんだ、すまないな。」

そう言って頭を撫でてくれた。


そっか、私ただの迷子じゃなくて迷い人なんだった。本当は国に保護されるんだっけ?

ちょっとわがままを言っちゃったかもしれない。


「ごめんなさい。」


「働いて金を稼ごうと思うのは立派なことだ。ただ与えられるだけの生活は嫌なんだろ、理解しているから謝らなくてもいい。」


「ありがとうございます。」


「薬草なら森の入口で採取できるし売れば金になる。危険の少ない仕事だってあるんだ、大丈夫。」


どこに薬草が多くて、どんな魔物が出るかなんて話をしていたら噴水に着いた。そこにはアルダさんとカルダさんがいた。


冒険者ギルドは噴水の住宅街側にあった。真反対に商業ギルド。どっちも似てる建物で看板が違うだけみたい。合流してみんなでギルドに入ったら、そのまま2階に上がっていく。


大きな扉をノックしてそのまま入っていくガイトさん。ノックの意味あったかな。


「入るぞー」

「せめて返事を待てよ、ノックした意味ねーわ。」

中から渋い声でツッコミが入った。ですよね。


「来ること知らせてたんだからいいだろ。リンと契約してるディアだ。確認よろしく。」


レイさんに抱かれた私と、彼の足元にいるディアをそれぞれ紹介して、早くしろと急かすガイトさん。かなり雑。


「さすがに自己紹介くらいさせてください。私はギルドのサブマスターをしているユシリスと申します。よろしくお願いしますね。」


入口近くにいたお兄さんがサブマスターさんらしい。髪の毛を後ろで縛ってるイケメンさん。


「俺がギルドマスターのダルシオだ。ギルマスとでも呼んでくれ。とりあえず座れ。」


部屋の奥、大きな机で仕事をしていたおじ様がダルシオさん。ちょっとレイさんに似てる気がする。


座れと言われたので、みんなでソファーに座る。ディアは足元で伏せの状態、私は何故か隣のアルダさんの膝に置かれた。見上げたら笑顔で頷かれる。このままでいいのか。


「リンとディアです、よろしくお願いします。」


「スノーケーニヒの契約者がリンってことでいいんだな。聞いてた話より小さいな。全員確認するから手を置け」


金属の板みたいなのを持ってきたギルマスさん。


みんな気にせず次々と板に手を置いていく。ちょっと光っては消え、光っては消えを繰り返す。


最後、私が手を置いたら一瞬だけどものすごく強い光を発して消えた。


「すげえ光ったな、驚いた。」

ギルマスさんが板と私を交互に見る。


「これなんですか?」

板を指さして聞いてみる。何か調べてるのは分かったけど、光の強さは何?


「これは契約の強さをはかる魔道具だ。光が強ければそれだけ契約獣との繋がりが強いってことになる。バカが無理やり魔獣と契約して暴走させないための確認装置なんだが。」


まだ目がチカチカしてるぞ、と言いながら眉間をおさえるギルマスさん。なんかごめんなさい。


「ガイトたちが手を置いたときも光ったでしょう?あれが普通です。小さな個体だからそれ程強くないのかと思ったのですが…。」


ユシリスさんもちょっと困惑ぎみ。


「ディアは大きいです。今は街にいても大丈夫なように、小さくなってくれてるだけで。」


大きくなっていいか確認して、大丈夫とのことなのでディアに元の大きさに戻ってもらう。ソファーの横に大きくなったディア。お部屋の中だとより大きく見えるね。


ちょっと窮屈だったのか、すぐに小さくなって戻ってきた。無理を言ってしまったので背中を撫でる。


「なるほど、理解した。契約獣には何か目印を着ける決まりがあるんだ。後で選んでくれ。」


分かりました、と頷く。


「リンは冒険者登録できるか?」

レイさんが聞いてくれた。


「リンちゃん冒険者になりたいの?僕たちといたらなにも心配いらないよ?」

アルダさんが頭の上から聞いてくる。


さっきレイさんと話した内容を思い出して伝える。

自分で働きたいこと、守られて与えられるだけじゃ落ち着かないこと、仕事がある方が嬉しいこと。


がんばって伝えたらギルマスさんが頷いてくれた。


「ステータス次第だが、迷い人の生活に制限があるわけじゃないから登録はできる。ただし、子供の場合は危険な場所での採取は禁止だ。守れるか?」


はい、と頷く。


「それなら登録してもいいだろう。薬草類はいくらあっても良いし、細かい手伝いの仕事もある。お前らは反対か?」


「リンさんは鑑定がありますから、ギルドの中での仕事も可能です。いいんじゃないでしょうか。」


ナリアルさんが賛成してくれた。


今ステータスを確認しておこうという話になり、ナリアルさんが鑑定して紙に書いてくれた。

それをギルマスさんとユシリスさんも確認して、問題ないと判断。


「みなさん賛成ということで、下に行って手続きしてきましょう。ついでにディアさんの装着具を選んできますね。行きましょうか。」


アルダさんの膝からユシリスさんに抱き上げられた。抱っこ移動は絶対なのかしら。


他の人はここに残るみたいなので、ディアとユシリスさんと1階に降りる。


冒険者になれるって!


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