第9話 まだまだ続くよお話し合い
「あー、リンは迷い人か。そうか。だからこんな森の奥に。」
ガイトさんが納得したように頷く。ディアも言ってた、迷い人って。
「迷い人っていっぱいいますか?」
もしかしたら地球の文化がどこかにあるかもしれないと、気になってしまった。
「文献に載っている程度で、ここ何百年もいなかったと思いますよ。私たちはおとぎ話のように聞かされていました。」
ナリアルさんいわく、珍しいと。残念。
「この森って迷い人が来るって言い伝えがあったよね?本当だったんだ。」
カルダさんが興味深そうに、うんうん聞いている。
そうなの?ここってそういう場所?
気になってディアを見たけど分からん、と首を横に振られた。
「一応、迷い人がいたと国に報告はする。だが生活は俺たちと一緒にしよう。それでもいいか?」
ガイトさんがそう提案してきた。国は何かだめなのかな?
よく分からず答えが出せない。迷惑をかけたくないから、国の決まりがあるならそれに従う。どうしよう。
〈国での保護となると支障があるのか?〉
ディアが聞いてくれた。
「恐らく迷い人への対応は悪くないと思いますよ。ただ、スノーケーニヒと契約しているとなると話が変わってしまうんです。」
ナリアルさんは困ったように説明してくれる。ディアに何かあるの?
「ディアさんはとても珍しい種で、個体数が多くありません。そしてかなり強いんです。その契約者が幼いリンさんだと知れれば、汚い大人は何でもしてきます。」
理解できた。どこの世界にも意地汚い大人っているんだね。そんなやつに狙われる可能性があるってことだ。
「欲深い大人はどこにでもいる。俺たちのテリトリーにいてくれたら守りやすい。どうかな?」
ガイトさんはそう言ってくれる。
〈ディア、どうしよう。〉
〈さっき俺たちと暮らすと言っただろう。お前の他に誰がいる?〉
そういえば、そんなこと言ってた。
「俺らメンバー5人ともう1人、屋敷の管理をしている者がいる。都合がいいからみんなで暮らしてるんだ。部屋数も広さも問題ないと思うぞ。」
ガイトさんたちの他にもう1人いるらしい。お留守番する人かな。
〈リンはどうしたい?〉
ディアが聞いてくる。どうしたいんだろう。
〈んーー…。〉
不安になってディアのお腹に埋もれる。どうしたらいいのか分からない。
〈お前たちは冒険者なのだろう。家にいる時間が少ないんじゃないか?〉
ディアが話し合いに参加してくれてる。
「時期にもよるけど、それほど忙しくはないよ。今日ここに来たのも定期的な見回りみたいなものだし。普段は朝に家を出て、早ければ昼過ぎ、遅くて夜中に帰ってるかな。」
カルダさんが教えてくれた。会社員みたいな感じ?
「僕たち上級冒険者って言われるんだけど、かなり自由なんだ。仕事は基本選べるし。指名入っちゃうと厳しいけどね。」
アルダさんも教えてくれる。力があるから自由も多いってことかな。
「家には常に管理人のフランクがいます。掃除や料理などは彼がやってくれてますね。5人での行動が多いですが、たまに個人で動くこともあるので留守番が増えることもありますよ。」
ナリアルさんの説明にちょっと驚く。パーティー全員での行動が絶対だと思ってた。バラバラでも動くんだ。
「なぁ、1つ提案があるんだけどいいか?」
ガイトさんがディアに向けて言っている。何だろ?
〈なんだ?〉
ディアが顔を上げてガイトさんを見てる。ちょっとした睨み合い発生。落ち着いて。
「ディアの契約者をこの5人の誰かだって報告するのはダメか?それならバカなやつらも黙るだろうし、うちにいるリンとディアが一緒に行動したって問題ないと思うんだけど。」
そんなことが出来るのだろうか。
〈契約の確認が必要だったと思うが。それはどうする?〉
そんなのがあるのか。この世界の事はよく分からないからディアに任せる。
「それなら大丈夫ですよ。ギルドのトップ2人に直接話をしますので。2人とも信用できると思います。不審に思ったら噛みついちゃってください。」
ナリアルさんはなんてことを言うんだ。さすがに噛んじゃだめよ、ディア。
〈それなら全員と仮契約をしたら良いだろう。魔力で調べるなら分からんはずだ。〉
そんなことできるのか。ごちゃごちゃと考えてる間に話が進んでいく。
「全員となんて、出来るのか?」
ガイトさんが驚いている。普通できないの?
〈仮だから魔力の繋がりはできるが魔力譲渡はほぼない。それなら5人くらい余裕だと思うが。〉
ディアさんカッコいい。
「ならお願いしましょうか。これでリンさんの安全は確保できそうですね。」
ナリアルさんがそう言うと、嬉しそうに頷いている。いいのかな。
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