第17話 今日の予定です

いつの間に寝たのか、起きたら朝だった。

背中にはディアがいる。 

やっぱり異世界にいる、夢じゃなかったんだ。 


〈おはよう、寝れたか?〉 

〈おはようディア。ぐっすり寝たみたい。身体がすごく軽いよ。〉

それはよかった、と立ち上がり外に出ていく。ディアが伸びるにはちょっと狭いよね。毛布から出るとちょっと寒かった。


毛布をキレイに畳んで、いつの間にか脱いでいた靴を履いて私もテントから出る。


「おはようございます。」

「「「「おはよう(ございます)」」」」

4人が起きてた。カルダさんだけいない。


「またカルが最後だな。アル起こしてきてくれ」

「はーい。いきますよー」

ガイトさんからアルダさんにご指名です。

寝起きなのかアルダさんもちょっとぽやぽやしてる。転びそう。


昨日の夜と同じ位置にみんな座ってるから、私もディアと一緒に座る。


「昨日、ごめんなさい。気付いたら寝ちゃってました。テントまで運んでくれたのナリアルさんですか?」


「気にしなくていいですよ、子どもは寝るものです。私がテントまでお運びしました。父親の気分になれて楽しかったですよ。」


「ありがとうございます。靴も。ゆっくり寝れて身体がとっても軽いです。」


ナリアルさんがお父さんていいなあなんて思い、お礼を言う。


「それはよかったです。今日の予定ですが、街まで残り9時間ほどです。途中で昼食休憩と小休憩を何回かはさむので、その時に一緒に鑑定を使ってみましょう。食べ物や売れるものが見つかると思いますよ。」


分かりました、と頷く。

ハーブとか自生してるかな。昨日ロマリー草があったからバジルとかもありそう。


何が採れるか考えてると、ガイトが近くに来た。

「ほれ食え。それスープに入れたら食いやすいぞ」


スープと硬いパンをもらった。ピタパンみたいな平ぺったいやつ。食べやすいように長細い形。

もうみんな食べ終わったのか片付けを始めてる。急いで食べよう。


「ありがとうございます。いただきます。」

「いそがんでいいからな。カルダも起きねえし。」

そういう言ってテントの片付けを始めた。


〈食ってしまえ。今日も体力勝負だ〉

ディアの前には生のお肉が置いてある。よかったね。


お言葉に甘えてちゃんと食べる。寒い朝に温かいスープがしみる。パン噛みちぎって口に入れると、水分が持っていかれた。スープを飲んでもぐもぐする。香ばしい小麦の香りがしてとっても美味しい。


スープは飲みきったけど、パンを完食できなかった、どうしよ。


〈リン、その左手のやつ分けてもらえるか?〉

〈パン?食べれないものはないの?〉


普通の動物と違うんだろうか。どう見てもユキヒョウさんだからちょっと心配になってしまう。


〈好き嫌いはあるが食えないものは無い。もらっていいか?〉

〈お腹いっぱいで食べれなかったの。どうぞ〉


私には大きかったパンを一口でパクっと食べてしまった。大きいお口だね。


〈うまいな。街でいろいろ食べ比べてみたい〉

ディアはパンが気に入ったみたい。


〈お金あるしいろいろ買ってみよう。わたしも見て回るの楽しみ。〉

一緒に見て回ろうね、とお腹をぽんぽんする。


ごちそうさまをして食器をお鍋の近くに置いておく。みんなのも置いてあるからここでいいと思う。


「だーー寝すぎた!」


元気にカルダさんが飛び出してきた。その後ろにアルダさん。うるさい、と頭をペシッ。


「おっせーんだよ、はよ食え」

リーダーガイトさんからツッコミが入る。


アルダさんがちょっと疲れた感じで近くに座る。

「リンちゃん食べ終わった?」 

「食べました。美味しかったです。パンは食べきれなくて半分ディアに食べてもらいました。」


それはよかった、と頭をなでられた。


「カルの準備終わったら出発するぞー。」

ガイトさんがそう言うと、急いで食べるカルダさん。途中喉に詰まりかけて胸をトントンしてる。


「今日は俺とナリアルが先頭、レイが後ろを歩くからな。何かあれば近くにカルアル兄弟がいるから、すぐ声掛けろよ。」


私の頭をポンっとして、落ち着けアホ、とカルダさんにゲンコツ落とすガイトさん。みんなのお父さんだと思う。


無事にみんな食べ終わり準備も完了。そして歩き始めて気づく。昨日よりちょっと歩くスピードが遅い。私への配慮かな、ありがとうございます。


「歩く順番はいつも決まってるんですか?」

隣のアルダさんに聞く。


「だいたい決まってるよ。鑑定持ちのナリアルさんは索敵能力があるから先頭が多いし、弓使いの僕は後にいることが多いかな。」


なるほど。パーティーの中での役割があるのか。


「レイさんが後にいるのは危険が少ない時。あと何かあってリーダーが前に出る時。盾持ちは基本前なんだけどね。今日は道をよく知ってるリーダーが前にって感じかな。」


なるほど。レイさんは大きな盾を持ってるから、危険な時は前にいなきゃだよね。


〈今日は私もいるし危険が少ないと判断したんだろ。魔物であっても余程のバカでないかぎり、魔力の多い存在からは逃げる。〉


そういうことだね、と頷いてるアルダさん。


「昨日食べたヒュージボアは、突進してくるんですよね?」

「あれは基本森の奥に住む魔物だから、この辺にはいないんだ。魔物にもある程度テリトリーがあって、そこからは滅多に出てこない。」


あそこは森の奥だったのかな?


〈昨日は私が奥にいた1匹を近くまで追い込んだんだ。あの広場は街と森の最奥のちょうど中間くらいのはずだ。〉

「そうだね、そのくらいだと思う。危険なくヒュージボアを1匹だけ安全に倒せたんだ、みんな楽しかったと思うよ。レイさんの仕事がなかったって言ってたし。」


そう言えば、ナリアルさんがそんなこと言ってた。盾持ってる人が必要ないくらい、簡単な狩りだったんだ。


「もう少しで休憩するぞー」

前からガイトさんの声がした。


「休憩だって。もう少しがんばろ。」

アルダさんに頷いて答える。

実はちょっと疲れてた。休めるのはありがたい。

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