第12話 高性能カバン

「リンさん、カバンを見せてもらってもいいですか?鑑定させてほしいんです。」

ナリアルさんがしゃがんだ状態で聞いてくる。


もちろんいいので、肩からはずしてそのまま渡す。


「なるほど、高機能のマジックバッグですね。ちょっとお借りしますね」

問題ないので頷く。そういえば、これは鑑定してなかった。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−

名前 マジックバッグ(リン専用)

特徴 革製の丸形カバン。容量無制限、時間停止機能付き

備考 神からの贈り物。(いっぱい使ってね)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−


おお、ちゃんと鑑定できた。お手紙に書いてあった通りだ。


「カルダ、魔力は残ってますか?」

なぜかカルダさんにカバンを渡すナリアルさん。何かあったかな、どうしたんだろ。


「ほぼ残ってる。何だ?そんな魔力使うのか?」

カルダさんは理由が分かってるのか、カバンを受け取った。


「容量限度なし、時間停止機能あり、備考に神からの贈り物と書いてあります。このままじゃさすがに危険でしょう。」


「そりゃーすげえ。普通に見せるより、多少入るように見せとけ。ある程度の量出してもバレないようにしないと、さすがに違和感出るぞ。」

今度はガイトさんがカルダさんに言ってる。


よく分からないまま話が進む。不安になってるとディアが後ろから包むように座ってくれた。


〈大丈夫だ、あいつらに任せとけ〉

理由が分かっているのか、大丈夫だと言う。


「んじゃ、やっちゃうな。」

軽く言ったカルダさんの手から出た淡い光が、カバンを包んでいる。魔法だ。


「ほい、完了。確認よろしくー」

と言ってナリアルさんに戻す。


「完璧です。ありがとうございました。」

そのまま私のところに持ってきてくれた。


意味が分からず首を傾げてしまう。


「驚かせてしまいましたね、すみません。このマジックバッグは高性能すぎるんです。神からの贈り物とも書かれていたので、カルダに偽装の魔法をかけてもらいました。鑑定騙しです。」


もう1回鑑定してみる。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−

名前 マジックバッグ(リン専用)

特徴 革製の丸形カバン。容量5倍

備考 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−


全く別の表示になった。これが偽装、すごい。 


カバンをあけて中を確認してみると、どこまでも続いて見えたのが大きめの旅行バッグくらいの奥行きに変わってる。


「ありがとうございます。」


ナリアルさんやカルダさんにぺこっと頭をさげてお礼を言う。


〈こいつらは頭もまわる。頼れるやつらだぞ〉

後ろにいるディアがそんなことを言う。


〈そうだね。とっても優しい。〉

受け取ったカバンを肩からかける。


アルダさんが近くにきて、頭をなでてくれる。

不思議に思って見上げてると、


「街に帰ったら普通のマジックバッグを買おうね。使い分け用。どっちも僕たちが買ったと言えば誰も不思議に思わないから。リンちゃんに似合う可愛いの見つけよう。」


そう言ってくれた。本当に優しい人たちと会えてよかった。


はいっと笑って頷く。


「リンのマジックバッグで問題解決だ、急いで終わらせて飯食うぞー」

 

「リーダー、肉焼き始める。火くれ」

レイさんが巨大なお肉の塊を持って立ち上がった。


「はいよ。リン、その包んだのそのままマジックバッグに入れといてくれ。」


ガイトさんは火種なの?

はい、と答えてカバンに入れていく。


「リンちゃん、こっちの皮と牙もお願いしていい?もうこっち入らないんだ。」

アルダさんから皮や大きな牙を受け取る。スルスル入ってちょっと楽しい。


「ガイトさんが火を出すんですか?」


「そうだよ、他の人でもいいんだけど、なぜか料理の時はリーダーが火をつけるの。習慣みたいなものかな。」


そういうアルダさんと、いつものことなんだろう、気にせず作業しているみなさん。


「魔法使ってみたいです。」

適性はあるみたいだけど、使い方が分からない。


「それならナリアルさんに教えてもらうといいよ。カルダの方がいろいろ使えるんだけど、あいつは教えるのは無理だから。感覚でひょいっと出来ちゃうタイプなんだよね。」


カルダさんは天才タイプだった。


「あとで聞いてみます。」

「風魔法なら僕も使えるからいつでも教えるよ。」

優しいお兄さん。


「ありがとうございます。」

黙々と包んでは入れてを繰り返し、やっと終わった。すごい量あった。


「おーわったぁーー!はやく飯食おうぜ。」

カルダさんが限界らしく、お腹をさすりながら走って戻っていった。元気。


アルダさんは道具を片付けながら地面に流れた血を水で流してる。

みんな血だらけだったはずなのに、なぜかキレイ。なんでだ?


「リンさん、クリーンかけるのでこっちに来てください」

ナリアルさんに呼ばれた。クリーンて魔法でキレイにしてたんだ。


てててっと近づいて、クリーンをかけてもらう。

「ありがとうございます。あの、今度魔法教えてください。」


ニコッと笑って

「いいですよ。後で適性見てみましょうね。今は食いしん坊が暴れそうなので、戻りましょう。」


その目線の先には走って行ったカルダさんと、なぜかその後ろを走るディア。食いしん坊が2人いた。


頷いて、ナリアルさんと片付けの終わったアルダさんと一緒にもどった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る